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ドライフルーツはなぜ出来た? ドライ化することで保存食として貴重な存在に!


そのまま食べたり、お菓子やパンに混ぜ込んだりして使われているドライフルーツ。生の果物とは違う食感や、濃厚な風味を味わえる魅力的な食べ物です。

ドライフルーツの歴史は古く、紀元前から人々に利用されてきました。果物を乾燥させることで保存性が高まったためです。

冷蔵技術や輸送技術が発達していなかった時代は、食べ物の確保が難しく、保存性の高いドライフルーツは貴重な存在でした。今回は、いにしえの人々の知恵がつまったドライフルーツについて解説します。

 

ドライフルーツの保存性が高い理由

果物には、糖質や食物繊維のほかに、ビタミン、ミネラルなどが含まれています。※1
毎日食べたい食材ですが、生のままの果物は傷みやすく、美味しく食べられる時期は短いもの。果物を長期保存するには、ドライフルーツやジャムなどに加工する必要があります。

生の果物の水分量は80~90%程度が多く、種類によって異なります。※1
みずみずしい果汁がたっぷりのイチゴの水分量は約90%で、食べごろの時期が短い果物の一つ。イチゴを食べる前に、いつの間にかカビが生えてしまった経験もあるのではないでしょうか。

水分を多く含む果物はジューシーですが、カビや腐敗菌などの微生物が活動しやすい環境でもあります。そのため、数日放置しただけで、カビや腐敗菌によって食べられなくなってしまうことがあります。

ですが、ドライフルーツのように水分量を減らすと、カビや腐敗菌などの微生物が活動できなくなって保存性が高まります。
なおかつ、水分量が減ることで果物に含まれている糖の濃度が高くなり、甘くて濃厚な味わいに変化するのです。

近年では、加工技術が進み、さまざまな製法でドライフルーツが作られています。ドライフルーツの定番のレーズンやアンズのほかにも、果物の色合いを残したキウイフルーツや柔らかなマンゴーなど、彩り豊かなドライフルーツを楽しめるようになりました。

 

古くから人々の生活に入り込んでいたドライフルーツ


ドライフルーツの歴史は、果物栽培と深い関わりがあります。

果物の栽培は、紀元前から行われてきました。ブドウは新石器時代に、中東でよく食べられているナツメヤシの実であるデーツは古代エジプトですでに栽培されていたといわれています。※2

ドライフルーツのなりたちは、果物が自然に乾燥したものから発見されたといわれています。
果物の栽培が行われていた地中海や中東付近は乾燥した気候なので、果物の乾燥が簡単だったと推測できます。

昔の人々の知恵によって作られるようになったドライフルーツは、保存性が高く、食べ物が不足する時期の栄養源となりました。また、水分が抜けることで軽くなり、輸送や携帯性がアップしたことで遊牧民の間でも重宝されます。

このようにドライフルーツは、冷蔵技術や輸送技術が発達していなかった時代の貴重な栄養源だったのです。

 

進化するドライフルーツの製法


収穫した果物を天日干しさせることから始まったドライフルーツですが、製法は進化しており、熱風乾燥、減圧乾燥、フリーズドライ、減圧フライ製法、糖置換などが行われています。

フリーズドライのイチゴはサクッとした食感になったり、減圧フライ製法のバナナはチップのようにパリッとしたり、製法の違いでドライフルーツの質感や風味は変わるのです。

天日干しは、収穫した果物を敷物などの上に並べ、太陽の光と自然の風で乾燥させる方法です。乾燥スピードが気候に影響されるため、天日干しできる地域や環境が限られます。レーズンの産地であるアメリカなどでは、現在もレーズン用のブドウを収穫してから天日干ししています。※3

熱風乾燥は、送風機で熱い風を吹き付けて乾燥させる方法です。減圧乾燥は乾燥室を減圧することで、果物から水分が染み出てきて乾燥スピードを速くします。※4

果物だけでなく、野菜やスープなどに活用されているフリーズドライは、-30℃程度で急速冷凍した食材を、真空にした乾燥室で乾燥する方法です。色や成分の変化が少なく、長期保存できる特長があります。※5

減圧フライ製法は、減圧して水分の沸点を下げ、低温の油で食材を揚げる方法です。バナナチップやサツマイモチップなどがよく知られており、軽い食感に仕上がります。※4

マンゴーやキウイフルーツなど、輸入ドライフルーツでよく見掛ける製法は糖置換です。果物を糖液に漬け込んで、果物の糖濃度を高めてから乾燥させます。果物の水分の一部が糖に置き換わり、柔らかさが残ったドライフルーツになります。※6

このように、古くから人々に親しまれてきたドライフルーツは、進化する製法とともに食感や風味も幅広くなりました。冷蔵技術や輸送技術が進化した現在でも、ドライフルーツの保存性や美味しさが活用されて、多くの人々に食べられています。

 

参考
※1 日本食品標準成分表果実類
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/01/15/1365343_1-0207r2_1.pdf

※2 食品の乾燥 - J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/24/4/24_333/_pdf

※3 カリフォルニア・レーズン協会 カリフォルニア・レーズンができるまで
https://www.raisins-jp.org/process/production.html

※4 産学官連携ジャーナル 超簡単色鮮やかで軟らかいドライフルーツの作り方
https://sangakukan.jst.go.jp/journal/journal_contents/2018/11/articles/1811-02-4/1811-02-4_article.html

※5 J-Net21 第2回 乾燥することで保存性を高めるhttps://j-net21.smrj.go.jp/special/foods05/42.html

※6 ルレーヴ ドライフルーツとは
https://www.okasyo.co.jp/know/