糖と健康

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糖を上手に活かすための調理の科学とは??

古来より、人間は素材をそのまま食べるということは少なく、調理することで色々な美味しい料理を作り出してきました。料理をするうえで「素材や調味料を上手に活かす」という概念を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。なかでも糖質は多くの食材に含まれているため、その特徴を活かすということが美味しい料理への基本となります。今回はこの観点から見ていきたいと思います。

そもそも料理は科学である!!

よく聞かれる「料理は科学である」という概念は今や常識となり、料理を物理学的・化学的に研究する分子ガストロノミー(分子美食学)という学問分野も存在しています。料理は以前より職人技とされ、代々師匠から弟子へと秘伝として伝えられてきたという側面があります。そのような中、あらゆる調理法は実は科学的に説明できて、誰でも美味しく調理することができるのではないかと考えられるようになってきました。その結果、多くの調理器具や食品添加物などが開発されてきたのです。今や電子レンジで本格的なスパゲッティが誰でも簡単に作れたり、お湯一つで本格的な味噌汁が作れたりするのも、その成果の現れと考えられます。そして、今後人工知能が分子ガストロノミー分野に導入されることで、レシピ開発や料理再現などがさらに簡単にできるようになると見込まれています。そうすると、これまでのように何十年にも渡って住み込みで修行を積む料理人は減ってくるのではないかとも考えられます。

科学者と料理人は実は相性が良い??

科学者は実験器具を使って実験を行います。一方、料理人は調理器具を使って調理を行います。両者は非常に似ていることから、科学者の中には料理が得意な人が少なくなく、また料理人の中には科学的素養がある人も結構多いという印象があります。現に、料理人の代表的な国家資格である調理師の試験問題を見てみても、料理の知識に加えて、化学、生物、物理学、数学の知識が必要な問題もたくさん出題されており、調理師は、最後に「師」がつく他の職業である医師や薬剤師などと同様科学者としての側面もあるのです。そして、国内外問わず、元々科学者だった人が料理を追求するあまり、急遽料理人に転身した結果、一流の料理人になったという事例もいくつかあります。こういった観点から見ても、料理と科学は相性がいいと言えるでしょう。

糖と科学を融合させた効率的な調理法とは??

糖を用いた調理を行う場合、糖の特性を科学的に考えてみると、自ずとベストな調理方法が見えてきます。糖の科学的特性を具体的に見てみると(1)高親水性・高溶解性・脱水作用、(2)デンプンの老化防止、(3)タンパク質の熱凝固抑制、(4)保存性を高める、(5)寒天、ゼラチンゼリーの品質向上、(6)ジャム製造時のペクチンのゼリー化、(7)アミノカルボニル(メイラード)反応、(8)油脂の酸化防止、(9)卵白メレンゲの安定化、(10)イーストの発酵促進、(11)温度による状態変化になります。それぞれの適切な調理法を、例を挙げながら考えていきましょう。

(1)高親水性・高溶解性・脱水作用

(例)ココアを作る時に、ココアパウダーと砂糖を先に混ぜてからお湯や牛乳を加えて混ぜると溶けやすくなるという工夫が有効です。

(2)デンプンの老化防止

(例)鮨飯を作る際に、酢だけでなく少量の砂糖を加えると、ご飯がさめても硬くならずにすむことが期待できます。

(3)タンパク質の熱凝固抑制

(例)すき焼きを作る時に、肉の上に幅広く砂糖をふりかけると肉がしっかり焼けたとしても硬くならずに済むことが期待できます。

(4)保存性を高める

(例)フルーツを砂糖漬けにすると、食品中の水(自由水)が砂糖に奪われることで、微生物の繁殖を抑えることができます。

(5)寒天、ゼラチンゼリーの品質向上

寒天ゼリーやゼラチンゼリーを作る際に砂糖をまんべんなくしっかりと加えると、砂糖がゲルの分子間で架橋を作ることでゲルが密な構造を形成し、ゼリーの強度や透明度が高くなります。

(6)ジャム製造時のペクチンのゼリー化

(例)イチゴジャムを作る際に、砂糖濃度を60%程度にすることでペクチンのゼリー化が安定化し、しっかりとしたジャムができます。

(7)アミノカルボニル(メイラード)反応

味噌や醤油を製造する際にこの反応が起こることで、色が良くなり、味の向上にもつながります。

(8)油脂の酸化防止

油脂は特に酸化しやすい物質ですが、砂糖と一緒に使うことにより酸化を遅らせることができます。バターなどで応用されます。

(9)卵白メレンゲの安定化

焼きメレンゲを作る際に、卵白にたくさんの砂糖を加えることで、メレンゲが安定し、オーブンで焼いても泡が維持できます。

(10)イーストの発酵促進

パンを初めに発酵させる際に、少量の砂糖を加えると発酵が促進するという効果が発揮されます。

(11)温度による状態変化

「砂糖の七変化」とも呼ばれており、砂糖液を加熱する温度を変えることでシロップ~カラメルまでの七つの異なる状態を作り出すことができ、色々なお菓子を作る際にこれが利用されています。

糖を科学的に理解することで、腕に自信がなくても美味しい料理が作れるようになるかもしれませんね。ぜひ色々と調べてチャレンジしてみてください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれており、近年は全日本情報学習振興協会にて講師としてYouTube動画の配信も行っている。
【全日本情報学習振興協会YouTube】
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