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ただの糖の偽物にあらず?!人工甘味料とは??

ジュースを買ったり、お菓子を買ったりする際に、今は見ない時はないくらい広まっている人工甘味料。糖質制限がブームの中でさらにその需要が拡大しました。ただ人工甘味料についてあまり知らない人も多いのも事実。今回はこれについてまとめます。

そもそも甘味料とは??

甘味料というのは「食品に甘みをつける」ことを目的に使われるものになります。
甘味料の分類法には諸説あるものの、基本的にはまずは、①糖質系甘味料、②非糖質系甘味料の2種類に大きく分類されます。

糖質系甘味料

砂糖  
デンプン由来の糖 ブドウ糖、果糖、水飴、トレハロースなど
その他の糖 乳糖、ガラクトオリゴ糖など
糖アルコール ソルビトール、キシリトールなど

非糖質系甘味料

天然甘味料 ステビア、甘草(グリチルリチン)など
合成甘味料 サッカリン、アスパルテームなど

実は定義上、砂糖自身も甘味料になるのです。
糖アルコールは元々天然にあるものを合成して作るという点で合成甘味料と間違いがちですが、天然にあるものを作るだけなので合成甘味料にはあたりません。

これらのうち糖アルコールと合成甘味料の2つがいわゆる人工甘味料にあたります。これらの中で勘違いしている方が少なからずいることですが、単に甘味料と言った場合には人工甘味料とは限らないことがわかります。
つまり甘味料が含まれている食品を摂取すると、甘味料の種類によっては血糖値にダイレクトに影響することがありうるということです。人工甘味料と言った場合には化学合成したものが正式には該当するということが基本です。

合成甘味料以外でよく使われている甘味料の特徴とは??

合成甘味料以外でよく使われる糖アルコールである(1)エリスリトールと(2)キシリトール、2糖類である(3)トレハロースの特徴を見てみましょう。

(1)エリスリトール

冷涼感を特徴として持ちかなり安全性が高いと言われているもので、砂糖の甘みよりもやや少ない甘みです。糖アルコールの中で唯一カロリーゼロという特徴と他の合成甘味料と一緒に使われることが多いからか、合成甘味料によく間違われます。虫歯予防の商品に使われますが、注意点としてはお腹が緩くなることがあることです。

(2)キシリトール

エリスリトールより少し弱いものの冷涼感がありを特徴として持つもの で、虫歯予防の商品によく使われます。覚えておきたいのは、人間ではお腹が緩くなるくらいの注意点ですが、犬が摂取することで急激な血糖値低下を起こし、場合によっては死に至らしめるという点です。間違ってもキシリトールが含まれている商品をペットのワンちゃんに上げてしまわないようにしましょう。

(3)トレハロース

よく人工甘味料に誤解されがちですが、これには理由があります。トレハロース自体は元々天然由来で、トウモロコシなどから抽出する糖類ですが、抽出量がかなり少ないという特徴があります。しかし、研究開発の成果で、今は人工的に大量に合成できるようになったのです。人工的に製造するようになったため人工甘味料と間違われがちなのですが、分類上は違っていますので注意が必要です。

合成甘味料の種類と特徴とは??

合成甘味料は、「本来自然界に存在しないが化学合成で作り出した甘味料」が該当します。
代表的なものとして、A.アスパルテーム、B.スクラロース、C.アセスルファムカリウム、D.サッカリン(およびそのナトリウム塩とカルシウム塩)があります。

A.アスパルテーム

アミノ酸を基にしたもので、砂糖の約200倍の甘みを持ちます。そのため、ダイエット系食品によく使用されています。大きな注意点としては、フェニルケトン尿症に罹患している方では摂取厳重注意という点です。アスパルテームにはフェニルアラニンというアミノ酸が含まれていますが、フェニルケトン尿症の方はこれを体内で代謝することが出来ないのです。そのため、場合によっては致死的状態になりうるため注意が必要になります。

B.スクラロース

砂糖の約600倍の甘みを持ち、まろやかで後味も良いことからお菓子類によく使われています。分子構造内に塩素を含む有機化合物であるため心配する方もいらっしゃいますが安全だと世界中の機関が認定しているため、他のものと同様過剰摂取しなければ問題ありません。

C.アセスルファムカリウム

砂糖の約200倍の甘みをもっていますが、摂取後の甘みが残りにくい特徴から、甘いものが苦手な方でも摂取しやすいものになり、スポーツ飲料などによく使われています。注意点としては、ラットを使った実験で胎児に影響が出たとの結果があるため、妊娠中や授乳中は避けたほうが良いのではないかと言われている点です。それ以外の方では、過剰摂取しなければ問題ありません。

D.サッカリン(およびそのナトリウム塩とカルシウム塩)

砂糖の約700倍の甘みを持つものです。水には溶けないという性質を持ちます。脂・油を使った加工食品などに使用されます。以前、動物実験で発がん性が疑われる結果が出たため使用が禁止されていた時期がありますが、その実験の不備があり、サッカリンを投与する際に一緒に用いた別物質が発がんの原因だったとわかり、使用されるようになりました。ですので、これも過剰摂取しなければ問題ありません。

人工甘味料と一口に言っても奥が深いことがわかります。
是非覚えておいてください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれている。