糖と健康

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糖と美容の密接な関係とは?!

コロナ禍で人と会う時間が大幅に減ったことにより、化粧品の売り上げが減るとともに、マスクや消毒薬による肌荒れに悩む方が増えています。その一方で、化粧をしなくなったことで普段は気にしていなかった肌のトラブルを気にする方が増え、美容製品や保湿製品の需要は高まっています。実はこうした美容にも糖は大きな役割を果たしているのです。今回は糖と美容との関係を見ていきましょう。

オリゴ糖による腸活が美容への第一歩??

お腹が痛くなったと思ったら便秘で、肌あれもひどくなっている―こういった経験がある方も多いのではないでしょうか。便秘はいわば「腸内にゴミがたまって腐敗している状態」と言えます。これは腸内にいる悪玉菌が起こすことが多く、その腐敗によって肌トラブルの原因物質が作り出されます。この原因物質が排出されないために肌あれが起こるのです。加えて溜まったゴミは血流も悪くするため、より一層肌トラブルが進行してしまうという悪循環にもなります。

対策としては腸活が必要になります。その腸活に大きく貢献するものが「オリゴ糖」です。オリゴ糖とはブドウ糖などの単糖が2~20個くらい結合したもので、いわば単糖と多糖の中間と言えます。多く含む食品としては、きな粉、ごぼう、玉ねぎ、納豆といったものが挙げられます。またオリゴ糖を取ることは「食べるスキンケア」とも呼ばれ、近年多くのメディア媒体でも特集されています。

ちなみに、1日の理想のオリゴ糖摂取量は2~10gと考えられています。他方、オリゴ糖が直接的に肌の健康維持にどうやって関与するかに関しては未だにわかっていません。しかしながら、人の体では消化・吸収されにくい性質を持つオリゴ糖は直接大腸まで到達し、そこで腸内細菌のうち善玉菌(ビフィズス菌など)のエサとなり、それによって善玉菌が増えるということがわかっています。善玉菌の増殖によって悪玉菌の増殖が抑えられ、結果として便秘解消へとつながることで肌へも間接的に寄与していると考えられるのです。また、便秘解消によって血流がスムーズになり、それによって全身の代謝も上がるので結果として肌の新陳代謝が良くなることも影響していると考えられます。加えて、むくみ解消につながることも一因でしょう。腸内細菌とオリゴ糖との関連については、以前このコラムで紹介したのでそちらも参考にしていただければと思います。いずれにしろ糖が美容に寄与することがわかりますね。

糖が持つ肌への直接的な効果

先ほどは糖の間接的な美容への寄与について紹介しましたが、今度は直接的な効果に関して考えてみたいと思います。

砂糖は、古代において万能薬として珍重される大変貴重なものでした。傷を治す薬として活用されてきた歴史があり、今でも医療現場では寝たきりの方などに起こりやすい床ずれの治療薬として使われています(約70%の砂糖とヨウ素を原料とした軟膏薬など)。

そして最近では、再び砂糖の持つ肌への効能が見直されてきています。それが保湿機能です。長時間のマスク着用や日常的に消毒液を使用する生活が続く中、気がつくと肌は乾燥してしまいがちです。肌の乾燥は炎症の原因となり、老化へとつながります。これを防ぐ保湿効果があるとされているのが糖であり、現に保湿液として糖を含んでいるものが販売されています。また保湿効果により肌本来に備わっているバリヤ機能が強化され、刺激や異物を寄せ付けず、にきび予防や、にきびの原因の1つである顔ダニの駆除にもつながります。

砂糖がスキンケアに使える理由は保湿だけにとどまらず?!

砂糖の持つ肌への効能は、保湿だけではありません。他の機能も持ち合わせているため、実は美容にはもってこいのものなのです。

そのひとつが、肌のたるみを防ぐ効果です。肌のはりや弾力の元となるのはコラーゲンやエラスチンなどですが、これらは皮膚にある繊維芽細胞が作り出します。この細胞が傷ついて死んでしまうと正常にコラーゲンなどが作られなくなり、結果として肌がたるむというトラブルにつながります。砂糖はこれを防いでくれるのです。

また砂糖で洗顔すると角質にすばやく水分が浸透し、不要な角質を剥がしてくれるので、結果として肌のターンオーバーサイクルを正常に整えてくれます。もしくは、いつも使っている化粧水やパックに砂糖を少し加えることも有効です。最近は色々な美容専門家の間でも砂糖水で洗顔することが推奨されています。一見怪しいですが、前述した砂糖の持つパワーを考えると理にかなった方法かもしれませんね。

なお、この洗顔を行う際にはいくつか注意点があります。まず、使う砂糖は白砂糖にするという点です。摂取という意味では白砂糖よりも黒糖やキビ砂糖の方が健康に良いですが、これらはミネラル分を含んでいるため肌荒れすることも考えられます。現に、厚生労働省が薬の原料として認めているのも白砂糖だけです。次に、砂糖を肌につけたときには絶対にこすらないようにしましょう。肌を物理的に傷つけてしまいます。化粧水などにしっかりと溶かしてから使えば防止できますよ。そして砂糖は3分ほどで角質に十分に浸透するため、それ以上放置しないことも重要です。肌の上で水分がとぶと砂糖が結晶化されて表面に出てきてしまい、しみの原因となることもあります。ですので、肌に塗って3分くらい経ったら、すぐに洗い流すことで砂糖のメリットを存分に活かすことができます。

先人達の知恵である「天然の美容剤」とも言える砂糖を是非上手に活用し、このコロナ禍の肌トラブルを乗り切ってみてください。

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれている。