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ケトジェニックダイエットのリスク? 朝食にパンやフルーツが必要なワケ


通常はエネルギー源として使われるブドウ糖をあえて食事から摂取せずに、代わりのエネルギー源としてケトン体を使用するダイエット方法が「ケトジェニックダイエット」です。一般的なダイエットと比較して減量ペースが早いといわれており、効率の良い方法として選ぶ人もいるようです。しかし、ケトジェニックダイエットは、間違った方法で行うと命に危険を及ぼす場合もあり、注意が必要です。この記事ではケトン食のリスクについて詳しく解説します。

低糖質ダイエットとケトジェニックダイエットの違い

近年は、糖質が太りやすい栄養素であると、解釈も極端になりがちになっていて、食事から摂取する糖質の量を制限する人も増えています。低糖質ダイエットとケトジェニックダイエットは、どちらもパンやご飯、麺類などの糖質源となる食品を控える方法です。しかし、栄養構成は糖質を抑えつつ、他にどのような栄養素を摂取すれば良いかというように異なります。

まず、低糖質ダイエットは、食事から摂取する糖質の量を抑え、たんぱく質を多めにとるダイエット法です。鶏肉や卵など、良質のたんぱく質とされる動物性の食品を積極的にとります。脂質は控えめの方が良いとされ、脂身の多い部位や皮などは除く工夫がされます。

一方、ケトジェニックダイエットは糖質の制限という点が同じでも、脂質を積極的にとるというダイエット法です。摂取カロリーとしては同一ですが、糖質と脂質の摂取バランスを変えることで、糖質から作られるぶどう糖が減り、脂肪が基になるケトン体をエネルギー源として利用される体質へと変化していきます。ケトジェニックダイエットはケトン体を産生し、糖質の代わりにエネルギー源として使います。そのケトン体は脂質から作られるため、1日に使う総エネルギーの大部分を脂質からとる必要があり、炭水化物は1日60g以下と極端に少なくなります。※1

どちらのダイエット法で実践する食事のとり方も、一般的に提唱されているような栄養構成とは異なりますので、長期にわたっての継続はリスクを伴います。デメリットや危険性を十分に理解し、その上で実践の可否を検討していきましょう。

ケトン体やケトジェニックについてはこちらでも紹介しています。
ケトン体っていったい何? 糖が不足すると増える危険物質の正体
最近よく聞くケトジェニックと糖質制限って何が違うの?

ケトジェニックダイエットの危険性を知ろう


通常、人の体内でケトン体が生成されるのは、非常事態といえるほど異常なことです。これをダイエットに利用しようとすれば、当然リスクや課題もあるということを理解しておかなければなりません。

まず、急性の副作用として無力感や胃のむかつき、吐き気などの症状が挙げられます。また、ケトン体が生成される際、体内の状態が酸性に傾くアシドーシスとなったり、呼吸機能や意識の低下、脱水症状となったりすることがあります。

また、長期的にケトジェニックダイエットを続けていくと、人体を構成するミネラルのうち、極めて少量であるものの、摂取が不十分だと色々な障害を引き起こす可能性がある微量ミネラルが不足して骨のミネラルが減り、血中のLDL(悪玉)コレステロールも増加すると考えられています。他にも脂肪肝や高尿酸血症、腎臓結石や尿結石など様々な障害が表れ、口臭や体臭がきつくなる(ケトン臭)ともいわれています。※2

短期間で効果が実感できるケトジェニックダイエットは、一見とても魅力的なものに見えるかもしれません。しかし、通常では考えられないような栄養構成の食事をとり、それを長期にわたって続けるということは、体にも多くの負担がかかるということを知っておく必要があります。

1日の始まりは糖質補給から


「朝の果物は金、昼は銀、夜は銅」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。この言葉は食物を摂取する時間帯の重要性を示したもので、とりわけ朝に糖質をとることが大切であるとしています。

朝食は1日の始まりを告げる合図となるもので、体のリズム形成やエネルギー補給としての重要な役割も担っています。しかし、朝はゆっくりする時間が確保できないことが多く、朝食の欠食が問題となることもあります。

また、欠食でなくてもコーヒーやヨーグルト、菓子パンのみなど、簡単なもので済ませてしまう人も少なくないでしょう。このような食事では炭水化物、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの重要な栄養素をバランス良く摂取することが難しくなってしまいます。

理想的な食事の基本は主食から糖質を、メインのおかずからたんぱく質をとり、野菜と果物が組み合わさった食事です。バランスの良い朝食をとることが、特に午前中の活動を気持ちの良いものにしてくれます。

糖質の摂取は特に大切です。糖質が不足するとイライラしたり、疲れや眠気などの症状が現れてきます。初めは軽い症状ですが、長期化してしまうと日常的に動悸や息切れなどが見られるようになり、漠然とした具合の悪い状態となってしまうことがあります。※3

朝に時間を確保することが難しいようであれば、果物やパンなど簡単に食べられるものを準備しておき、忙しい朝でも糖質を補給できるように習慣付けていくことが大切です。まずは夜更かしせずに早起きをして、規則正しい生活を送ることを心がけていきましょう。

「朝食」についてはこちらでも紹介しています。
適糖ライフのススメVol.16 朝ご飯はパンとごはんどちらが体に良いの?
朝の倦怠感を解消!自律神経を整える朝ごはんとは?

※1 秦幸吉,福島加菜美,藤田小矢香「ケトジェニックダイエットの紹介」島根医学,第40巻,第2号, pp18~23
※2 山本祐司,「ケトジェニックダイエットがヒトの健康に及ぼす影響について」
※3 独立行政法人 農畜産業振興機構 朝食と砂糖

 

【ライタープロフィール】

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。