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ひなあられの由来。関東と関西で味が違う! カラフルな色にも意味が?


ひな祭りには、ちらし寿司やはまぐりのお吸い物、ひし餅、ひなあられなどでお祝いをします。全国の女の子がいるご家庭で行なわれているひな祭りですが、お祝いの席に並ぶお菓子は地方によって特色があります。ひなあられもその中のひとつです。例えば、関東と関西ではどのようなひなあられが食べられているのでしょうか。
 

ひなあられはいつ頃から食べられている?

ひな祭りは、中国から伝わった厄払いの行事である五節供のひとつ「上巳の節供(じょうしのせっく)」と、平安時代に宮中や貴族の女性たちの間で行なわれていた人形遊びの「ひいな遊び(ひな遊び)」が何年もの時を経て融合したと考えられています。

ひな祭りが女の子のお祝いとして、盛んに行われるようになったのは江戸時代からです。この頃からおひな様とおだいり様の姿や衣装が立派になり、小道具が本物そっくりに作られるなどして、ひな飾りの華やかさが増していきました。

現在でも飾られている3段や5段のひな飾りが全国に広まるのは、明治以降のことです。また、ひなあられが食べ始められたのも明治以降といわれています。

ひな飾りについてはこちらで詳しく紹介しています。あわせてお読みください。
お内裏様とお雛様の関係は? 飾る位置は? 桃の節句とお供え物トリビア

ひな祭りにひなあられを食べ始めた由来は、はっきりとしていません。貴族が行っていた「ひいな遊び」で食べていたのがひし餅を砕いて煎ったおかきであり、このおかきがひなあられになった説。そのほかに、米を煎った縁起物や、お釈迦様の命日のお供え菓子がもとになった説もあります。
 

関東と関西で異なるイメージのひなあられ


ひなあられは、大きく2つに分けられます。米をはぜたポン菓子を砂糖でコーティングした甘い味付けのものと、小さなおかきを醤油などで塩気のある味付けにしたものです。

ポン菓子は、専用の機械に穀物を入れ、圧力をかけて膨張させたお菓子で、サクッとした軽い食感が特徴です。日本でポン菓子が作られるようになったのは、第一次世界大戦後のことです。その後、国産のポン菓子機が登場し、全国で親しまれるお菓子となりました。米から作られるポン菓子は、愛媛県ではお嫁入り菓子や出産祝いなどにも使われています。※1

全国で食べられているひなあられのうち、特に関東では甘いポン菓子が、関西では塩味のおかきが主流です。※2 なぜ、関東と関西で食べられているひなあられが異なるのでしょうか。

関東でポン菓子のひなあられが主流になったことについては、江戸時代に売られていた「はぜ」がもとになったという説があります。「はぜ」はもち米を煎って作られ、米がはぜると稲の花のようになることから、江戸では豊作を祈願して自宅にお供えしていました。元日に「はぜ売り」が現れるほど、江戸の町では煎ったお米がお正月の縁起物としてもてはやされていたのです。※2

また、関西でおかきが主流となった理由としては、「涅槃会(ねはんえ)」にお供えされるおかきがもとになっているという説があります。涅槃会は、お釈迦様が亡くなった日にお寺で行なわれる法要です。京都では、直径1cmほどのおかきに醤油や黒砂糖などで味付けしたお菓子の「花供僧(はなくそ)」をお供えします。このおかきが京都を中心にして関西に広がり、関西で食べられているひなあられにつながっていったと考えられています。※2

戦後直後までは、家庭でもひなあられが作られていました。材料となるのは、お正月に残ったお餅やお供えのお米。乾燥させて保存していた材料をひな祭りの時期に煎り、味付けをしてひなあられにしていたそうです。

これらのほかにも、鳥取県では「おいり」と呼ばれるポン菓子を水飴で固めたものをひな祭りにお供えするなど、全国ではお米やお餅から作られたお菓子がひなあられとして食べられています。※3
 

ひなあられの色にはどんな意味がある?


ポン菓子やおかきは日常のおやつとしても食べられています。一般的にポン菓子は白、おかきの色は醤油や黒砂糖など調味料の色をしていますね。しかし、ひなあられにはカラフルな色が付いています。

ひなあられの色には、「娘の健やかな成長を祈る」という意味が込められています。ひなあられの基本色は、ひし餅と同じ「桃、白、緑」の3種類です。

ひし餅の色は邪気を払うといわれる、クチナシとヨモギで付けられていました。クチナシを混ぜ込んだ桃色は「桃の花」、白は「雪」、ヨモギの緑は「新芽が広がる大地」を表し、ひし餅の3色は「雪から新芽が出て花が咲く景色」を象徴しているのです。※4 さらに、色には意味が込められ、桃色は「魔除け」、白色は「清浄」、緑色は「健康」を表します。※5

また、桃、白、緑に黄を加えた4色のひなあられもあり、これは四季を表しています。※4

3色と4色のひなあられは、どちらも1年を通じて娘の健康を祈るために、カラフルな色が付けられているのです。かわいらしい色合いのひなあられは、女の子のお祝いにぴったりのお菓子です。

ひな祭りは時代の移り変わりとともに変化してきました。ひなあられも、様々な風習の影響を受けてひな祭りに定着したと考えられています。また、関西ではチョコレートコーティングされたものが混ぜ込まれていたり、東海ではマヨネーズ味のひなあられが親しまれていたりなど、現在では嗜好に合わせて味付けされたひなあられも生まれています。


 

参考
※1 愛媛大学「愛媛のポン菓子についての研究と経営実践」
https://www.ehime-u.ac.jp/46835-2/
※2 亀井千歩子著「47都道府県・和菓子/郷土菓子百科」丸善出版
※3 鳥取県観光案内とっとり旅の生情報「おいり」
https://www.tottori-guide.jp/828/829/10260.html
※4 真多呂人形「ひなまつりにひなあられを食べるようになったのはなぜ?」
https://www.mataro.co.jp/column/%E3%81%B2%E3%81%AA%E3%81%BE%E3%81%A4%E3%82%8A%E3%81%AB%E3%81%B2%E3%81%AA%E3%81%82%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%92%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%AE
※5 京都調理師専門学校「ひなまつりとは?由来と定番料理をご紹介」
https://www.kyoto-chorishi.ac.jp/knowledge/c0021/