糖と健康

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糖を心理学的に科学する!!

脳のエネルギー源として一番大切な糖。脳はいわゆる心を司る器官でもあるため、糖を心理学的に語ることも可能となります。今回は、糖と心理学の関係を見ていきたいと思います。

うつ症状の原因は糖の不足?!

突然不安になったり、イライラしたりするうつ症状。コロナ禍においては様々な要因から、うつ症状を強く感じた方も少なくないでしょう。

最新知見では、「低血糖症」がうつ症状と関係があるのではないかと考えられています。低血糖と言ってもただ単に「血糖値が低い」ということだけではなく、「血糖値を調節できず、安定した血糖値をうまく維持できない」というのが一番の問題点となります。勘違いされがちですが、「血糖値が上がる」こと自体は身体にとって必要な機構なので、悪いことではありません。血糖値の上下をうまくコントロールできずに、結果として急激な乱高下を繰り返すことが問題となります。

低血糖の原因は糖質過多?!

糖質を摂らないと低血糖になることは容易に想像できますが、実は糖質過多の状態が続くことでも深刻な低血糖になることがわかっています。

体内には血糖を上げるホルモンと下げるホルモンが存在し、それらがバランスを取ることで血糖値がコントロールされています。しかし、糖質過多の状態が繰り返されるとそのバランスがおかしくなり、結果として血糖値を上手に上げることができず、低血糖状態に陥ってしまうのです。つまり、糖を摂りすぎても、摂らなさすぎても、精神の安定にとっては芳しくないということがわかります。

更なる糖の心理学的効果に視点を移してみると?

甘いものの大半には糖が使われており、糖を中心とした甘いものを食べると、心理学的に多幸感を感じることがわかっています。嫌なことがあっても甘いものを食べると気分が晴れることは、心理学的にも証明されているのです。有名な心理学的テクニック「ランチョンテクニック」では、美味しいものを食べると気分がポジティブになり、相手のお願い事も承諾しやすくなることがわかっていますが、甘いものの場合はさらに有効になると考えられます。

また、糖には性格を優しくするという効果も期待できます。ニューヨーク州立大学のチームが行った研究によると、被験者を苦いものを食べさせた人達のグループと、甘いものを食べさせた人達のグループに分け、各々の前で鉛筆を落とした時に拾ってくれる人の割合を調べる研究を行ったところ、甘いものを食べさせた人達のグループの方が鉛筆を拾ってくれる割合が高かったという結果が出ました。優しさが求められる環境で糖を上手に活用すれば、良い効果が期待できるかもしれないですね。

恋愛に甘いものが関係する?!

甘いものが多幸感や性格に影響するということは、恋愛にも関わっていると予想できるかもしれません。実際に甘いものと恋愛に関して調べた研究があります。2015年にパデュー大学が、食事を共にする際に何を食べたかで相手への好感度がどう影響されるのかを調べたところ、甘いものを食べたグループほど相手への好感度が高くなることが示されました。理由としては、甘いものを食べると快楽ホルモンとも呼ばれるドーパミンが分泌され、その時に一緒にいた相手の印象が良くなるからではないかと考察されます。

また少し話が逸れますが、恋人同士が愛をささやくときに、甘い言葉を使ったり、恋人のことを「スイートハニー」などと呼んだりしますよね。もしかしたら人間は本能的に、大好きな人と一緒にいる時の幸福感と、甘いものを食べた時の幸福感は似ていることを知っているのかもしれません。さらにイケメンのクール系の俳優さんが、実は無類のスイーツ好きだと判明した瞬間に好感度が上がる現象も、もしかしたらこの幸福感と関係しているかもしれませんね。

いずれにしろ、初デートは甘いものを食べられるカフェなどがおすすめですし、恋人と喧嘩してしまった後は一緒に甘いものを食べると、仲直りが円滑に進むことが期待できます。

甘いもの好きの性格って?!

味の好みは、実は性格とも関係していることがわかってきています。ゲティスバーグ大学のチームの研究報告によると、スパイスが効いた食べ物など辛いものが好きな人には社交的な人が多いことが、甘いものが好きな人には人当たりの良い人が多いことがわかったそうです。つまり、統計学的に甘いもの好きは良い人が多いことが示されているのです。

また別の話にはなりますが、飴を舐めている際に途中で噛む人は、「不満や怒りを感じている、または攻撃的になっている状態」ということも心理学的にわかっています。

ぜひ、糖と心理学との関係を正しく理解して、日頃の生活に活かしてみてください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれており、近年は全日本情報学習振興協会にて講師としてYouTube動画の配信も行っている。
【全日本情報学習振興協会YouTube】
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