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映画のシーンを魅力的に彩る飴というアイテム

人の日常生活に自然に溶けこんでいる飴。幼い頃から身の回りに存在するのが当たり前で、誰しもが飴に関するエピソードのひとつふたつは持っていると思います。そこに注目した多くの映画クリエイターたちは、映画の中で、飴を様々な表現の小道具として使ってきました。
その多くは、登場人物のキャラクター作りのために使われています。作品によっては、飴がストーリーの鍵を握る重要なアイテムとして使われることもあるほどです。今回は、そのような映画と飴の世界をのぞいてみましょう。
 

ハリウッド映画で描かれる、ユニークな魅力を持つ飴

1985年に公開されたアメリカ映画『サンタクロース』には、「パープル・キャンディー」という紫色に光るキャンディが登場します。
この飴、クリスマスにサンタクロースのためにソリをひくトナカイの餌の一部が原料になっているのですが、食べると体が軽くなって空を飛べるという、とても不思議で素敵なパワーを秘めている設定です。飴が物語の重要なアイテムになっていることがよくわかります。※1

 

また、2011年にCGアニメと実写を用いて製作された映画『イースターラビットのキャンディ工場』では、タイトルからもわかる通り、キャンディが作品のモチーフとなっています。
キャンディの国を中心に繰り広げられる動物たちの物語は、大人でも夢中になってしまうほどポップでキュートなのですが、そのような作品をカラフルに彩り続けているのが、かわいらしいキャンディなのです。こちらの作品では、飴が物語上でのキーアイテムの域を超えて、主役に躍り出ていると言っても過言ではありません。※2

 

あの有名なフランス映画にも、飴が登場

現代フランス映画を代表する作品のひとつとも言える、2001年製作の『アメリ』。この作品にも飴が幾度となく登場します。まず作品の序章の重要アイテムとして、主人公のアメリが壁の中からベルガモットキャンディの缶を見つけ出します。この宝箱のキャンディ缶がもたらす運命に、アメリはある願掛けをするのですが、このアメリの想いこそが中盤以降に繰り広げられるストーリーの要となっているのです。※3

アメリファンの中には、このキャンディとかわいい缶を探して楽しむ人もいるのだとか。キャンディ缶の存在がどれだけ印象的なものであったのか伝わってきますね。
ほかにも、おしゃれな本作品の世界観を作る上で、フランスの街並みが欠かせませんが、そのような街の中にもかわいらしい飴屋さんが登場します。飴というアイテムが、アメリを中心として繰り広げられるストーリーの背景をチャーミングに盛り上げます。

アメリが働くカフェに併設された売店にも、鮮やかなロリーポップキャンディのツリーがあります。また、アメリの想いが叶う重要なラストのシーンでは、レトロでフランスらしい練り飴の機械が登場し、くるくると回るユニークな描写で作品に彩りを与えていました。爆発的な人気を博したこのフランス映画の中で、かわいらしく、時にはユニークに、飴は大活躍しています。
 

日本映画と飴

また、時代劇や戦前を舞台とした日本映画には「飴売り」という物売りが、たびたび登場します。そのような人たちが本当にいたのか、作品を見ながら想いを馳せずにはいられない存在となっています。代表的な作品をご紹介すると、1968年に公開された大映作品『牡丹燈籠』で飴売りから飴を買うシーンが登場します。

戦後の東京下町を舞台にした1952年公開『おかあさん』では母である田中絹代が、クリーニング屋を立て直すために飴売りをしていました。
また、1957年公開の黒澤明監督の映画『どん底』では清川虹子扮する女性が飴売りを見事に演じていました。近年の映画では、黒澤明監督の遺稿を弟子の小泉堯史監督が2000年に映画化した、『雨あがる』の中で飴売りが登場しています。※4

それぞれの作品が作られた時代背景も含めて語ることで、「飴」がいかに叙情表現の小道具として役に立っていたのか。クリエイターたちは飴に、自身のどのような想いを込めて世に送り出したのか。時代とともに日本人に寄り添ってきた飴の存在を伝えています。
 

生活に根づく飴だからこそ、映画のアイテムに

飴が私たちになくてはならないアイテムであることは、映画に登場する頻度やその印象からもうかがい知ることができます。映画における飴は、作品に彩りを与える小道具として、時には登場人物の心情変化やストーリー展開を伝える重要なアイテムとして、クリエイターたちに選ばれてきました。そして、中には、ちょっとした飴の存在が観る人の想像力に働きかけてくれる作品も生まれています。

飴は、私たちの日常生活にそっと寄り添い、元気をくれたり、気分転換のために、食べたくなる時もあります。これからも飴が登場する映画作品は作られ続けていくことでしょう。そのような作品にまた出会ったら、いつもの生活の中にある飴について、改めて想いを巡らせてみてください。

参照元
※1 サンタクロース(1985年公開、監督ジャノー・シュワーク)
https://movie.walkerplus.com/mv3759/
※2 イースターラビットのキャンディ工場(2011年公開、監督ティム・ヒル)
https://movie.walkerplus.com/mv48033/
※3 アメリ(2001年公開、監督ジャン=ピエール・ジュネ)
https://scarecrow4.exblog.jp/12892756/
※4 どん底(1957年公開、監督黒澤明)
https://movie.walkerplus.com/mv25277/