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フルーツ大福だけじゃない! 今、大福に革命が起きている!

薄いもち皮に、たっぷりほくほくのあんこ。お豆さんなんかが入っていて、おばあちゃんの大好物で…。ちょっと懐かしく、庶民的なイメージのお茶うけ菓子、大福。
ところがいま、そんな素朴な大福に、ビッグウェーブがきているのです。「大福」というワードでSNSをチェックすると、「映え」や「新食感」など、きらびやかなトレンドワードが添えられているではありませんか。
さらに驚くことに、なんと今は“第二次”大福ブーム。実は、江戸時代にも大福が一大ブームとなった事実があるのだとか!?

そんな大福の昔話をさかのぼり、それから、新時代の糖と現代のセンスがコラボレーションして実現した大福最先端まで、一気に総まくりしてみましょう。

 

江戸時代にきていた第一次大福ブームは、あつあつ&塩味!?

大福の歴史をさかのぼると、江戸時代の書物に行き当たります。大福の前身となったのは、室町時代からあった「鶉(うずら)餅」。大ぶりでたっぷりのあんこをつめこんだ鶉餅は、お腹いっぱいになることから、「腹太(はらぶと)餅」「大腹(だいふく)餅」とも呼ばれ、庶民に親しまれるようになりました。

気になるお味は、どんなものだったのでしょう。もち皮にはエンドウやヨモギなどを混ぜたものもあり、あんこは塩で味付けした「塩あん」だったのだそう。それもそのはず、当時、砂糖はとても高価な贅沢品で、ふんだんに使えるものではなかったのです。
江戸時代中期の明和年間に、江戸市中のある未亡人が、この「大腹餅」を、食べやすい小ぶりの平たい形にして売り出したといいます。さらに時代がくだって、20年ほど後の寛政年間になると、ついに砂糖で味付けをした甘いあんこが入ったものが見られるようになり、大ヒットしたのだとか。名前も、同じ読みのめでたい字をあて、「大福餅」と転じることになります。書物には、冬の夜に行商人が火鉢を提げて、温かく蒸し焼きにした大福を売り歩き、大好評を博した様子が記されています。※1※2

今でも埼玉地方では、「塩あんびん」という名前の甘くない大福が食べられています。200年前の食のトレンドを偲んで、ぜひ食べてみたいですね。

映える!フルーツ大福に隠された糖の秘密

さて、さらに時代がくだって、21世紀の現代に目を転じましょう。
定番の素朴な豆大福の人気はそのままに、今トレンドとして注目されているのは、色とりどりのフルーツを入れた「フルーツ大福」です。

そもそも、「フルーツ大福」の先陣をきったのは、おなじみの「いちご大福」。登場したのは昭和後期の1980年代です。和菓子界には珍しい、甘酸っぱさが際立った味わいが、またたく間に人々を魅了しました。最近では、メロンやマスカット、みかん、すいか、桃にいたるまで、ありとあらゆるフルーツが大福化。色鮮やかでカラフルな切り口は、SNSでの写真映え効果も抜群です。
しかし、以前は果汁の多いフルーツを和菓子に用いることはタブーとされていました。なぜなら、あんこに含まれる砂糖の糖分によってフルーツの果汁が徐々に抜けて移ってしまい、大福全体の味や食感を台無しにしてしまうからです。

そんな夢の「フルーツ大福」を可能にしたのは、現代の機能性の「糖」の力。あんこや生地に用いる砂糖の一部を、保水力が高く安定性の良い、でんぷん質の糖や水あめにおきかえるのです。すると、時間がたってもやわらかく、水分の移りにくい、ハリのある生地やあんこになり、果汁たっぷりのフルーツでも大福に包むことができるようになったのです。「ジューシーな和菓子」という夢の味わいを叶えたのは、現代の「糖」の力だったのですね。

さらなる進化 和菓子の垣根を超えて愛される大福

まあるく愛らしい伝統的大福スタイルはそのままに、もはやなんでも包めるようになった感のある現在の大福。全国で珍しい大福が続々登場しています。
宮崎で有名な大福は、その名も「なんじゃこら大福」。「なんじゃこら」と思わず声が出てしまう新しい美味しさ。そのタネ明かしはというと、つぶあんの中に栗と苺とクリームチーズを忍ばせた、宝石箱のような賑やかな中身です。※3

また、中身にあんこを用いない大福も登場しています。アイスクリームを、やわらかなもち皮で包み込んだお菓子は定番ですが、昨今では、生クリームやクリームチーズを詰め込んだ、洋菓子のような「生大福」も流行の兆しを見せています。薄いもち皮はまるでマシュマロのようで、さまざまなフレーバーのクリームをふっくら包み込んでいます。ベリーやチョコレートなど、洋菓子の素材とも相性抜群。あんこが入ったものとはまた違う、とろける口どけとフレッシュで軽い食べ心地が印象的です。

お腹にたまる「大腹(だいふく)餅」という当初の語源を思い返すと、正反対ともいえる進化がとっても興味深いもの。大福は、それぞれの時代を生きる人々のそばで、愛されながら変化してきたのです。

 

参考

※1 小学館Web日本語「大福と才蔵市」
https://www.web-nihongo.com/edo/ed_p055/

※2 コトバンク「大福餅」
https://kotobank.jp/word/%E5%A4%A7%E7%A6%8F%E9%A4%85-558251#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89

※3 なんじゃこら大福
http://hidaka.p1.bindsite.jp/daifuku.html