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ぼたもちとおはぎの違いってご存知ですか? そしてこんな雑学が?


おはぎとぼたもちは似たような食べ物であり、今では分けて呼ばれることも少なくなっています。しかし、もともとおはぎとぼたもちでは作る季節に違いがあり、別の呼び名もあったのです。おはぎとぼたもちは形状やあんこの種類で呼び方を分けることもできますが、地域による呼び方の違いもあります。ぼたもちとおはぎについて、呼び名や由来にまつわる雑学をまとめました。

ぼたもちとおはぎは作る季節に違いがあった


ぼたもちとおはぎは、それぞれ作る季節に違いがあり、その季節の花の名前に由来しています。ぼたもちは江戸時代に春のお彼岸に食べられていたもの。砂糖は貴重だったため、あんこは塩味で作られていましたが、江戸時代中期になると砂糖の入ったあんこが広まっていきました。
一説には小豆を牡丹の花に見立てたことから、「ぼたんもち」と呼ばれていたのが「ぼたもち」に変わったとも言われています。一方のおはぎは、秋のお彼岸に食べられていました。秋の七草のひとつである萩の花と小豆の形状が似ているため、「おはぎもち」と呼ばれていたのが「おはぎ」に変わったとされています。※1※2

さらに、夏や冬に作る場合には別名があります。夏の別名は「夜船(よふね)」です。おはぎを作るときには臼でつくことはせず、米を潰して作られるため、餅をつく時のようなペッタンペッタンといった音が出ません。近隣の住人でもおはぎを“ついた”のがいつか分からないことから、夜は暗くて船がいつ“着いた”か分からない「夜船」になぞらえて呼ばれるようになりました。また、冬は「北窓」とも呼ばれ、北にある窓からは“月”が見えないことによります。搗(つ)くことをしないことから、転じて“月知らず”となったわけです。※3※4

今では季節の区別なく呼ばれることが多いおはぎやぼたもちですが、春夏秋冬で「ぼたもち」、「夜船」、「おはぎ」、「北窓」と分けて呼ぶこともできるのです。

このように、和菓子は四季や行事が大きく関わっています。ぼたもちやおはぎだけでなく、花びら餅や月見団子のように季節や行事ごとに願いを込めて供えられた和菓子に加え、四季折々の美しさを意匠で表す練りきりも目を楽しませてくれます。また、季節ごとに食べられる和菓子は、俳句にもよく登場し、多くは季語 としても使われています。「花びら餅(菱はなびら餅)」は新年を表し、「月見団子」はもちろん秋を、そしてなんと「鯛焼」も季語として使われており、こちらは冬を表しています。

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ぼたもちとおはぎの形状やあんこの種類の違いは?

ぼたもちとおはぎ、どちらも米を蒸すか、あるいは炊いた後に潰し、それを丸めてあんこで覆うという作り方は同じです。しかし、もともとは形状やあんこの種類も異なるものでした。

ぼたもちは牡丹の花のように大きな丸い形で作られ、おはぎは萩の花のように細長い俵型のような形状で作られていたとされています。外側を覆うあんこもぼたもちはこしあん、おはぎは粒あんという違いがありました。秋に収穫したばかりの小豆は皮が柔らかく、そのまま皮も潰して食べられるため、秋のおはぎには粒あんが使われていました。しかし、ぼたもちを作る春には皮が固くなってしまっているため、皮を取り除いたこしあんが使われていたのです。※2

現在では、小豆の品種改良や保存技術が発達した結果、季節を問わず、粒あんが作れるようになったため、季節によるあんこの違いがなくなりました。※5

地域によってぼたもちとおはぎの定義は違う

ここまでの内容をまとめると、春に作るこしあんを使った丸い形状のものが「ぼたもち」、秋に作る細長い俵型の形状で粒あんのものは「おはぎ」となります。しかし、実はそれぞれの定義には地域による違いもあり、一概には分けることができません。季節や形状に関係なく、ぼたもちとおはぎのいずれかの呼び方で親しまれている場合もあるのです。

例えば、米の種類で分けて、主にもち米で作られているのは「ぼたもち」、主にうるち米を使っているのは「おはぎ」と呼んでいる地域もあります。あるいは、あんこで覆ったものは「ぼたもち」、きな粉をまぶしたものは「おはぎ」と呼ぶ地域もあるのです。※2

さらに、「半殺し」と「皆殺し」などという、穏やかではない呼び方をする地域もあります。「半殺し」とは、ごはんを潰す際に粒が残る状態にしたもの。粒が残らない滑らかな状態にしたものが「皆殺し」で、「全殺し」や「本殺し」とも呼ばれます。米の潰し方ではなく、あんこによって呼び方を分けている地域もあり、粒あんは「半殺し」、こしあんは「本殺し」です。おはぎを作る時に、「半殺しと皆殺しのどっちにする?」と聞かれたら、ドキッとしてしまいそうですね。※2※6

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お彼岸にぼたもちやおはぎを食べる理由

そもそもお彼岸にぼたもちやおはぎが食べられるようになったのは、どのような理由によるのでしょうか。

一説では、古来から赤という色には災難が降りかからないようにする魔除けの効果があるとされていたことによります。赤い小豆は五穀豊穣を象徴する米と組み合わせて祭事に用いられてきました。ぼたもちやおはぎ以外にも、小豆と米の組み合わせによる食べ物として赤飯が挙げられます。邪気を払い、先祖の霊を慰めるために、お彼岸におはぎやぼたもちが捧げられてきたのです。※1※4

また、農作業が始まる春の彼岸にぼたもちを作り、収穫の時期に当たる秋の彼岸におはぎを作ることで、神様に感謝していたとも言われています。※6

今では、ぼたもちとおはぎの呼び名を区別しない地域も少なくありませんが、もともとは季節などによる違いがあったのです。ぼたもちやおはぎをはじめ幾つもの呼び名があるのは、日本が四季折々の自然に恵まれていることにも関係しているのでしょう。


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参照元
※1 おはぎとぼたもちについての素朴な疑問を解決!
https://allabout.co.jp/gm/gc/223752/
※2 「おはぎ」と「ぼたもち」、明確な違いは?
https://zexy-kitchen.net/columns/321

※3 おはぎとぼたもちには、夏と冬の呼び名があった!
https://allabout.co.jp/gm/gc/223752/3/
※4 昔は違った!?「おはぎ」と「ぼた餅」の違いとは
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2017/10/post-640.html
※5 おはぎとぼたもち、大きさや形に違いはある?
https://allabout.co.jp/gm/gc/223752/2/
※6 「明日は半殺しにしようか……」おはぎにまつわるキケンな合言葉とは
https://macaro-ni.jp/33628