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黒糖で栄えた大河ドラマで話題の薩摩藩、サトウキビから黒糖を作る方法とは?

皆さまの生活にも普段から関わりのある「糖」。
今ではどこのお店に行っても安価で手に入りますが、某大河ドラマで取り上げられた通り、昔の黒糖は高値で取り引きされていました。
そこでここでは黒糖についての歴史や、実際にどのように作られているのかを紹介していきたいと思います。

黒糖とは?

黒糖とは「黒砂糖」とも呼ばれ、原料であるサトウキビを搾って汁を取り出し、それを煮詰めて作ったものを言います。そして、黒糖の成分の中から「糖蜜」を取り除いた物が、日本で最もポピュラーに消費されている「白砂糖」になるのです。
黒糖の原材料には主に沖縄などの温かい離島で生産されているサトウキビが使われますが、白砂糖はというと、北海道などの寒い地域で作られる「テンサイ(砂糖大根)」をメインに使っているものが多く、それにサトウキビをブレンドしたものが広く出回っています。※1

黒糖の主な産地とは?

では日本ではどこが黒糖の主な産地なのでしょうか? それは原料となるサトウキビの栽培が多いところが必然的に産地となります。日本でサトウキビが最も多く作られているのはやはり沖縄県と鹿児島県です。
ほかにも徳島県や香川県でも作られていますが、わずかな量でしかなく 、沖縄と鹿児島の2県だけで、国産シェアの大半を占めているのです。※2

では世界での主な産地とは?

日本では比較的ポピュラーな白砂糖ですが、実は世界では黒糖の方が多く出回っているのです。では、どこの国が産地かというと、ブラジルやインドなどの熱帯地域が多く生産量をあげています。※3
それはやはり、熱帯地域ではサトウキビの作付が多く、精製して糖蜜を取り除かずに出荷することが多いからのようです。

タメになる砂糖の歴史

それでは一体砂糖はどこで誕生したのでしょうか。
時代は遡り、紀元前8000年頃。南太平洋のパプアニューギニア地域にサトウキビ誕生の伝説が残っています。そして時が経ち紀元前327年頃、ペルシア帝国を破り、インドに遠征中だったアレクサンダー大王がガンジス川である報告を受けます。それは、かじると甘い蜜が出る葦があるというもの。

そう。サトウキビの発見です。※2※4※5
当時の甘味料としてはミツバチの巣から取れるハチミツしかなく、甘い葦であるサトウキビの存在は驚愕を与えたのです。
そしてさらに800年近く経った西暦400年過ぎの中国。サトウキビの汁を煮て固め乾燥させた砂糖が始めて発明されました。
西暦1096年の十字軍遠征では、十字軍の兵士が砂糖を持ち帰ったことにより、ヨーロッパにも広がります。そして世は大航海時代。コロンブスらの手によりサトウキビの栽培法と砂糖の作り方は世界に広がったのでした。

日本と砂糖の縁

では日本に砂糖が伝わったのはいつ頃なのでしょうか。
実は日本に砂糖が伝わったのは早く、時は8世紀。中国は唐帝国の僧である鑑真が持ってきたとされる説や遣唐使が伝えたとされる説などがあります。※4※5※6
黒砂糖500斤。キログラムに換算すると約300キロもの砂糖が日本に持ち込まれましたが、甘くて当時大変貴重だった黒砂糖はもっぱら薬用に用いられたそうです。
その後大陸との貿易が活発になり、砂糖は重要な輸入品となったのです。※2

薩摩藩と砂糖との密接な繋がり

砂糖を重要な輸入品として取り寄せていた日本。ではいつ頃から作られるようになったのでしょうか? それは江戸時代の初期、琉球と呼ばれていたころの沖縄の地でした。
1623年に儀間真常なる人物が中国への使節団に黒糖の製造方法を学ばせ、琉球の地で製造を始めたのです。
それから琉球を始め、奄美大島や喜界島などでサトウキビの栽培から製造までが行われるようになったのです。※6※7

その砂糖の管理をしていたのが薩摩藩でした。
1609年に琉球とその島々を支配下に置いた薩摩藩は、この黒糖を独占することにより莫大な利益を上げたのです。※7※8

サトウキビから黒糖までの製糖作業とは

では実際に黒糖はどうやって製造されるのでしょうか?
まずは伐採したサトウキビの茎を搾って汁を取り出します。
そうして取り出した汁を煮詰めて水分を蒸発させ、濃縮した後に冷やすと黒糖の塊ができるのです。
しかし、サトウキビの茎は堅くて人力で搾り出せるものではありません。
そこで、当時は、2つの車輪で茎を挟んで引くことで汁を絞り出していました。

ですが元のサトウキビから採れる黒糖の量はわずか100分の1であり、過酷な重労働の上に、薩摩藩からの出来上がった黒糖への取り立ては厳しかったそうです。※9

薩摩や琉球で今も息づく黒糖作り

当時は黒糖地獄と呼ばれ、島民は甘い匂いだけを嗅がされ口にすることの許されなかった黒糖でしたが、その黒糖作りが今では沖縄諸島と鹿児島県の特産品となり国産の黒糖シェアの大半を占めています。※10

沖縄では西表島や与那国島など8つの離島で作られた黒糖のみを「沖縄黒糖」としてブランド化し、それを使って「ちんすこう」などのお菓子、奄美大島では黒糖焼酎など特産品に黒糖は欠かせないものになっています。※11※12

昔は圧政の上に成り立っていた黒糖製造でしたが、それが今の黒糖作りに活きているのです。

参照元
※1 調味料の百科事典 黒砂糖と白砂糖の違いは?栄養やカロリーも違う?
https://kireinasekai.net/kurosatou/
※2 SUGAR TIME 砂糖の歴史
http://sugar.alic.go.jp/sugartime/rekishi/rekishi.html
※3 FOOD&Nutrition Library 若山博士監修 ためになる食材辞典
http://shoku-joho.com/jiten/?p=281
※4 三井製糖 こうして砂糖は広まった~世界一周、砂糖の旅~
https://www.mitsui-sugar.co.jp/story/oshiete/journey.html
※5 オフィス用品の教科書 黒砂糖ほど「黒く」はない?
http://office-frt.com/1542
※6 県産品紹介ポータルサイト おきなわさん 県産品詳細
http://www.onb.jp/okinawasan/sweets/sweets-kokutou.html
※7 独立行政法人 農畜産業振興機構 alic(エーリック)消費者コーナー 砂糖の歴史(日本への伝播)
https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000078.html
※8 開発工学vol.33 No.2 2013 大江修造著 黒糖の「6次産業化」で豊かに
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kaihatsukogaku/33/2/33_137/_pdf
※9 毎日新聞 追憶…かごしまの産業、近代化遺産発見!奄美地方・黒糖づくり「勘が頼り」伝統製法/鹿児島
https://mainichi.jp/articles/20160107/ddl/k46/040/350000c
※10 沖縄県黒砂糖協同組合/沖縄県黒砂糖工業会
http://www.okinawa-kurozatou.or.jp/kokutou/
※11 独立行政法人 農畜産業振興機構 alic(エーリック)砂糖 8つの島の沖縄黒糖
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_000996.html