糖と健康

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スポーツの時の糖の正しい取り方とは?!


季節は夏真っ盛り! 部活動に励む学生さんはもちろん、大人の方々も外でスポーツをする機会が圧倒的に増える季節になりました。プロの選手並みにとは行かないまでも、体を何かしら動かすことが多い時期です。また夏に行うキャンプや海水浴などのアウトドア活動もスポーツの一種と言えると思います。

こういったスポーツをする際にはもちろん普段よりも多くのエネルギーを消費するので、効率の良いエネルギー補給が大事になってきます。今回はスポーツと糖についてまとめていきたいと思います。
 

そもそもスポーツに必要な栄養素とは??

スポーツ時には糖だけではなく、もちろん他の栄養素も必要になってきます。糖をきちんとエネルギーに変えるためにも他の栄養素は大事になってきます。糖については後述で詳しく説明するとして、まずは糖に関連した他の栄養素を簡単に見ていきましょう。

運動すると筋肉の破壊が起こることがあり、これを補うためにはタンパク質が重要になってきます。日ごろからタンパク質をきちんと摂取しましょう。タンパク質摂取の際には動物性食品のほうを優先させると良いです。何故なら、タンパク質が消化されてできるアミノ酸の中でも、特に必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)が筋肉タンパク質分解抑制、運動中疲労感の軽減などに特に効果的で、それが動物性タンパク質に多く含まれているからです。運動の後に、肉を特に欲するのはもしかしたらこういった理由が関係しているかもしれません。

脂質は糖質同様エネルギーに変換されますが、糖に比べて消化吸収に時間を要するので、なるべく早めに摂取するようにし、取り過ぎを避けることが大事になってきます。ビタミン類では、特にビタミンBとCを試合前の数時間前に取っておくことで代謝を調整し、スムーズな運動を促すことができます。かといってビタミンだけを摂取したのでは意味がありません。ビタミンはあくまで調整役に過ぎず、必ずタンパク質などと一緒に取る必要があります。

ミネラルに関しては、特にカルシウム、カリウム、亜鉛、鉄などの摂取が運動時には大切です。各々を摂取する際の注意点としては、カルシウムはマグネシウムと一緒に2:1の割合で摂取することを心がける、マグネシウムは吸収率があまり良くないですが、カルシウムの過剰摂取はマグネシウム吸収をさらに阻害するので注意、カリウムはナトリウムと一緒に水分バランスを調整しているので、汗を特にたくさんかいた時にはナトリウムも摂取することを忘れない、鉄は最も吸収率が低いので、鉄が含まれる食品を色々と組み合わせて取ることが必要などです。

また、水分に関しては、体重の2%分が減少しただけでも運動能力が低下し、さらに減少すると無意識に行われる反射的な運動の低下が進行してしまいます。運動しているうちに水分消失は気が付かないうちに進むので、のどが渇いたと思ってから取るのではなく、競技中に100mLくらいずつをこまめに摂取するようにしましょう。
 

糖の摂取についての注意点とは?!


比較的速やかにエネルギーに変換できる糖はスポーツ時には特に重要になってきます。運動が激しくなるほど、糖からのエネルギー補給への依存度が大きくなることもわかっていますので、瞬発系の運動などを行う前には糖を必ずきちんと取ることが必要です。筋肉中にはグリコーゲンの形で糖が蓄えられていますが、運動後にこれは枯渇してしまいます。

枯渇したまま運動を続けてしまうと、筋肉を構成するタンパク質の分解が進み、筋肉量自体が減ってしまいますので、できるだけ速やかに回復させることが大事です。通常この回復には時間がかかるのですが、運動後に糖を一緒にクエン酸を摂取することで回復を促進することが可能です。また、脂質からエネルギーを取り出す際にも糖が必要になってくることもわかっています。

さらに、運動後にタンパク質と一緒に糖を取ると、筋肉増強を促進することもわかっています。一方、水と一緒に糖を取る際には、高濃度にしてしまうと、水分吸収自体が阻害されてしまうので、水分中の糖濃度を数%くらいに調整したものを摂取するように注意しましょう。
 

運動時の糖摂取の際に誤解しがちな点とは


まれに空腹で運動したほうが体自体も軽くなって運動には良いと思う人もいますが、これは逆効果です。確かに、緊急用のエネルギー源としてグリコーゲンが貯蔵されているため、それらが使用できるうちはいいのですが、だんだんと体の動きが鈍くなってきます。運動する1時間くらい前に糖を取ることが良いです。もちろん、胃に入れすぎると運動に支障をきたすので、おにぎりやサンドイッチなどの軽食で摂取します。

また、運動直後の糖欠乏状態に糖を取ると太ってしまうのではないかと思っている人も意外と少なくないですが、これも誤解で、運動の後の糖補給は筋肉疲労を回復させるために必要で、ここでしっかりと糖を補給しておくと、筋肉の分解が抑制され、筋肉中のグリコーゲン貯蔵が促進されて適切な回復に有効です。

余談ですが、プロのアスリートの中には「グリコーゲンローディング」と呼ばれる食事方法を採用している人がいます。これは、試合の数日前から脂質を減らして、高糖質食に切り替えることでグリコーゲンを効率よく筋肉に蓄えることができて、特に持久系競技などの長い間を要するスポーツの際に有効です。

是非糖を上手に活用して、是非楽しい夏を過ごしてください。


【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)
名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれている。