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かわいくておいしいクッキーアート、アイシングクッキーの世界 ~アイシングクッキーを始めたきっかけとアイデア出しのコツ~(前編)


見てかわいい、食べておいしい。そのようなアイシングクッキーで注目を集めているのが、高橋洋子さんです。クッキーとキャンディを組み合わせたシャカシャカクッキー生みの親でもあります。今回は高橋さんに、アイシングクッキーの魅力やシャカシャカクッキー誕生のきっかけなどを伺いました。

 

アイシング(粉糖と卵白を混ぜて作ったクリーム)を使ってクッキーの上をデコレーションしたクッキー

2年ほど練習や研究を重ねて腕を磨く

Q:アイシングクッキーを作り始めたきっかけを教えていただけますか。
高橋さん:8年くらい前のことですが、家で子どものためにご飯を作るようになって、「じゃあ、お菓子にも挑戦してみよう」と思ったのが、お菓子作りのきっかけです。
アイシングクッキーに関しては2年ほど練習や研究を重ね、腕を磨きました。最初はお菓子の修業をイギリスでされていた方に作り方を習ったのですが、全然うまくできなくて。「こんなはずじゃなかった……」と、しゅんとなって帰ったことを今でも覚えています。それでも、クッキーの味はすごくおいしかったんです。一つひとつ大事に食べましたね。

Q:作り始めた頃はどの工程に苦戦しましたか。
高橋さん:アイシングで線を引く工程です。ただ、できなかったからこそ悔しくて練習しました。
昔からもの作りや絵を描くことが得意だったのに、アイシングは最初思うようにできなくて。「あの人はできているのにどうして自分はできないんだろう」という悔しさが原動力になりました。
今でも新しい作品を試作していて、うまくできなくて悔しさを抱くこともあります。完成品の写真や動画の裏には、失敗もたくさんあるのです。

シャカシャカクッキー誕生秘話


Q:新作を作るときにも、何度も改良を重ねているのですね。シャカシャカクッキーも高橋さんが考案されたとのことで、これまでになかったクッキーとして話題になりました。アイデアはどこから生まれたのでしょうか。

高橋さん:シャカシャカクッキーを作ったきっかけは、「ステンドグラスクッキーを2枚重ねて、間に何かを入れたらどうなるかな」という発想でした。これを思いついたときには、我ながらハッとしましたね。中が透けるように作ったらきれいなのでは、などと考えながら作っていきました。

シャカシャカクッキーに限らず作品のアイデアは、本を読む、景色を見る、写真を撮るといった、さまざまな体験から生まれます。これまで見てきたものが頭の中に蓄積されていて、「さあ、作ろう」と思ったときに形となって出てくる感覚です。

とくに写真撮影は大好きで、いい作品ができたときよりもその写真を撮っているときのほうが楽しいくらいです。撮影用のお皿や小物をそろえることも好きで。どこに行っても「これは使えそう」といったように、つい考えてしまいます。職業病のようなものです。

クリームの線で何でも表現できるアイシングクッキーの魅力 


Q:高橋さんの作品の中には、ガチャガチャのように中からお菓子を取り出すことのできるシャカシャカクッキーもありますね。
高橋さん:ガチャガチャも含め、シャカシャカクッキーは食べる工程よりも作る工程を楽しんでしまいますけどね。
装飾が全部お砂糖でできている、というのがアイシングクッキーの大事なポイント。粘土などのクラフト用品ではなく、全部食べられるもので作ることに意味があります。せっかくなら、食べておいしいほうがいいじゃないですか。

Q:アイシングクッキーだからこそ感じる魅力を教えていただけますか。
高橋さん:絵を描くこと、そしてお菓子作りという2つの要素が同時にできることです。クリームの線でなんでも表現できるなんて、自分でやっていても「すごいなあ」と感じますね。初めて作ったときに「私がやりたかったことはこれだ!」と思ったほどです。
アイシングのクリームは、着色料を調合していくと、たくさんの色彩を表現できます。

Q:そのあたりの工程は、和菓子作りにも似ていますね。
高橋さん:そうですね。和菓子のように季節に合わせたものを作ることもできます。だから何年作っていても飽きませんし、どんどん新しいものを作りたくなります。

始めた当初はアイシングクッキーがあまりメジャーではなかったものの、ここ3年ほどで知名度が上がってきました。最初はハート形のクッキーにただアイシングを塗るだけでも注目されましたが、今はInstagramなどが流行っていることもあり、シンプルなアイシングクッキーは代わりばえがしません。そこで立体的にしたり技術を進化させたりしているのですが、私としては今後も「クッキーである」という根底を忘れずに作りたいと思っています。

おもちゃのようにかわいい見た目でありながら、スイーツとしても楽しむことのできるアイシングクッキー。頭の中に描いたイメージをそのまま形にできるということも、高橋さんがアイシングクッキーに感じている魅力のひとつでした。しかし理想通りの線を引くのは難しいと感じる方もいるでしょう。後編では、アイシングクッキー作りのコツやSNSでの反響などに迫ります。


<プロフィール>
高橋洋子
Y&Csweets クッキーアーティスト

アイシングクッキーを通しておしゃれで色鮮やかな独自の世界観を発信。
デザイン、製作の他に撮影やフォトスタイリング、レシピ本の執筆、教室運営などもすべて自ら手がける。