糖と健康

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痛みと糖のあま~い関係とは?!


私たちは、けがをした時はもちろん、日常でも色々な痛みを経験します。女性はさらに生理痛など女性ならではの痛みとも日頃から向き合わないといけないので大変です。実は痛みと糖は関係があるのです。今回は痛みと糖との関係を見ていきましょう。

痛みって、そもそもどんなもの??

痛みは本当に厄介なもので、痛みがある時にはたとえ軽度であったとしても気になってしまい、集中力がなくなったりします。できることなら感じたくない痛みですが、実は悪いものではなく体を守るための防衛反応の一つなのです。例えば、どこかをけがをした際に、もし痛みを感じなかったとしたら、けがが悪化するまで発見できず大変なことになってしまいます。つまり、痛みを感じるということは、体に何かしらの不具合が生じているということになり、その痛みの原因に対する対処をしなければなりません。痛みが激しくなってくると、ショック症状を起こすこともあるので、痛みをとりあえず取り除くことも必要となってきます。また、日常生活に支障がある際にも、とりあえず痛みをなくすことも必要になってくるでしょう。例えば、大事な会議がある際に頭痛がしてきて、とりあえず痛みを抑えるために鎮痛剤を飲むということは日常で誰しも経験があることかと思います。この場合には、痛みの原因が除かれた訳では必ずしもないので、鎮痛剤の効果が切れてくるとまた痛みがぶり返してくることもあるので注意が必要となります。

痛みのメカニズムは??


痛みのメカニズムはとても複雑なものですが、簡略化してポイントだけを説明するとわかりやすくなります。まずは痛みの元となる刺激が発生すると、細胞膜にあるリン脂質からアラキドン酸が発生します。その後シクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素によってプロスタグランジンに変換されて、これが起点となり痛みが起こる、というのが簡略化した痛みの発生のメカニズムになります。参考までにですが、炎症やアレルギー症状を抑えるときに、よくステロイドと非ステロイド系解熱鎮痛剤(アスピリン、イブプロフェンなど)が使われます。ステロイドは、痛みの最初の段階である細胞膜のリン脂質からアラキドン酸が発生する過程を抑制し、非ステロイド系解熱鎮痛剤はCOXを阻害してプロスタグランジンの生成を抑えることで、痛みの発生を抑えます。実は、アラキドン酸からはCOX以外の酵素によって、別の痛み関連物質(ブラジキニンなど)も作られるという経路が存在しています。このため、COXだけを阻害する非ステロイド系解熱鎮痛剤よりも、痛みの発生点と言えるアラキドン酸の生成自体を強力に抑制する作用を持つステロイドの方がより強い鎮痛作用を発揮するという訳です。ただし、このアラキドン酸からは、痛みに関係する物質以外の重要な物質も作られているので、あまり無闇に抑制し過ぎると体にとっては逆効果ということにもなるので注意が必要となります。また、激しい痛みを訴えることが多いがん患者さんなどによく使われる、モルヒネなどのいわゆる麻薬成分は、別のメカニズムで痛みをより強力に抑えます。具体的には、痛みに関する中枢に働きかけて、その中枢を抑制する作用を持ちます。前述したステロイド、非ステロイド系解熱鎮痛剤はともに末梢組織において作用するものですが、麻薬成分はそれらを支配する中枢自体に働きかけるため、より強力な鎮痛作用を発揮する訳です。痛み止め用の成分と一口に言っても色々なものがあり、その使い分けが大事になることが理解できます。

痛みを抑える体内物質とは??

痛みというのは生体の防御作用であるということは前述した通りですが、それに併せて、もともと生体には痛みを抑える物質も存在しており、痛みのシグナルが強くなり過ぎた場合には、痛みを調整することができるような仕組みも整っています。その中で有名なものとしては、βエンドルフィンがあります。これは脳内麻薬とも呼ばれており、前述したモルヒネに似た作用をします。脳内麻薬と言っても、このβエンドルフィンはもちろん脳内に自然に存在するものです。違法薬物にあたる麻薬の使用は処罰の対象となりますが、本来のβエンドルフィンをたくさん自分自身で分泌できれば、外から麻薬を補う必要などないのです。恋をしたり、運動をしたり、おいしものを食べるなどの行動をすることでβエンドルフィンの分泌が活発になることがわかっています。また、βエンドルフィンはモルヒネに似た物質ではあるものの、安全性はもちろん、実はモルヒネの約6.5倍にも及ぶ効果を持っているため、モルヒネなどの麻薬を使うよりも効果の点でも優れているといえます。実際、麻薬中毒の方の更正をする際、意図的にβエンドルフィンをたくさん出すような作業を積極的に取り入れたりしているようです。

砂糖って実はすごい鎮痛剤?!

怒っている時やつらいと感じる時に甘いものを食べるとリフレッシュできたりするという効果に関しては多くの方が経験していることと思います。これは(鎮静)効果ですが、実は、砂糖には痛みを軽減する(鎮痛)効果もあるのです。砂糖を摂取することで前述した脳内麻薬であるβエンドルフィンの分泌が活発になり、これにより鎮痛効果が発揮されます。いくつか研究報告もありますが、イスタンブール大学のビルゲン博士らの研究グループによる報告が有名です。赤ちゃんは静脈注射を受ける時に痛みを感じると、大人とは違い我慢ができずに泣きます。ところが砂糖水を与えたところ、赤ちゃんの泣く時間が短縮されたとのことです。まさに砂糖はすごい鎮痛剤と言えますね。ただし、砂糖を取り過ぎると、逆に痛みが起りやすくなるなどの研究報告もあるため、適度な糖摂取が有効ということだけはきちんと把握しておきたいところです。ぜひ普段から適度な糖摂取によってβエンドルフィンを上手に活用できるようになってください。

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【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれており、近年は全日本情報学習振興協会にて講師としてYouTube動画の配信も行っている。
【全日本情報学習振興協会YouTube】
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