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スイカに塩をかけるとおいしくなるのはなぜ? 糖分を引き立てる塩の不思議

スーパーでは、スイカ売り場の横に食塩が並んでいることがありますよね。昔からスイカと食塩の相性は良く、おいしさを引き出してくれる調味料だと知られてきました。塩辛い味の食塩なのに、甘いスイカに合うのはなぜなのでしょうか? スイカに食塩をかけるとおいしくなる理由を探っていきましょう。

舌で感じる5つの味

料理に欠かせない調味料である食塩。食塩だけを口に含むと、ピリッと塩辛い味がします。これは、舌にある味覚センサーの「味蕾(みらい)」で塩味を感じとったからです。

味蕾で感じ取る味は塩味のほかに、甘味・酸味・苦味・うま味の5種類。この5つの味は「基本味」と呼ばれています。
味蕾は、花のつぼみのような形をしており、舌だけでなく、咽頭、軟口蓋などにも存在しています。

食べ物の味は、複数の基本味で構成されていて、味の組み合わせによって、味が強調されたり、味が弱くなったりすることがあります。

食塩がスイカの風味を引き立てる理由

スイカに食塩をかけると風味が引き立つのは、甘味を強く感じるからです。2種類の味を味蕾で感じると、どちらか一方の味が引き立ちます。これを「対比効果」といいます。どちらか一方の味が強く、それに対して他方の味が弱いときに起こりやすい現象です。

対比効果は、同時に味わうと感じる「同時対比」と、続けて食べることで感じる「経時対比」に分けられます。※1

スイカの場合は、甘味のあるスイカと食塩を同時に味わうことで「同時対比」が起こっています。そのため甘味が強調されて、スイカのおいしさが引き立つのです。ただし、食塩の量が多くなると塩味が強くなりすぎるため、かけすぎには注意しましょう。

対比効果は、さまざまなお菓子や料理で使われています。例えば、お汁粉はあんこを水で伸ばして作りますが、そこへ食塩を少量加えることで甘味が引き立ちます。また、トマトジュースには食塩不使用と有塩がありますが、飲み比べてみると有塩のトマトジュースのほうが甘味を強く感じるでしょう。

スイカは食べる場所によって甘味が違う

スイカは収穫されると追熟しないため、購入するときにしっかりと選びたいものですね。

丸のままのスイカは、昔から手でたたいて熟しているか確かめてきました。完熟の場合は「ボンボン」と澄んだ音が、未熟な場合は「ポンポン」と高い音がするので、音の違いで見極めます。また、ツルが付いているスイカの場合は、ツルの周囲を見て判断することもできます。スイカは完熟すると、ツルの付け根の周囲が盛り上がってくるからです。

とはいえ、丸のままのスイカを買うことはあまりないかもしれません。購入しやすいカットスイカは、糖度を測って表示していることがあります。甘味があるスイカを食べたいときには、糖度が12度以上あるものを選びしょう。

スイカは中心部の甘味が最も強く、皮に近くなるほど弱くなります。甘い部分を均等に切り分けるには、中心部から放射状に切るのがおすすめです。切り分けたスイカは、中心部はそのまま食べて、甘味が弱い部分には食塩を振りかけても良いでしょう。

そのほかに、スイカを3~4cm角に切る食べ方もあります。甘味の強い部分と弱い部分がランダムに口に入るため、皮つきのまま食べ進めるよりも平均的に味を楽しめますよ。

スイカの甘味を楽しむなら冷やしすぎに注意

ぬるくなったジュースを飲むと、冷やしたものよりも甘味を強く感じたことはありませんか? ヒトが甘味を強く感じる温度は15~35℃だと考えられています。そのため、果物を冷たくしすぎると、甘味を弱く感じてしまうのです。

その一方で、冷やすと甘味が強くなる果物があります。これは、果物によって含まれているショ糖、ブドウ糖、果糖などの割合が異なるためです。低温で甘味が強くなる果糖を多く含む果物は、冷やすと甘味が強くなります。しかし、舌で感じられる甘味は15℃が一番低いので、果物を冷やす場合は野菜室に入れ、冷やしすぎないほうが良いでしょう。

そのため、スイカも冷やしすぎないようにしたいもの。丸のままのスイカは、食べる1時間ほど前に冷やすと良いといわれています。カットスイカの場合は、暑い場所に置くと傷みやすいため、野菜室での保管がベストです。もしも、冷えすぎて甘味が弱いと感じたら、食塩を活用してみてください。

食塩には糖分を引き立てる役割があり、いつも食べているスイーツにも隠し味に使われているかもしれません。味蕾で感じる不思議な対比効果に注目して、料理やお菓子作りをしてみるのも面白そうですね。

 

参考

※1 甘味の基礎知識
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/106/12/106_818/_pdf/-char/ja