カフェに行くと、よく見かけるのがコーヒーにのった“ふわふわミルク”。見た目がおしゃれになるだけでなく、口当たりも滑らかになり、コーヒーとミルクを混ぜたカフェオレとは異なる味わいが楽しめます。とはいえ、なぜすぐに泡が消えないのか不思議に思ったことがある方もいるのではないでしょうか。
今回はふわふわミルクがコーヒーにのせても消えない理由や、自宅でも楽しむ方法とそのコツについてご紹介します。
コーヒーにのせても消えない泡ができる理由
コーヒーにのったふわふわミルクは、生クリームを作るときのように牛乳をそのまま泡立てるだけでは再現できません。泡を作るには乳脂肪分の量が大きく影響しますが、牛乳と生クリームでは含まれている乳脂肪分の割合が異なります。生クリームの乳脂肪分は35~50%と牛乳の約10倍以上含まれていて、それを泡立てることで液体の中に分散していた脂肪球と呼ばれる小さな粒が空気を取り込みながらつながり、消えない泡となるのです。※1
では“ふわふわミルク”は、乳脂肪分が生クリームよりも少ない牛乳を使って、どのようにできるのでしょうか。ポイントは、牛乳を約60℃に温めることです。
牛乳を温めると脂肪球が集まって液面に浮上し、上層の脂肪分の濃度が高くなります。この状態で泡立てることで脂肪球のつながりが生まれ、上層に消えない泡ができるのです。なお下層は液体のまま残ります。また、温めることで牛乳に含まれているタンパク質に熱変性が起こり、ふわふわの泡が安定するともいわれています。この泡立てたミルクは、「フォームドミルク」と呼ばれます。※1
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カフェでは蒸気でふわふわの泡に
カフェでカフェラテやカプチーノなどを注文するとき、バリスタが牛乳を入れたピッチャーにノズルを入れ、「プシュー」と何かを噴射している場面を見たことはありませんか。これは、牛乳に水蒸気を噴射することでフォームドミルクを作っているのです。※2※3
お店で使用されている業務用エスプレッソマシンにはスチーマーが付属しています。このノズルから牛乳に水蒸気を噴射すると、空気を取り込みながら渦ができ、次第に温度も上がって、つやのあるフォームドミルクができます。このとき牛乳の温度は、高くなりすぎて甘味が失われてしまわないよう、60~65℃にするのが適温だといわれています。※2※3
またフォームドミルクを加えるコーヒーにはさまざまな種類があり、それぞれカップに注ぐミルクとコーヒーの比率や泡の厚さが異なります。※2※3
例えばカフェラテの場合、エスプレッソ1に対してフォームドミルクを9加え、泡は約5mm厚にするのが目安です。対してカプチーノは、エスプレッソ1に対してフォームドミルクを4~5加え、泡は約1cm厚を目安に注ぎます。カプチーノはカフェラテよりも泡の層が厚いのです。※2※3
ふわふわミルクを自宅で作るには
では、自宅でカフェのようなフォームドミルクを作るには、どうすればいいのでしょうか。
まずポイントとなるのが、使う牛乳の種類です。
一般的に「牛乳」と呼ばれる生乳のみを原材料にしたものは、「乳及び乳製品の成分規格に関する省令(乳等省令)」で牛乳・特別牛乳・成分調整牛乳・低脂肪牛乳・無脂肪牛乳などに分類されます。※4
牛乳で泡を作るには乳脂肪分が高いものほど脂肪球がつながり、泡ができやすいといわれています。そのため、乳脂肪分3.0%以上で比較的スーパーで手に入りやすい成分無調整牛乳を選ぶと、泡が作りやすくなるのでおすすめです。※1※5
次に道具ですが、これにはいくつか種類があるので好きなものを選びましょう。
その一つが、専用のミルクフォーマーを使うこと。ミルクフォーマーにはいくつか種類がありますが、リーズナブルな価格で手に入るのは、先端に円形のバネが付いた電動のスティック型です。温めた牛乳の中に先端を入れてスイッチを押すと、振動によって撹拌し、ふわふわの泡ができあがります。そのほかに、メッシュが付いたフタのレバーを上下させて泡を作る、メッシュタイプもあります。※6※7
ミルクフォーマーがあれば、話題のラテアートも自宅で楽しめます。
・ミルクフォーマーでラテアート! SNS映えラテアート
また専用のミルクフォーマーがない場合は、泡だて器や耐熱性の密閉容器で作ることも可能です。泡だて器で作る場合は、まず70~100mlの牛乳を小鍋に入れて中火に掛けます。鍋のふちに小さな泡が上がってきたら牛乳が温まってきた合図なので、弱火に変えましょう。泡だて器で牛乳に空気を含ませつつ約1~2分泡立てたらできあがりです。初めて作る場合は、牛乳の量を多くすると作りやすくなります。
フタの付いた耐熱性の密閉容器で作る場合は、50~70mlの牛乳を容器に入れ、600Wの電子レンジでフタを外した状態で約20秒加熱します。容器を取り出し、フタをして約1~2分上下に振ると完成です。
なお泡だて器で作る場合も耐熱性の密閉容器で作る場合も、火傷に注意しながら行いましょう。専用のミルクフォーマーを使うよりもできる泡の量は少なく、泡粒が大きくなりがちですが、しっかりとした泡が作れるので自宅でカフェ気分を味わえますよ。
肌寒い季節が近づくと飲みたくなる、温かいコーヒー。
今年の冬は、いつも飲むブラックコーヒーやカフェオレの上にお手製のふわふわミルクをのせて、カフェ気分を味わってみてはいかがでしょうか。
<参考>
※1 科学でわかるお菓子の「なぜ?」 辻製菓専門学校監修 中山弘典・木村万紀子共著
※2 極める愉しむ珈琲辞典 西東社編集部
※3 コーヒーの基礎知識・バリスタテクニック・100のレシピ COFFEE BOOK
※4 雪印メグミルク ミルクアカデミー 牛乳研究室
https://www.meg-snow.com/fun/academy/gyunyu/kind
※5 乳と乳製品のQ&A
https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_068_457/
https://nyukyou.jp/dairyqa/2107_015_399/
※6 電池式ミルクフローサー
https://www.bodum.com/jp/ja/3043-16-schiuma
※7 ミルクフローサー, 0.25 l
https://www.bodum.com/jp/ja/1446-01-latteo