糖と健康

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漢方薬と糖との意外な関係とは?!


日本古来の医薬品である漢方薬。一見非科学的でおまじないのように思えますが、最近になってその効果が見直されてきており、エビデンスも蓄積してきて、さらに進化をとげている医薬品となっています。市販で買える漢方薬も増えてきており、多くの医師も処方するようになってきています。

実は漢方薬と糖には切っても切れない関係があるのをご存知でしょうか?今回は漢方薬と糖の関係について紹介します。
 

そもそも漢方薬ってどういう薬??

漢方医学は中国の医学のような印象をうけますが、中国の医学(中医学)を参考にして、日本人向けに改良を施したものになります。漢方医学で使われる漢方薬はいくつかの生薬と呼ばれる薬草のあらゆる部位を乾燥や加工したものを古来より伝わってきた種類と量になるようにそれぞれ組み合わせたものを言います(一部、生薬単独から構成されるものもあります)。ですので、漢方薬は色々な症状や病態に効くことになります。

そして、色々な生薬を組み合わせているので効果や副作用も人によってまちまちになりますので、きちんとした診断にのっとって、各人の体質などを考慮した「証」を決定した上で処方しないと効き目が発揮できません。例えば、一番有名な葛根湯はよく風邪のひき始めに使われますが、実は胃腸が弱い人や汗っかきの人には適していません。

さらに言うと、人によっては、肩こり、下痢などにも効果を発揮します。こういう特徴があるため、なかなか薬理効果の実験がしにくく、結果としてなかなか詳細な作用機序がわかりにくいという難点がでてくる訳です。ただ、長い歴史の中で使われてきたため、多くの症例を重ねており、統計学的に見ると多くの人に効きやすい薬として存在するという面もありますので、比較的安心して使用しやすい薬とも言えます。

生薬の中の成分が大事??


生薬の主成分となるのは多くが配糖体と呼ばれるものになります。文字通り、糖が付加された物質を指します。配糖体になることで水溶性が高くなっているので、お湯や水と一緒に摂取するとその成分を効果的に摂取できるようになっています。

なぜ配糖体の形で存在しているというと、一説によりますが、植物の中で役割を失った生理活性物質に糖が付加されるのではないかと考えられています。循環系や排泄系が発達してない植物においては糖が付加されることで活性を失うようになっているのではと言われています。ヒトでは働きを終えた活性成分はグルクロン酸などで抱合して解毒や排泄されますが、それに似たような機構だと予想されます。

この配糖体を具体的に見てみると(生薬名:配糖体名)、甘草:グリチルリチン、柴胡:サイコサポニン類、人参:ジンセノシド類、大黄:センノシド、芍薬:ペオニフロリンなどです。この配糖体は胃ではまったく影響されず、消化酵素による分解もほとんど受けません。また、腸管粘膜からも吸収されず、配糖体のままで小腸の下部から大腸まで到達します。植物内で役割を終えた活性物質の配糖体はヒトの体内でもそのままでは影響をほとんど及ぼさないと言っても過言ではないのです。

腸内細菌が重要になってくる??

大腸に到達した配糖体は腸内細菌によって分解され、薬効を発揮する形に変わり、それが吸収されることで初めて効果を発揮します。例えば、前述した甘草の配糖体のグリチルリチンは、腸内細菌により、グリチルリチン酸に分解された後、それが吸収されることで薬効を発揮するのです。つまり、腸内細菌が少ない方だと漢方薬の効果が出にくいということになります。

漢方薬は個人差が大きい薬でもありますが、腸内細菌がその一旦を担っていると考えられています。ただし、漢方薬に関しては、まだ未知の部分も多く、配糖体のままで吸収されるものもあること、また、胃酸の影響を受けるものもあることも一部報告されてはいるため、さらなる研究が必要ではあります。しかしながら、大部分の漢方薬では腸内細菌による糖部分の切断がキーとなることは間違いないようです。
 

漢方薬は食前・食間服用が基本なのにも関係が??


漢方薬を飲んだことがある方ならわかると思いますが、漢方薬は基本的には食前・食間服用、つまり食物が胃に入っていない状態で飲むことが原則となります。この根拠の一つには前述した配糖体の特徴と考えられています。

再度まとめると、配糖体は水溶性が高くなっていて、そのままの形で腸まで到達して、そこで腸内細菌により糖部分が切り離され脂溶性が高まります。食事をすると胃腸内が脂溶性環境になるため、水溶性の配糖体とはなじまず、配糖体の腸への到達が遅れてしまい、結果として代謝・吸収ともに弱まってしまいます。あくまで脂溶性に性質が変わるのは腸内にまで来た後であるため、その腸への到達をよくするためには、胃腸内に何も食物が入っていない水溶性環境の状態で漢方薬を服用することが良いと考えられます。

ただし、胃が弱い場合や飲み忘れることが多い場合などの時には、飲まないよりかは食後でも飲んだほうが効果的であろうという考えから、食後服用を採用したりもします。最近では、食後服用でもさほど効果という点では問題ないという研究報告も出されてきているので、その辺はまだはっきりとはしていません。ただ、漢方薬の効果にとって、糖が関与していることだけは理解できると思います。

今後漢方薬を服用される際には、是非少し意識してみてください。


【ライター紹介】


宮川 隆 (みやがわ りゅう)
名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれている。