糖と健康

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体内時計と糖との重要な関係とは??

2017年にノーベル生理学・医学賞の受賞テーマとなって以来、特に話題になっているテーマが「体内時計」です。実は、体内時計は糖と密接な関係があります。今回はこの関係性について見ていきましょう。

体内時計には複数の種類がある?

体内時計とは、体内の時間軸を調整するシステムのことを指します。体内にはこの時間のリズムを刻むメカニズムが存在し、生体内の様々な現象を巧みに制御しています。体内時計と一口に言ってもいくつか存在するのですが、それらが連携しあうことで厳密に調整をすることが可能となっています。

一番メインとなるのが1日単位のリズムを調整する日周リズムです。別名サーカディアンリズムとも呼ばれ、これが健康に対して最も影響すると考えられています。他には、1週間単位の週内リズム、1年単位の年周リズム、1ヶ月単位の月周リズムの他、90分を1単位とする90分リズムがあります。余談ですが、よく睡眠時間を確保する時に90分を1単位とすると朝の目覚めが良くなると言われるのは、この90分リズムを考慮してのことです。さらに、大学の1講義時間が90分なのも、この90分リズムを参考にしていると言われています(集中力を維持するには90分が限界と言われており、これには90分リズムが関与していると考えられています)。

このように、気がつかないうちに私たちは体内時計の存在を感じて、それを上手に利用しようと考えて行動しているのかもしれません。確かに、腹時計などと言うように、日々体内時計を意識する場面は以外と多いかもしれませんね。

体内時計の仕組みとは

次に体内時計の仕組みを見ていきましょう。腕時計や置き時計が部品からできているように、体内時計にも構成する材料が存在します。その材料のうち、時計の制御装置のように主要なものが「時計遺伝子」になります。体内時計の実態はこの時計遺伝子による制御であり、睡眠や体温やホルモン量など色々な生体内現象を上手に制御しています。

また、体内時計には主(親)時計とそれによりコントロールされている副(子)時計が存在しています。例えるなら、主時計を世界標準時間とすると、副時計は数あるローカル時間にあたります。世界標準時間が、数あるローカル時間を支配しているというイメージです。主時計は中枢神経組織である脳の「視交叉上核(しこうさじょうかく)」にあり、支配遺伝子としては「中枢時計遺伝子」となります。一方、副時計は内臓や血液などの末梢組織に存在し、そこではそれぞれ個別に動く「末梢時計遺伝子」が機能しています。

体内時計の特徴とは?

前述した通り、日常で一番大事になるのは日周リズムです。この日周リズムの周期は、25時間になるという特徴があります。しかし、通常の地球における1日は24時間になりますので、日々1時間のずれが生じてしまいます。

では、このずれはどのようにして解消しているのでしょう。それは、毎日朝の日光を浴びることと朝食を食べることで、リセットスイッチが働くためです。逆に言うと、こうした習慣をきちんと行わないままでいると体内時計のずれがどんどん蓄積していき、体の不具合につながっていきます。

体内時計には糖が大切になる!!

体内時計に大きな影響を与える朝食ですが、栄養バランス良く食べるだけでなく、糖質をしっかり摂取することが最も大事になります。朝食時にご飯やパンなどの糖質を摂ることで体内時計がリセットされ、速やかに脳の栄養となり、代謝を高めるように作用します。脳が速やかに栄養にできるものは糖だけですので、1日の始まりに脳のエネルギーをきちんと摂るように心掛けましょう。タンパク質と一緒に取ると、より1日の始まりとしては有効になります。

体内時計のメンテナンスには糖がとても重要になります。ぜひ糖をうまく活用して、体内時計を正確に保てるように意識してみてください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれており、近年は全日本情報学習振興協会にて講師としてYouTube動画の配信も行っている。
【全日本情報学習振興協会YouTube】
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