韓国のお菓子は輸入食品店だけでなく、スーパーマーケットにも並ぶようになりました。店頭やSNSなどで韓国のお菓子を見かけると、どんな味か気になってしまう方もいるのではないでしょうか。最近話題になっている韓国の伝統菓子として知られる「薬菓」に注目しました。
韓国の伝統菓子「薬菓」とは どんな味?
薬菓(薬果/ヤックァまたはヤッカ)とは小麦粉にごま油、はちみつ、酒などを混ぜた生地を油で揚げて甘い蜜に浸したお菓子です。韓国の伝統菓子では「油蜜菓」に分類されます。花の形に成型されたものが多く、見た目のかわいらしさが目を引きます。※1
韓国では古くからお供え物やお祝い事のお菓子として薬菓が使われましたが、日常的なお菓子としても食べられていました。薬菓は韓国の歴史ドラマにも登場していますので、どんな味なのか気になった方もいるのではないでしょうか。見た目からは固いお菓子なのか、柔らかいのかもわからないかもしれません。
薬菓の特徴は、ホロッと崩れるしっとりと柔らかな食感です。蜜に浸してあるので甘く素朴な味わいです。日本人が食べてもどこか懐かしさを感じる味で、緑茶やコーヒーとも相性が良いお菓子です。油で揚げてあって甘いのでドーナツやチュロスに似ているといわれることもあります。
ドーナツといえば、ふんわりと柔らかく、クリームが入った生ドーナツも人気を集めています。
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・はじめての食感に戸惑う人続出! 生ドーナツの魅力とは
お菓子なのに「薬」の字が使われている理由
お菓子である薬菓には、なぜ「薬」の字が使われているのでしょうか。韓国料理には「薬食同源(ヤクシクドンウォン)」という考え方があります。これは、自然の恵みである食材をバランス良く組み合わせることで健康を維持していくという思想。
韓国では古くから、はちみつやごま油が滋養や健康に役立つと考えられていました。そのため、韓国では体に良い材料で使ったものの名前に「薬」という字を入れていたそうです。※2
「薬」の字が入った韓国の食べ物には、ほかにも薬飯(ヤクシク・ヤッパブ)や薬念(ヤンニョム)などがあります。薬飯は、はちみつと黒砂糖で味付けする甘いおこわです。栗や松の実の他にドライフルーツなども入っており、日本の赤飯のように韓国のお祝い事で用意されます。こちらも薬菓と同じく体に良いとされる材料が使われています。
薬念は、朝鮮料理に使われる調味料や香辛料のことです。昔は塩が薬のように貴重でした。その時代の名残で味付けに使われる調味料を指す言葉にも「薬」の字が入っていたそうです。食べ物の名前を見ると、韓国料理の歴史や考え方などを感じることができそうですね。
韓国の若者が再注目 現代風にアレンジした薬菓も人気!
伝統菓子である薬菓が注目されたきっかけは、動画サイトで紹介されたことと、韓国でトレンドになっている「ハルメニアル」の影響が大きいようです。ハルメニアルとはどのようなトレンドなのでしょうか。
近年、韓国では若者の間でレトロがトレンドとなっています。おばあちゃんが食べていたようなレトロな食べ物や、昔の服を現代風にアレンジしたものが人気です。このレトロブームを「ハルメニアル」と呼びます。これは、韓国語でおばあちゃんを意味する「ハルモニ」と、2000年代以降に成人を迎えた世代や社会人になった世代を指す「ミレニアル(Millennial)」を組み合わせた造語です。※1
ハルメニアルによって、昔から食べられていた薬菓だけでなく、クッキーと薬菓、アイスクリームと薬菓など、現代風に進化したスイーツも見られます。また、高級志向の薬菓も登場し、これらの薬菓はSNSでも話題となっていて、韓国を訪れた日本人観光客にも人気のようです。
日本でも薬菓専門店がオープン
韓国では薬菓はスーパーやコンビニなどでも買える身近なお菓子ですが、最近は日本でもみかけるようになりました。東京・新大久保や大阪・松屋町には薬菓を使ったスイーツのお店がオープンしています。日本にいながら韓国のトレンドを楽しめるのはうれしいですね。
日本における韓国スイーツブームは、トレンドに敏感なZ世代の間でも広がっています。韓国スイーツはおいしいだけでなく、色や形がかわいらしいため、SNSで話題になることも多いようです。韓国発祥の「クロッフル」も、SNSで話題となったスイーツの一つ。日本のブームやクロッフルの詳しい情報は、下記の記事でご紹介しています。
・日本のブームはZ世代から ?韓国スイーツの紹介と若者の健康意識
・韓国スイーツの新星! クロッフルってどんなスイーツ?
話題の薬菓が食べられるお店を紹介
Instagramで見つけた薬菓が食べられるお店をご紹介します。
〇Cafe no.
https://www.instagram.com/p/Csqa0FmhcMo/?igsh=MXRqN2Q3NTk4Z3hzNQ%3D%3D
大阪市西区に本店を構え、東京・原宿など全国に4店舗ある話題のカフェ。写真は「キャラメルヤックァ(左)」と「アフォガードヤックァ(右)」。韓国の伝統的なお菓子ヤックァを使用したドリンクです。ヤックァはエスプレッソやアイスクリームとも相性抜群なお菓子です。材料仕入れの都合上、売り切れの場合もございますのでお店にご確認ください。
〇Rico cafe kyoto
https://www.instagram.com/reel/CzdKiD_vD_M/?igsh=MTh6Ym9zaWU2aW9neg%3D%3D
京都にある韓国ごはんと韓菓のカフェ。写真は「薬菓バニラアイス」。韓果堂という丹波の工房で宮中餅菓研究院韓菓を学んだ方が手作りされている薬菓を使用しており、サクサクとした食感で、下にはローストナッツが敷き詰められ、バニラアイスが添えられています。甘さ控えめな蜜を絡めていただきます。
〇METDORU CAFE
https://www.instagram.com/p/CtgWW3wvzMw/?igsh=c3NxbThqeHdwdTZh
東京都新宿区に2023年にオープンした韓国カフェ。淡色で統一された店内は韓国らしいお洒落な雰囲気で、旅行気分を味わえます。写真はMETDORU CAFEの大人気商品『ヤックァ爆弾ピンス』。さらさらなミルク氷に薬菓がトッピングされている珍しいスイーツです。
〇82#SHOP&CAFE
https://www.instagram.com/p/CzhtWzuyZq9/?igsh=MXQ1b2xseTBrYWphOQ%3D%3D
愛知県東海市にある韓国カフェ。写真は「薬菓クッキー」。シナモンとハチミツを使ったしっとりした食感がクセになります。落ち着いた雰囲気のお店でのんびりと、美味しい飲み物と一緒に味わってみてはいかがでしょうか。テイクアウトも可能です。
SNSだけにとどまることなく、日本の韓国ブームは根強いものがあります。伝統菓子の薬菓の韓国内のブームを受けて日本でも注目されています。かわいらしい形とどこか懐かしさも感じる薬菓が気になっている方は、実際に味わってみてはいかがでしょうか。
<参考>
※1 VISIT KOREA「韓国の若い世代が選んだ伝統スイーツ」
https://japanese.visitkorea.or.kr/svc/contents/contentsView.do?menuSn=600&sContsTtl=&sort=regDt&page=1&vcontsId=188371&menuSn=600
※2 日本食糧新聞「韓国に見る薬食の特性 ヘルシー&美味」
https://news.nissyoku.co.jp/hyakusai/hgs-2-0004