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慢性的に体がだるいのは脳の疲れが原因? ミトコンドリアと自律神経の関係とは


忙しい現代社会において、体が疲れていてだるいという方は少なくないでしょう。体が疲れているからと、積極的に休息をとっても全然疲れが抜けないということも多いです。実は、疲れについて誤解している可能性があることをご存知ですか? 今回はこの慢性的な疲れの奥に隠れているメカニズムについて紹介していきます。

体のだるさがとれないのはどうして? 疲労のメカニズムとは

運動や仕事などで活動しすぎた結果、体が疲れているとよく思いがちですが、実際じっとしていても疲れてくるものです。要するに多くの場合、体が疲れているのではなく、脳が疲れているという状態が結果として体に表れてくるということがあります。疲れというのは、人間が本能的に持っている防衛反応の一種です。脳が、「これ以上活動をしたら有害だから休め」という信号を送っているのです。

脳が疲れるという現象がみられる前に、その下位の神経である自律神経が疲れていることが多いです。脳は体を支配する中枢神経で、下位にある自律神経を当然支配しています。自律神経は無意識的な活動(呼吸、血液循環、心臓の拍動など)を主に担当していますので、24時間365日まさに休みなく働き続けています。運動や仕事などの活動を行うことで、自律神経がさらにアクティブになることで負荷がかかり、疲れてきます。

この信号が脳に伝わって疲れていると感じます。これをもっと具体的にいうと、自律神経は日々活動しているので、酸素消費量が高い器官でもあり、酸素消費後に発生する大量の活性酸素に常に苛まれています。この活性酸素は非常に反応性が高いもので、周辺の組織を傷つけます。この活性酸素が神経細胞内のミトコンドリアを攻撃することが疲労へと結びつき、体のだるさの原因になっているのです。

ミトコンドリアとはどんなもの?


ミトコンドリアは細胞の中にある小器官です。元々ミトコンドリアは別の生命体(バクテリア)でしたが、共生の道を選んだ変わり種です。実際に、我々の細胞内にはDNA、その中には我々の体の設計図である遺伝情報が存在しますが、ミトコンドリアは独立したDNA(ミトコンドリアDNA; mtDNA)をもっており、この事により元々独立していた生命体だということが理解できます。

この共生に関しては、お互いwin-winの関係で、我々が日々栄養を取るのでミトコンドリアはエサには困らず、我々としては、ミトコンドリアが我々自身では作ることができないくらいのエネルギーを作ってくれるのです。ミトコンドリアは一つの細胞に100個以上いると考えられていて、たくさんのエネルギーを作ってくれています。

このミトコンドリアは、唯一脂質からエネルギーを作れる器官でもあります。つまり、ミトコンドリアが元気に働いてくれたら、代謝が上がりダイエットにもつながるのです。我々の体には我々本来が持っているエンジンと、ミトコンドリアのエンジンと二つの独立したエンジンが存在し、これらを巧みに利用して日々活動をしているということです。

ただし、体が老化してくるとともに、ミトコンドリアの数が減ってきてしまうという特徴があります。40代くらいから急激に減少してくることもわかっています。つまり、老化が進む→ミトコンドリアが減少する→エネルギーが減ってくる→疲れやすくなる→活動的でなくなり老化が進むという負のスパイラルが循環してしまうのです。ミトコンドリアを活性化できれば、疲労を解消することができます。

ミトコンドリアを活性化する方法とは?


前述したように、根本的な疲労を解決するためには、ミトコンドリアを活性化する必要があります。ミトコンドリアを活性化する方法はいくつか知られています。

①糖質過多を抑え、タンパク質・脂質中心の食生活をする
②適度な有酸素運動をする
③寒い環境で過ごす
④プチ断食をする
⑤適度な量の抗酸化物質を摂取するようにする

①は、糖質は我々が持つ本来のエンジンを活性化する一方、ミトコンドリアのエンジンはタンパク質や脂質によって動きやすいので、これらをきちんと摂取するようにすると良いです。和食の定食はどれもだいたいこのバランスを担保していて、世界中で健康食として認知されている根拠となっています。

ミトコンドリアを増やす食べ物はこちらでも紹介しています。
ザクロに注目! 話題のミトコンドリアを活性化させる成分とは?
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②は、適度な有酸素運動によってミトコンドリアのエンジンがよく動きます。ただし、過度になると活性酸素の方が優位になってしまい逆効果なので注意です。

③は、寒い環境にいると恒常性を維持すべく体温を上げようと熱を作り出そうとしてミトコンドリアが活性化してくれます。ただ、あまりにも長時間寒いところにいると、代謝自体が低下してしまうため避けましょう。

④は、エネルギーが不足したという環境になった直後でミトコンドリアが活性化しやすいということです。よく「適度な空腹は健康に良い」といわれていますが、その理由でもあります。ただし、これも栄養不足までいってしまうと逆効果なので、適度な断食が良いでしょう。目安としては、お腹が空いてなければ食べないようにして、お腹がぐーっとなってから食べるようにすると良いでしょう。

⑤は、余分な活性酸素を除去することで、ミトコンドリアが傷つくのを防ぐことができます。ただし、活性酸素自体は病原菌などを退治するなど重要な仕事も担っているので、あまり減らしすぎると逆効果です。

近年では、理化学研究所などの研究グループによって異常になったミトコンドリアの機能を回復させる物質を発見されるなど、ミトコンドリア活性化の研究が世界中で盛んに行われています。いずれ疲労に対してもっと強力に、かつ、より根本的にアプローチできるようになるかもしれません。ぜひミトコンドリアと親友のような関係になってください。

ミトコンドリアについてはこちらもご覧ください。
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ミトコンドリアとは? 食事で延ばす健康寿命!

 

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師ほか第一種放射線取扱主任者、甲種危険物取扱者、調理師など30以上の資格を保有。
現在は、国立大学法人東京工業大学キャンパスマネジメント本部
放射線安全部門 特任准教授
(国立大学法人東京大学医学部附属病院 届出研究員)
(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 客員研究員)
(公益社団法人日本アイソトープ協会 講師)