もうすぐやって来るこどもの日。端午の節句とも呼ばれるこの日に食べるものといえば柏餅やちまきが定番ですが、日本全国には各地域でしか食べられない独自のお菓子も存在します。そこで今回は北海道に焦点を当て、こどもの日に食べられる郷土菓子をご紹介します。
北海道の家庭で親しまれる「べこ餅」
北海道には、こどもの日になると柏餅やちまきのほかに「べこ餅」という餅菓子を食べる風習があります。べこ餅は、米粉を主原料にして砂糖で甘味を付けた素朴な味わいのお菓子です。黒砂糖を加えて茶色に着色した生地と白い生地を合わせたものを、木の葉の形にしたものがよく知られています。
べこ餅はこどもの日だけではなく、お正月やお盆、冠婚葬祭などのほか、おやつとしても食べられています。そこで、家庭で作られることも多いべこ餅の作り方をご紹介しましょう。
【材料】(10個分)
白生地
・上新粉…100g
・砂糖…80g
・水…90ml
黒糖生地
・上新粉…100g
・黒糖…90g
・水…90ml
【作り方】
①鍋に白生地の砂糖と水を入れて中火で加熱し、砂糖が溶けたら火を止めます。ボウルに上新粉を入れ、砂糖を溶かした湯を加えて混ぜ合わせます。
②鍋に黒糖生地の黒糖と水を入れて中火で加熱し、黒糖が溶けたら火を止めます。ボウルに上新粉を入れ、黒糖を溶かした湯を混ぜ合わせます。
③蒸し器を準備し、ボウルのまま①と②を入れ、20分ほど蒸します。蒸し上がったらボウルごと取り出し、すりこぎなどでそれぞれ弾力が強くなるまでこねたあと、棒状に伸ばします。
④棒状に伸ばした白生地と黒生地を合わせて1本の棒状にし、10等分に分けます。木の葉の型に押し付けて成形するか、手で木の葉の形にして竹串などで葉脈の模様を付けます。
⑤成形した生地を再び蒸し器に入れ、5分ほど蒸し上げたら完成です。
成形するときは木の葉の形だけでなく、丸や花の形などにアレンジするのも楽しいですよ。お子様やお友達と一緒に形を考えながら作るのもおすすめです。食べきれない分は、冷凍保存することもできます。
「べこ餅」という名の由来は牛にあり?
ところで、べこ餅の「べこ」という言葉の意味を知っていますか。「べこ」は東北や北海道の方言で「牛」のことを指します。では、べこ餅も牛に関わりがあるのでしょうか。その名前の由来は諸説あり、有力な説は下記の4つと言われています。
一つ目は、べこ餅の白色と茶色の2色がホルスタインを連想させるため、牛を意味する「べこ」と呼ばれるようになった説。二つ目は、べこ餅を切り分ける前の形が牛の背中に似ていることから「べこ」と呼ばれるようになった説。三つ目は、黒糖の色合いがべっこうのようであることから「べっこう餅」と呼ばれており、ここから「べこ餅」に変化した説。四つ目は、米粉(べいこ)を使った餅のため「べいこ餅」から「べこ餅」に変化した説です。
このように、牛を由来にした説とともに、さまざまな説が伝わっています。
食べるだけでなく、見ても楽しいべこ餅
2色の生地を使い、木の葉の形に成形されたものをよく見かけるべこ餅ですが、同じ北海道でも地域によって形や色が異なります。
例えば、黒糖の生地のみを使った1色のものや、黒糖の代わりによもぎを混ぜた緑色と白色の色違いのものがあります。形が違うものでは2色の生地を真ん中で合わせたものや、マーブル模様といったもののほか、梅や桃などの花、鳥、ひょうたんなどの可愛らしい形のものも見つけることができるでしょう。近年では、色粉でキャラクターを描いたキャラべこ餅も販売されているため、お子様にプレゼントするのもいいかもしれません。
購入する場所によってさまざまな形のものが見られるべこ餅。なかには季節に合わせて形が変化するものもあるため、用途によって使い分けるのもいいかもしれません。
べこ餅と開拓民との関わり
米粉を使ったお菓子は全国にありますが、木の葉の形をした餅菓子は北海道以外にないと言われています。では、べこ餅は何をきっかけに北海道で作られるようになったのでしょうか。
北海道は本州各地からの移住者によって開拓されました。特に東北地方や北陸地方からの移住者が多かったと言われています。このときに北陸地方で使われていた木の葉の木型が北海道に伝わったようです。元々は東北地方の方言である「べこ」という言葉が北海道で使われていることからも、本州の文化が伝わっていることが窺えます。
また、青森県にもべこ餅と呼ばれる餅菓子があります。使われている材料は北海道のべこ餅とほぼ同じですが、形が異なります。青森県のべこ餅はかまぼこのような形が定番で、色粉で花などの模様が描かれていることが特徴です。色鮮やかな美しい模様のべこ餅は、また北海道のものとは違う魅力で多くの人を楽しませています。
土地の歴史や文化に深く関わり、食文化として受け継がれている郷土菓子。自分と縁ある地域に根付くお菓子を調べてみると、新たな発見があるかもしれません。