糖と健康

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お酒と糖との関係とは?!

仕事を終えた後のお酒は美味しいですよね。コロナ禍の影響で家で飲む方も多いと思いますが、家で飲んでいると終電を気にしなくてもいいこともあり、ついつい飲み過ぎてしまうことも少なくありません。「お酒は糖分が多いから飲み過ぎたら当然太る」と思っている方もいらっしゃいます。今回はお酒と糖との関係を見てみたいと思います。

お酒と言っても種類がある??

お酒を分類すると、①醸造酒、②蒸留酒、③混成酒の3つに分けられます。

①醸造酒

発酵を利用して作り出すもので、ワイン、日本酒、ビールなどが該当します。ただし、発酵を利用すると一口に言っても微妙に作り方に差が出てきます。ワインなどのいわゆる果実酒と呼ばれるものは、その原料自体にブドウ糖が含まれているため、酵母をただ加えさえすればアルコール発酵を起こすことができます(単発酵)。
一方、日本酒やビールの場合には、米や麦といったデンプンが原料になります。このデンプンをまずはブドウ糖へと分解しなければいけないのです。そのために、日本酒では麹菌を使ってブドウ糖への分解を起こすことに加えて酵母による発酵も同時に起こさせ(並行複発酵)、ビールの場合には麦芽に含まれる分解酵素によってデンプンをブドウ糖へと分解させて(糖化)、その後に酵母を加えて発酵させます(単行複発酵)。つまり、日本酒は麹菌と酵母による共同作業で分解と発酵を同時に行いますが、ビールでは二段階の行程を経るという感じです。それぞれの風味の違いは原料の違いだけでなく、こういう醸造法の違いからきているとも考えられます。そして、この①は立派な発酵食品ということにもなります。

②蒸留酒

①を加熱して、得られた蒸気を冷やすことにより、アルコール分などを液体にして集めることで得られます。こうすることで高濃度のアルコール液が得られるため、この②は①と比べてアルコール濃度が高いものばかりです。ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン、焼酎などがこれに含まれます。

③混成酒

①と②に香料や糖質を加えて作るものです。梅酒やリキュールなどがここに含まれます。
これが作られるようになった歴史的背景としては、実は医学との関連があります。漢方薬の中にはお酒と一緒に飲むことで効果を発揮するものが実はあるのですが、古来よりどの伝統医学でも、お酒に薬を混ぜることで効果を出そうという考えがありました。お酒自体も少量であれば血流がよくなって身体が温まるため薬になるという考えもあったくらいです。ですので、この③は元々薬用酒として作られてきたというのが背景になります。

それぞれのお酒の特徴を理解することが大事!!

それぞれのお酒の特徴は前述した感じになります。
ここで理解しておきたいことは②の蒸留酒は糖質がほぼゼロであること、そして、ある程度の糖質が含まれていた方が美味しさやこくは上がるということです。美味しいと感じるためには味覚や風味など色々なものが関与しますが、アルコール濃度や糖質の有無も大きく影響しています。
例えば、ウイスキーや焼酎にはほとんど味がなく、人によってはこういったお酒はアルコール臭が強くて苦手という方もいます。逆に、混成酒は甘すぎて苦手という方もいます。また、ビールの味に似せたノンアルコールビールや最近発売された糖質ゼロのビールの味がいまいち物足りないと感じる方もいます。

糖質が悪いのではなく上手に飲むことが大事!!

アルコール濃度と糖質のかけ算という観点から、それぞれの特徴を理解してたしなむことが良いです。
ここで注意点があります。例えば、ウイスキーを炭酸水で薄めてハイボールにして飲むような時に、ただの炭酸水で割るなら糖質はほとんどゼロになります。しかし、ジンジャーハイボールで飲もうとすると、薄めるために用いるジンジャーエールに糖質が含まれるため、飲み過ぎると糖質過多になる可能性があります。また、普通のハイボールを飲んだだけで太ったという方がいれば、それはおそらく一緒に食べたおつまみの食べ過ぎではないかと考えられます。
糖質量という点では③に含まれる梅酒が一番多く、日本酒、ワイン、ビール、白ワイン、赤ワインがそれに続きます。逆にいうと、梅酒が一番甘く飲みやすいという特徴もあります。糖質制限を意識しすぎるのではなく、それぞれのお酒の特徴を理解して上手につきあっていくのが大事ということです。

ハイボールを飲む時にはおかずを多めにする、梅酒を飲む時にはおかずを減らすなどの一工夫で、色々なお酒を楽しめ充実した飲酒ライフがおくれます。もちろんどのお酒も飲み過ぎると糖質過多ではなくアルコール過多になり、肝臓に負担をかけてしまうため注意が必要です。加えて、太るということを考えると糖質以外の目安の1つとしてカロリーもあります。この観点では、②の蒸留酒であっても約70kcal 程度はありますので、こういう点からも飲みすぎは控えた方がいいと思われます。また、お酒を飲むと大量にタンパク質、ビタミン、ミネラルを消費し、代謝が落ちる可能性があります。これを防止するためにも、おつまみを一緒に食べるようにすれば、さらに太る可能性を減らすことができます。
是非皆さんも、お酒と糖の関係を理解し、それを上手に活かすことで楽しい飲酒生活を送ってください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれている。