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意外に多い?! 砂糖をたくさん使う郷土料理と食文化

日本各地でその土地ならではの郷土料理が親しまれ、地域によって好まれる味付けにも違いがあります。中には味付けのために砂糖をたくさん使った郷土料理が好まれている地域も見受けられます。そのような、砂糖を使った料理が好まれる地域や、その理由について簡単にまとめてみました。

納豆に砂糖?! 独特な食文化を見せる北海道・東北地方

冬の寒さを乗り切るため、食欲を増進させる濃い味付けの料理が豊富な北海道や東北地方では、味付けに砂糖を多く使った料理が多数あります。
一部には納豆や茶わん蒸しに砂糖を入れたり、トマトやアメリカンドッグに砂糖をつけて食べている地域もあり、別地域の人がその食文化を目にして驚かれることもしばしばあるようです。※1また、多くの地域では「赤飯」といえば小豆ですが、北海道や東北地方の一部地域では、食紅で色を付けて甘納豆を混ぜた甘い赤飯が作られていて、砂糖を加えているお宅もあるそうです。※2

郷土料理にも甘い味付けのものがいくつもあり、山形県の名物料理でもある「鯉の甘煮(うまに)」などは、砂糖をたっぷり使い鯉をじっくりと煮込んだ料理です。江戸時代の中期に、名君として知られている米沢藩藩主の上杉鷹山が、領民の栄養不足を補うために鯉の養殖をはじめたことから鯉料理が広まったという言い伝えがあり、鯉の甘煮も当時から受け継がれている歴史あるご馳走のようです。※3

ほかにも、もともとは漁師が大きな鉄板で鮭や野菜を焼いて味噌や砂糖を混ぜたタレをかけ蒸し焼きにした豪快な料理である、北海道の「鮭のチャンチャン焼」※4や、青森県十和田市民のソウルフードである「十和田バラ焼き」、宮城県登米市登米町の「油麩丼」など、北国には味付けに砂糖が使われている料理がたくさんあります。

味噌に小倉トースト! 独自の食文化が根付く名古屋も砂糖好き

「名古屋メシ」と呼ばれる名古屋の郷土料理は、「豆味噌」を使った甘辛い濃い目の味付け料理が中心です。一般的な味噌には大豆と米麹を使っているのに対して、東海地方の豆味噌は、主に大豆だけを主原料とした伝統的な工法で長期熟成して作られたものです。八丁味噌や赤味噌とも呼ばれ、うま味が濃いのが特徴であり、名古屋では濃い味噌の味が慣れ親しまれてきたことから、濃い目の味付けが好まれています。代表的な「味噌おでん」や「どて煮」、「味噌カツ」も、そのような豆味噌と砂糖をたくさん使った甘辛い料理です。※5

そして、喫茶店のモーニングなどで親しまれている「小倉トースト」も、もはや名古屋の郷土料理と言えるでしょう。バターを塗ったトーストに砂糖をたっぷりと使用した甘い小倉あんをのせるだけのお手軽メニュー※6ですが、これがまたおいしい! しかし、なぜ名古屋で小倉トーストが広まったのでしょうか。その発祥は意外に古く、名古屋の繁華街である栄にかつて存在した「満つ葉」というお店で大正時代に考案されたメニューだそうで、これが大ヒット。その後、愛知県の各地に広まっていったようです。※7

地域の特性から砂糖を使った甘い郷土料理が多い九州地方

長崎県の郷土料理である「皿うどん」。ほかの地域では甘い味付けは少ないですが、長崎県の「皿うどん」には砂糖が入っていて甘いので、本場で食べてみて「あれ? 甘い?!」と驚かれる人も少なくないようです。※8
九州地方も砂糖を多く使った、甘い郷土料理が親しまれている地域です。九州地方ではしょうゆも甘いのですが、しょうゆが甘かったり、甘い料理が広まっている理由にはいくつかの諸説があります。※9

理由の1つ目として挙げられるのは、砂糖が手に入りやすかったこと。江戸時代に鎖国政策が続いていた時にも、長崎県の出島ではオランダから砂糖が輸入されていました。そして砂糖を全国に運ぶために使用された、長崎県から小倉市まで続く長崎街道は、砂糖を運ぶ道“シュガーロード”と呼ばれ、街道の沿道にはさまざまな銘菓が生まれていったそうです。そのため、長崎県では砂糖が文化として根付き、砂糖を使った料理を出すことがおもてなしの基本とされるようになったと言われています。※10
また、理由の2つ目として、九州地方は全ての県が海に接しているため、新鮮な魚介類が手に入りやすく、甘みのあるしょうゆが魚の生臭さを消して、うま味を引き立てるとされていることです。※11
理由の3つ目は、九州地方は温暖な気候なため、甘い味付けを好む傾向にあると言われていることです。※9
さらに理由の4つ目として、甘い料理は焼酎に合うことが挙げられています。※9

そのほかにも、福岡県の「がめ煮」や、宮崎県の「チキン南蛮」、長崎県の「長崎天ぷら」など、九州地方には砂糖を使って甘く仕上げている料理が多く見られます。

郷土料理は地域の特産物や風土に根付いたもので、砂糖を使った郷土料理が多い地域にも、それぞれ理由があります。長崎県の「皿うどん」のように、本場の味は広く親しまれている味とは違うといった料理が、ほかにもあるかもしれません。旅行や仕事で各地を訪れた際などに、本場の郷土料理をぜひ味わってみましょう。

参照元
※1 砂糖は道民に欠かせない!?北海道流食べ方
https://pucchi.net/hokkaido/knowledge/sugar.php
※2 青森県の赤飯はなぜ甘いのか?そこには「働く母の子供たちへの愛」が
http://news.nicovideo.jp/watch/nw3111434
※3 現代の指針 上杉鷹山 4 仁政
http://okibun.jp/youzan/
※4 日本の郷土料理図鑑
http://local-specialties.com/gourmet/000026.html
※5 日本のみそ|東海豆味噌(愛知県) 煮込めば煮込むほどおいしくなる
https://biyori.shizensyokuhin.jp/articles/70
名古屋観光情報
https://www.nagoya-info.jp/shiru/miso.html
※6 名古屋観光情報
https://www.nagoya-info.jp/gourmet/ogura.html
※7 名古屋観光情報
https://www.nagoya-info.jp/shiru/ogura.html
※8 霧島酒造株式会社 長崎 皿うどん パリパリの細麺にかかる甘い五目あん
http://www.kirishima.co.jp/aji/2011/summer/01
※9 職人醤油 醤油知識 九州編
http://www.s-shoyu.com/know/kh/032.html
※10 長崎発!シュガーロード~全国に伝播した甘い衝撃~
http://www.city.nagasaki.lg.jp/nagazine/hakken/hakken1604/index.html
※11 世界でたった3人の醤油ソムリエから教わる、醤油の奥深~い世界【福岡・福萬醤油】 https://ent.smt.docomo.ne.jp/article/349742