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生姜と甘味のコンチェルト! 大英帝国の歴史に刻まれたベストハーモニー

ピリッとした辛味と強い香りを持つ生姜は、肉の臭み消しや風味を引き立てなど、いろいろな目的で使われています。生姜が使われ始めた歴史は古く、手に入りやすくなるまでは、貴重なものとして扱われていました。生姜の魅力は世界中に伝わり、現在ではいろいろな料理やお菓子に欠かせません。それはイギリスでも同様で、嗜好品として人々に親しまれています。イギリスの歴史の中で、生姜はどのように関わっているのでしょうか。

生姜の広まりと薬としての効能

生姜は、インドを中心とした熱帯アジアが原産だといわれています。しかし、原種が見つかっていないため、原産地ははっきりとしていません。栽培され始めたのは3000年前ともいわれ、紀元前の中国の噴墓からも生姜が出土されています。

生姜が広まっていった背景には、食材だけでなく、薬としても使われていたことが考えられます。1世紀ごろのヨーロッパで薬として伝わった生姜は、その後どんどん広がりを見せ、中世になると庶民には手が出ないような高値で取引されていたそうです。

現在でも生姜は、漢方薬のひとつとして使われています。漢方薬ではショウキョウ(生姜)やカンキョウ(乾姜)と呼ばれ、主に胃腸薬やかぜ薬として処方されます。

イギリスで親しまれる生姜スイーツ

日本で生姜は、薬味として使うほか、紅生姜や甘酢生姜など、生の生姜を活かした形で食べることが一般的です。しかし、イギリスではこのような料理はあまりありません。主にお菓子や甘い飲み物として親しまれています。例えば、ジンジャービール、ジンジャーブレッド、クリスマス・プディングなどです。

ジンジャービールは、1700年代半ばにイギリスで生まれた、生姜、砂糖、イースト菌、水を主な材料とし、発酵させて作られた飲み物です。イースト菌による発酵で微炭酸になります。ビールと名前が付いていますが、ほとんどアルコールを含みません。ジンジャーエールと比べると、生姜の風味が強いことが特徴で、イギリスでは古くから親しまれてきました。

欧米でよく食べられている生姜を使ったお菓子の代表格といえば、ジンジャーブレッドです。ジンジャーブレッドには、しっとりとしたパンやケーキ、クッキーやビスケットなど、いろいろなものがあります。イギリスでは、クリスマスにクッキーのようなジンジャーブレッドが欠かせません。

また、クリスマスに食べるイギリスの伝統的なデザートといえば、クリスマス・プディングが有名です。ドライフルーツとパン粉、生姜などの数種類のスパイスと混ぜ合わせたのち、型に入れ、蒸し焼きにして作られます。このように生姜は、イギリスのお菓子や甘い飲み物に多く使われているのです。

慣用句にもなったジンジャーブレッド

イギリスでは「Take the gilt off the gingerbread(ジンジャーブレッドの金箔をはがす)」という、言い回しをすることがあるそうです。これは、「幻滅させる」「台無しにする」という意味で使われます。どうしてこのような言い回しがされるようになったのでしょうか。

中世のイギリスでは、お祭りやイベントのときに、金箔でデコレーションされたケーキタイプのジンジャーブレッドが人気となっていました。しかし、金箔を剥がしてしまえば、装飾のないジンジャーブレッドと変わらないことから、いつからか幻滅したとの意味で使われるようになったそうです。

このように慣用句として使われるほど、ジンジャーブレッドがイギリスの生活に根付いていることがうかがえます。

イギリスのクリスマスとジンジャーブレッドマン

クリスマスの時期に、人の形をしたクッキーを見かけたことはありませんか? これは「ジンジャーブレッドマン」と呼ばれる、ジンジャーブレッドのひとつです。イギリスでは、クリスマスにジンジャーブレッドマンをお菓子として食べるほか、クリスマスツリーの飾りとしても使われています。

イギリスの歴史の中でも、ジンジャーブレッドマンは重要なものとして扱われてきました。16世紀ごろのイギリス王室に仕えた者の中には、ジンジャーブレッドを専門に作る職人がいたといわれるほどです。そのころ女王であったエリザベス1世が、イギリスに訪れた外国の高官にジンジャーブレッドをふるまったとの逸話も残っています。

また、ジンジャーブレッドマンが主役の物語も伝えられているんですよ。ここで物語のあらすじを簡単にご紹介しましょう。

“あるとき、おばあさんが焼いていたジンジャーブレッドマンがオーブンから飛び出し、「食べないで~!」と叫びながら窓から逃げ出してしまいます。おばあさんとおじいさんはジンジャーブレッドマンを追いかけますが、足が速くて追いつけません。逃げた先には川が流れており、ジンジャーブレッドマンは足止めをされてしまいます。どうしようかと悩んでいると、そこにキツネが現れ、川を渡る手伝いをしてくれます。しかし、川を渡り終わったあと、ジンジャーブレッドマンはキツネに食べられてしまいました。”というお話です。

こうした逸話や物語が残っているように、ジンジャーブレッドマンは古くからイギリスで親しまれてきました。また、生姜のような強い香りを持つ食材には魔除けの力があるとも考えられていたことから、いつしかクリスマスに欠かせないお菓子となっていったのです。

イギリスで生姜は、嗜好品として広まり、人々に愛されてきました。輸入食品のお店では、イギリスのお菓子を取り扱っている場合があるので、ぜひ手に取って、伝統のお菓子を楽しんでみてはいかがでしょうか。