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柿の栄養と糖分補給。干し柿に学ぶ昔の“糖”の知恵袋

さるかに合戦の童話にも登場するなど、日本人に昔からなじみのある柿。
柔らかくて甘い熟れた柿が好きだ! という人も多いかと思いますが、日本には昔からおばあちゃんの知恵袋ならぬ、柿をさらに甘くする方法が存在しているのです。
今回はそのような、柿にまつわる話などを紹介していきたいと思います。

柿に含まれるやっかいな成分

基本的には甘くて美味しいイメージの柿ですが、中にはやっかいな成分も含まれています。それは「タンニン」という、にがみや渋みの成分です。タンニン自体は二日酔いや高血圧に効果があると言われていますが、タンニンが口の中で溶けるかどうかによって柿の味が変わってしまうようです。※1

タンニンは通常可溶性で、口の中で溶けるようになっているのですが、柿が熟すにつれて不溶化し、口の中で溶けないようになっていきます。そのため熟した柿は甘くなるのです。

つまりタンニンが口の中で溶けてしまうと、渋みが口の中に広がってとても食べれない柿になってしまうということになります。人はそれを「渋柿」と呼んでいます。しかし、そのような渋柿ですが、甘くする方法もあるのです。

渋柿を甘くする方法

渋柿を甘くするにはタンニンを抜く、「渋抜き」という方法がありますが、実際どのようにするのでしょう?
タンニン対策として、昔の人たちは「柿の皮をむいて干す」という方法を発見しました。柿の皮をむくことによって呼吸できなくなった渋柿が、実の中でアセトアルデヒドという物質を大量発生させて、それにタンニンが結合するとあら不思議、タンニンが口の中で溶けなくなります。※2

干し柿にすると何が変わるの?

渋柿が干し柿になると甘くなるわけが分かりました。しかし中には、いちいち渋柿から干し柿にしないで、普通の甘い柿を食べれば良いのでは?と思う方も少なくないと思います。では実際、柿と干し柿の違いとはどのようなものなのでしょうか?
それは成分と甘さの違いです。

柿を干すことで水分が蒸発し、しわしわのヨボヨボになってしまった干し柿は、本来の柿の大きさの3分の1程度になってしまいます。※3
水分の蒸発とともに、柿にはたくさん含まれていたビタミンCは減ってしまいますが、その代わりにβカロテンとビタミンAが通常の柿より大幅に増えるため、食べると血行がよくなり、胃腸も丈夫にしてくれると言われています。※4

何よりも干し柿は甘さが凝縮され、その甘さは砂糖の1.5倍にもなるそうです。※5
いかに甘いかの想像がつくのではないかと思います。

おいしい干し柿の作り方

では実際干し柿とはどのようにして作られていたのでしょうか。

ざっと簡単に言いますと、まず渋柿の皮をむき、むいた柿同士をくっつかない程度に離してビニールひもで結び連結させます。
結んだ柿を熱湯に10秒ほど潜らせて殺菌したら、柿の水分をきれいに拭き取り風通しと日当たりの良いところで2週間ほど干せば完成です。
気温が高いとカビが発生しやすいので、気温が低くて空気も乾燥しやすい晩秋から初冬が干し柿作りには最適だそうです。※6

普通の柿で干し柿を作ったら?

干し柿が渋柿から作られているのなら、普通の柿で干し柿を作っても大丈夫なのではないでしょうか。

実は渋柿以外の柿は干し柿作りには向いていないと言われています。
理由は2つあります。ひとつは糖度の違いで、実は糖度自体は柿よりも渋柿の方が多く、渋柿をそのまま食べてもタンニンが邪魔をしてまったく甘さを感じられませんが、干すことで持ち前の糖度が活きるのです。
もうひとつは作りづらさの問題で、成熟しきった柿を干した場合、そのみずみずしさが災いしてカビやすく、干し柿になる前に傷んでしまうからです。昔の人の知恵は大したものですね。

干し柿の名産地は?

干し柿は日本全国で作られていますが、その中でもシェアが高いのが長野県と福島県です。
長野県では主に市田柿という品種が干し柿用として使われており、福島県では甲州百目と堂上蜂屋という品種が半々の割合です。もちろんこの二つの県以外にも日本全国に干し柿の産地が存在します。そしてその数だけ品種もたくさん存在するのです。※7

干し柿の人気品種は?

前述のとおり、干し柿には多くの品種がありますが、ここでは出荷量ベスト3を紹介します。まず第3位ですが、平核無(ひらたねなし)で和歌山県・山形県・新潟県・奈良県を中心に広く栽培されています。続いて第2位は甲州百目で、名産地でも紹介しました福島県・山梨県・富山県など、多くの地域で生産されています。そして、堂々の第1位は、長野県で栽培されている市田柿でした。小ぶりの渋柿で、水分含量が少ないため冷凍保存に適し、干し柿のほかに、熟したものはシャーベットにも加工されるそうです。名産地の柿は、出荷量も多く、人気となっています。※7

世界の柿事情

柿は日本のモノと思われている方も多いでしょうが、実は生産量世界1位は中国で、2位が韓国、3位にスペイン、意外にも日本は4位となっています。ついで5位にブラジル、6位にはアゼルバイジャンがランクインするなど、アジアだけでなく南米やヨーロッパまでに浸透した柿はグローバルな食べ物となっています。※8さらに中国や韓国では干し柿も作られており、中国の物は乾燥度が高く水に戻して料理に使ったり、韓国の物は日本で一般的に食べられているあんぽ柿のような物も多く生産されているようです。

干し柿はすごく考えられた先人たちの知恵の結晶

干し柿は日本だけでなく、中国や韓国などのアジア圏でも昔から作られてきました。
世界では、庭先に吊るしたり、カゴで干したりと様々な作り方がありましたが、砂糖などの甘味料がまだ貴重だった時代に渋柿を干すことによって、砂糖以上に甘い食べ物が作れることを発見した先人の知恵には素晴らしいものがあります。
 

参照元
※1 カキ【柿】~タンニンが二日酔いに効く。渋柿を干せば甘くなる~
http://shokuzaipedia.com/persimmon/
※2 生活の知恵をもとめて 干し柿とタンニン(宝泉坊コラム No.1084)
http://www.shirokawa.jp/column/kawatani_akiko/3103/
※3 読めばなるほど!【知れば得する豆知識】
柿と干し柿※栄養とカロリーの差:消化が良いのはどっち?
http://xn--p9jbr9b1a6d5316g.com/archives/3174.html
※4 干し柿の効能効果!すこぶる体にいい成分がいっぱい
https://sitteirutteiine.com/archives/2593.html
※5 日本の菓子 干し柿
https://japan-web-magazine.com/japanese/food/hoshigaki/index.html
※6 干し柿の作り方。おいしい柔らかい甘柿を簡単に!室内のコツと時期
https://yakudatta.com/archives/10911.html
※7 農林水産省  特産果樹生産動態等調査
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/tokusan_kazyu/
※8 グローバルノート 世界の柿生産量 国別ランキング・推移
https://www.globalnote.jp/post-5754.html