糖と健康

Category

受験生にとって糖は親友?! 効率的に糖をエネルギーとして活かす方法とは?!


今年も日々寒さが増してくる中、間もなく受験シーズンへと突入しようとしています。大学受験はもちろん、高校受験や中学受験など相当な方々が人生を左右するような受験戦争に突入するものと思います。また、受験だけでなく、資格試験や昇進試験などが控えているといった方もいらっしゃるでしょう。勉強する際には脳がかなりのエネルギーを消費します。その際には糖が重要なエネルギー源となりますが、正しく摂取し、正しくエネルギーに変えることができないと無駄になるどころか、時には弊害が起こることもあります。今回は受験生と糖の切り口で考えていきたいと思います。
 

そもそも脳内では糖は何をしているのか??


脳の重さは体重の2%ほどを占めますが、体全体のエネルギーのおよそ20~30%消費しています。これを見るとかなりの脳はかなりエネルギーを使っていることがわかります。人がエネルギーとして使える栄養素としては糖の他に、アミノ酸や脂肪酸などがありますが、脳は糖、しかも糖の最終分解産物であるブドウ糖から大部分のエネルギーを補給します。もし何らかの原因でブドウ糖が不足すると、脳は自分が使う分を確保すべく優先的にブドウ糖を脳へと移行するようにと働きかけることで、他の組織にブドウ糖が取り込めないようにしてしまいます。ブドウ糖が不足してもしばらくの期間は、肝臓や筋肉に貯蔵されているグリコーゲンや脂肪を分解することでエネルギーを取り出しますが、これも限度があり、定期的にブドウ糖を補給する必要があることは否めません。日常的な観点では、4~5時間毎に糖を摂取すると良いと考えられます。最近の研究では、血中にブドウ糖が豊富にあると記憶力が増すという報告もあるので、受験生の観点で見ると勉強で疲れてきたタイミングで糖を摂取し、また勉強を開始すると良いということになります。


急激な血糖値上昇を避けるように糖を取ることで、糖の利点を存分に活かすことができます。要するに、「スローな糖吸収」を心がけるようにするのです。普段の食事の際には、野菜や海草などの食物繊維が豊富なものを先に食べるようにする(食物繊維が糖の吸収を遅らせる)、酢のものを取り入れる(酢は糖の吸収を穏やかにする)、よく噛んで食べる(満腹中枢が刺激され食べ過ぎを防ぐ、かつ高血糖改善効果のあるインクレチン分泌増進)、そばやバナナなどの低GI値食品※1を意識して取るようにするなどです。試験の合間のランチの時にもこういったことを意識すると良いです。お弁当を作ってあげる保護者の方々もこれらを意識するような献立を弁当に取り入れると、脳が喜ぶ「真の受験の応援」になると思います。また、受験期は勉強の合間についつい間食をしがちですが、噛むことで脳血流改善が期待できるグミも良いです。チョコレートは糖分だけでなく集中力を上げることができるポリフェノールやカフェインも含まれているのでこれもまた良いです。フルーツならバナナが良いです。バナナは即効性のあるブドウ糖や果糖、ショ糖、オリゴ糖などに加えて、食物繊維や難消化性でんぷんなどの難消化性の糖分が含まれていることから、順番に糖分が消化されていき、エネルギーが長時間持続するので長時間勉強したい時などには最適と言えます。


今から思うと、筆者が受験生だった時にも母親が作ってくれた弁当には野菜や噛むことが必要になる固いもの、そして酢のものが毎回必ず入っていました。無知だったその頃の自分では気が付かなかったですが、今から思うと大変すばらしい応援弁当だったと感じます。受験は人生を決める一大イベントという側面から、親子を巻き込んだまさに闘いといっても過言ではありません。保護者の皆さんは糖を上手に活用した献立を用意し、また受験生の皆さんは保護者の愛情が加わった最強糖献立による栄養を武器として、是非厳しい受験期を乗り切ってください

※1 GIとは…一般に「血糖値上昇指数」と訳される。食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったもの。グルコースを100としたときのGI値55以下のものが低GI食品と呼ばれる。低GI食品には、そばやバナナ、玄米などがある。

【ライター紹介】


宮川 隆 (みやがわ りゅう)
名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれている。