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最近よく聞くケトジェニックと糖質制限って何が違うの?


ケトジェニックダイエットとは、平常時にエネルギー源として使われるブドウ糖を枯渇させ、ケトン体(体内の脂肪が燃焼した時の脂肪酸から生じるエネルギー源)を増加させたダイエットです。上手くやれば効率よく脂肪を燃やせる反面、体調には十分な注意が必要とされています。ケトジェニックダイエットの方法や、行う際のポイントについて解説していきます。

ケトジェニックダイエットとは?

平常時には脳で使われるエネルギーを生成するための燃料源としてブドウ糖が消費されています。しかし、ブドウ糖は老化の進行や特定の疾患、飢餓状態によって枯渇してしまうことがあり、エネルギー源として使えなくなる場合があります。

人類が歩んできたこれまでの歴史をひも解くと、今のようにいつでも食事を摂れたわけではなく、長期にわたって飢餓状態が続くこともありました。そのような時、身体には蓄えた脂肪から肝臓で「ケトン体」という物質を作り、各細胞でエネルギー源として使用する仕組みが備えられています。

ケトン体とは、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの総称であり、脳だけではなく筋肉や心臓など、肝臓以外の臓器でエネルギー源として使用されます。※1

ケトジェニックダイエットはこのような身体のメカニズムを利用したダイエット法です。糖質を極端に制限して脂肪からケトン体を作り出すことにより、効率よく体脂肪を減らすことができると考えられています。

ケトジェニックダイエットの具体的な方法は、1日あたりの炭水化物の摂取量を50g未満に減らすことが基本です。野菜はスープにする、焼く、炒める、冷菜の形で1日2回、2カップ摂取することが推奨されています。野菜を摂ることのメリットは、低エネルギーでありながら食物繊維によって満腹感が保たれること、インスリンの分泌を抑えることなどが挙げられます。

また、血中にケトン体が増加した状態のことを「ケトーシス」と呼びます。ケトーシスにはさまざまな健康上の利点があると考えられており、ダイエットのみならず持久力の向上、メンタル面の安定などに役立ちます。※2

ケトン体や糖質についてはこちらもご参照ください。
ケトン体っていったい何? 糖が不足すると増える危険物質の正体
正しく知りたい!!糖質と食物繊維の関係とは!?
ブドウ糖とは? 糖質とは? 脳とカラダが糖を欲する本当の理由


糖質制限とケトジェニックダイエットの違い


糖質制限とケトジェニックダイエットは主に糖質を制限するという点で共通しています。ただし、糖質制限は炭水化物の摂取を抑えることをメインにしていますが、ケトジェニックダイエットは低糖質かつ高脂質の食事を摂り、ケトン体をエネルギー源として利用するダイエット法であるという点では異なっています。ケトジェニックダイエットはバランスが脂質に偏った食事を組み合わせます。

一般的に栄養素のバランスは炭水化物が50~65%、たんぱく質が13~20%以下、残りを脂質で摂ることが勧められています。ケトジェニックダイエットは、炭水化物を50g以下や摂取エネルギー量の10%程度に収めることを目標とする厳しいものとなっています。

ケトン体をエネルギー源として使用するケトジェニックダイエットは、一見とても画期的なことのように感じるかもしれません。しかし、どんなダイエットも良い面ばかりではなく、注意しておきたい面も持ち合わせています。

<ケトジェニックダイエットの留意点>
・体臭がキツくなる
・食材の制限が強い
・健康に害を及ぼす可能性がある

ケトジェニックは糖質制限よりも厳しく糖質制限し、脂質に大きく偏った食事を摂るダイエット法です。体内でケトン体が生成されるということは身体が緊急事態に陥っているということ。体内で増えたケトン体によって血液が酸性に傾き、吐き気や倦怠感などの自家中毒という症状が現れることもあります。ケトジェニックダイエットは、特に注意して身体の様子を見ながら行うことが求められます。※3※4

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ケトジェニックダイエットのポイント


ケトジェニックダイエットは糖質を極端に制限して高脂質の食事を接種していくダイエット法です。十分な食糧が手に入らなかった昔は、これが飢餓状態の人々が生き残るために利用されてきた身体の緊急システムであるということを念頭において、注意しながらダイエットに取り組みましょう。

・十分なカロリーを摂取する
カロリーを控えすぎると空腹を感じてストレスが溜まったり、ダイエット後にリバウンドしたりする可能性があります。身体が飢餓状態になると頭痛や倦怠感、筋力の低下などを招くので、カロリーは制限せずにしっかりと確保しましょう。

・良質な脂質を選ぶ
肉の脂身やバターに含まれる飽和脂肪酸ではなく、オリーブオイルや魚の脂質に含まれる不飽和脂肪酸を積極的に摂りましょう。また、ココナッツやパームフルーツなどヤシ科植物の種子に含まれる植物成分の中鎖脂肪酸は消化吸収が早いうえに脂肪として蓄積されにくいため、ケトジェニックダイエットにはよく使用されています。

・ケトーシスに入るまで我慢が必要
ケトーシスとは、ケトジェニックを起こすまでの期間をいいます。通常は3日ほどでケトーシスに入り、1週間くらいで体重が減少してきますが、人によっては2~4週間ほどの期間が必要です。初期の段階で不快な症状に苦しむ人が多く、吐き気やイライラ、頭痛などが現れる状態のことをケトインフルエンザといいます。

ケトジェニックダイエットは制限が厳しいので我慢が必要となります。さらには偏った食生活によって栄養失調や便秘に繋がることも。体調不良を感じたら無理をせず中断し、医師に相談するなどの対応をしてください。※5※6

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<参考>
※1 日清オイリオ 脳の栄養不足を助ける「MCT」
https://www.nisshin-mct.com/contents/page198.html
※2 ケトーシスとケトジェニックダイエット
https://naturopathiccurrents.com/sites/default/files/Ketosis%20and%20the%20Keto%20Diet%E2%80%94Naturopathic%20Perspectives%20-%20JP.pdf
※3 ナースのヒント ケトン体とは?基準値や尿・においとケトーシスの看護のポイント
https://j-depo.com/news/ketone.html#d-9
※4 フラワー薬局 子どもが突然繰り返す嘔吐症状「自家中毒」ってどんな病気?
https://www.m-ikkou.co.jp/useful/flower/flower201804/
※5 グレースドクターズダイエット ケトジェニックダイエット
https://gmc.kumamoto.jp/diet/ketogenic_diet/
※6 ELLE ケトダイエットを始める前に要チェック! 起こりうる15の副作用
https://www.elle.com/jp/gourmet/gourmet-healthyfood/g35211683/keto-side-effects-21-0125/?slide=8


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。