糖と健康

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ストレスと糖のツンデレな関係とは?!

ストレス社会と言われる現代の日本ですが、コロナ禍による自粛生活や仕事の激減、また最近頻発している比較的大きな地震の影響から、ストレスを感じる方がさらに増えています。ストレスは長期化するとうつなどの様々な疾患にもつながりかねないため、きちんと対処するべきものです。今回はストレスと糖を切り口にその関係性を見ていきたいと思います。

糖はストレス軽減につながる?!

昔から甘いものはストレス軽減につながると言われてきました。現にストレスを感じた時に甘いものを食べると、不思議と気持ちが収まってくるという経験がある方も少なくないかと思います。実際にこれを立証する研究がいくつか報告されています。

今回は山口県立大学看護栄養学部による研究成果を紹介します。研究方法は、健常成人に糖類を摂取してもらい、クレペリン検査で生じるストレス負荷前後での気分状態やストレス指標、正解率について検討したというものです。クレペリン検査とはよく就活試験で課されるもので、紙に並んだ数字を隣同士足し算し、その一桁目を数と数の間に書いていくという単純作業を制限時間内にひたすら行うというものです。考えただけでかなりのストレスを感じるものと予想できますね。この研究は健常学生を対象に、以下の4群に分けて行われました。

①何も投与していない群

②【ブドウ糖投与群】血糖値上昇作用のあるブドウ糖を与える群

③【エリスリトール投与群】血糖値上昇作用のない甘味料であるエリスリトールを与える群

④【デキストリン投与群】血糖値上昇作用はあるものの甘味がないクラスターデキストリンを与える群

結果、まずストレス負荷前後での気分状態に関しては、「落ち込み」「不安」「怒り」「疲労」「混乱」では変化がなかったのに対し、「活気」についてはブドウ糖投与群だけその低下が抑えられました。つまり、甘味を感じてかつ血糖値が上昇した場合にのみ、活気低下が抑制される可能性が示唆されています。作業で疲れた際にも、糖類でヤル気が回復するのは間違いないようです。

また、ストレス指標である唾液アミラーゼ活性に関しては、ブドウ糖投与群に加えて、エリスリトール投与群とデキストリン投与群で活性変化が乏しかった一方、何も投与していない群では活性増加が見られました。つまり、甘味を感じるか血糖値が上昇することで、精神的ストレスが緩和されることが見出されています。 そして、暗算作業の正確性維持に関しては、ブドウ糖投与群でのみ暗算作業を繰り返す中での不正解率が低かったという傾向が見られました。ブドウ糖のみが計算効率に関与している可能性が高いので、勉強している方はブドウ糖を絶やさずに摂取することが有用と言えますね。いずれにしろ、甘味はストレス軽減に関与すると考えて良さそうです。

逆に糖がストレス増加につながりかねない?!

糖は確かにストレス軽減につながるのですが、取り方によっては逆効果になる場合もあります。特に精製された砂糖を多く含むものを一気に食べ過ぎると、まず血糖値の急激な上昇が起こり、インスリンが大量に放出されることで、急激に血糖値が下がるという血糖値の乱高下が発生してしまいます。その際に糖分不足に陥ってしまうのです。これにより、脳のストレスに対応する能力が低下し、疲労やイライラなどを強く感じてしまいます。

この状態になると、脳は甘いものを欲してストレス軽減のためにさらに糖を過剰摂取するという負のスパイラルに陥ってしまい、さらにストレスを感じやすくなってしまいます。ですので、糖分を摂取する時は、血糖値の急激な上昇を抑える働きがある食物繊維と一緒に摂るのがおすすめです。具体的には糖分や食物繊維のほか、ストレス軽減に有効なビタミン類やミネラル類も含まれている果物が良いでしょう。もちろん、果物がいくら良いといっても食べ過ぎては逆効果なので注意してください。また、最近は長期保存可能で食べやすいドライフルーツが人気ですが、水分が少ないので糖分濃度が上がり、ビタミン類が失われていることが多くなっています。そして重量が軽い分、つい食べ過ぎて糖分過剰になりやすいので、やはり生の果物の方がおすすめです。

近年では、ダイエットのために過剰な糖質制限をしている方が甘いものを我慢しすぎて逆に強いストレスになってしまい、うつ状態になったり、その後一気に甘いものを摂取して肥満になったりするという本末転倒の事例もあります。ブドウ糖は脳の主要なのエネルギー源のひとつであり、脳が糖を欲したときにその命令に逆らうのは至難の技です。ですので、脳がストレスを感じるレベルにならないよう、日頃から上手に糖と付き合うのがストレス軽減という点でベストだと感じます。

まさに糖はストレスに関してはツンデレな関係です。これをしっかりと理解してストレス軽減に糖を上手に利用してみてください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれており、近年は全日本情報学習振興協会にて講師としてYouTube動画の配信も行っている。
【全日本情報学習振興協会YouTube】
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