糖と健康

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夏バテに効くような正しい糖の取り方とは?!

今年もまた本格的な暑い夏がやってくる時期になりました。真夏の炎天下の中、外で運動したり、遊んだりする機会も増えてくると思います。そういった中で夏バテになってしまう方も増えてくるものと考えられます。
夏バテで救急搬送される方やさらに深刻な状態になって死に至るケースも見受けられますので、たかが夏バテだと侮ってはいけません。今回は夏バテと糖との関係について紹介します。

 

夏バテの原因とは??


一口に夏バテと言っても原因はいくつかあります。最も多いのは、高温でじめじめした中に長時間いると発汗が過剰になり、結果として水分不足になることから来るものです。また、場合によっては汗腺が詰まることで発汗自体が困難になることに由来するパターンもあります。

いずれにしろ、高温多湿の環境には要注意です。ただ注意しなければいけない点としては、暑い中にずっと留まることを避けさえすれば夏バテにならないという訳ではないことです。高温の室外と冷房で冷えた室内を行き来する際に、急激な温度変化というストレスにより、自律神経が乱れ、結果として、胃腸の調子を崩したり、全身倦怠感に見舞われるなどの状態になり、これも立派な夏バテの一つです。

夏場でもエアコンの効いた室内で仕事をすることが多い現代人では、気が付かないうちにこの夏バテになっていることが少なくないので要注意です。さらに、現代の問題として、エアコンの室外機、道路のアスファルト化の増加、住宅密集化などによって夜も気温が下がりにくいという熱帯夜が生まれやすい傾向にあります。この熱帯夜によってなかなか寝付けないなどで睡眠不足が続くことで、疲労が日々蓄積していき、体調不良になることもありますが、これも夏バテとみなします。

 

変わった種類の夏バテとは??

夏には甘いジュースをがぶ飲みしたり、素麺などの麺類ばかり食べたりという偏った食生活になりがちです。
これらには糖質が含まれていますが、こういった偏った食生活を続けていると血糖値の乱高下を繰り返すことになり、それ自体が疲労感につながることがわかっています。夏バテだと思ったら、この「糖質バテ」になっていることがあります。

もちろん、夏では多くのエネルギーが必要になるので、糖質は取らなければいけませんが、取り方が特に大事になってきます。甘いジュースを飲みすぎないことはもちろんですが、麺類なども上手に取ることが大事です。
麺類を食べる際には、食後血糖値の急上昇を防ぐことができる大豆やきのこなどをトッピングすると良いでしょう。納豆うどんやきのこそばなどがあるように、これらの食材は麺類とも相性ばっちりなので美味しく食べられると思います。

 

バランスの良い食事が大事!!


これは夏バテ以外でも言える当たりまえのことですが、バランスの良い食事を心がけることが一番大事です。特に糖質を正しくエネルギーにするためには栄養摂取のコツをマスターする必要があります。
糖質、タンパク質、脂質は体の中で色々な酵素や補酵素の働きでエネルギーに変えられますが、糖質代謝だけに関与するピルビン酸脱水素酵素は補酵素であるビタミンB1によって制御されています。
つまり、糖質をエネルギーにきちんと変換するためにはビタミンB1が必須ということです。ビタミンB1が不足するといくら糖質をとってもエネルギーにならないだけでなく、余った糖質が脂肪として蓄積されてしまいます。
加えて、疲労物質である乳酸などの代謝が滞ることで疲れやすくなるといった状態につながることにもなりかねません。

夏に素麺ばかり食べているのに何故か太ってしまったという声をたまに聞きますが、これはいわゆる「夏太り」で、エネルギーに変換されずに余った糖質がそのまま脂肪に変わってしまったためと考えられます。ビタミンB1は豚肉、ウナギ、大豆、モロヘイヤ、玄米などに多く含まれています。
これらと一緒に糖質を接種すると良いです。日本では江戸時代より、「土用の丑の日」にウナギを食べる習慣があります。

ウナギを食べる時には大半の方がうな重やうな丼として食べると思いますが、これはまさに糖質である米とビタミンB1が豊富なウナギを同時に食べられるだけでなく、焼き立てのウナギを熱々の米の上にそのまま乗せて同時に美味しく食べられるので色々と理に適った食べ方と言えます。

また、ぬかにもビタミンB1が豊富に含まれているので、野菜をぬか漬けにすると手軽にとれます。うな重やうな丼にもぬか漬けがよく添えてありますが、口をさっぱりさせるためだけではなく、さらに多くのビタミンB1を取れるようにしてあるという考え方もできます。
ただし、ビタミンB1を摂取してすぐに効果が出る訳ではないので、日ごろから意識的に摂取しておくことが大事です。さらに、ビタミンB1はアリシンと一緒に取ることで吸収が良くなるので、ニンニク、ニラ、ネギなどと一緒に取るとより良いです。夏によく食べる冷奴にはネギを乗せますが、これもまた理に適った食べ方と言えます。
糖質、ビタミンB1、アリシンの3つを同時に摂取できるきのこ、ネギ、豚肉たっぷりのペペロンチーノスパゲッティは夏バテ予防にとっては最高の料理と考えられます。
是非正しい糖質摂取で暑い夏を乗り切りましょう!


【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)
名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれている。