糖と健康

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還元糖や転化糖ってなに? 砂糖と健康に秘められたケミストリー

砂糖の分類は複雑で、糖が結合した数や原料などさまざまな違いによって分けられます。また、あまり知られていない部分では、化学的な性質によって分類されることもあります。そこで、この記事では還元糖や転化糖といった、普段聞き慣れない砂糖のケミストリーについて解説していきます。

還元糖とは?

“還元性”とは他の物質から酸素を奪うことによって相手の物質を還元する性質のことを言い、こうした性質を持つ糖を「還元糖」と呼びます。還元糖と呼ばれる糖の構造を見ると、酸化されやすい「アルデヒド基」という部分を持つことがわかります。※1アルデヒド基の一般式はR-CHOで表され、炭素原子に結合した酸素原子、水素原子と任意の基(R)で構成されています。※2

例えば、二糖類に分類されるショ糖に還元性はありません。しかし、ショ糖を構成しているブドウ糖と果糖は還元糖であり、それぞれのもつアルデヒド基が結合することによってショ糖となるのです。※1

還元性を持つ糖は、メイラード反応と呼ばれる加熱褐変反応を起こす原因物質となります。つまり、ブドウ糖や果糖のような還元糖を含む上白糖を使用すると、加熱調理によって料理に褐色を付けることが可能となるわけです。上白糖がパンやカステラ、クッキーなどに使われる理由は、甘みだけではなく着色にも役立っているからであることを知っておきましょう。

転化糖とは?

「転化糖」は、還元性とは別の物理的な性質に基づいた名前になります。

では、“転化”とはいったい何なのでしょうか。その由来となった現象を見てみましょう。透明の筒に糖液を入れて端から細い光を当てると、糖液を通過した光が回転する「旋光」という現象が現れます。この回転する角度は糖質の種類によって異なり、ショ糖やブドウ糖は弱く右に回転、果糖は強く左に回転する特徴があります。ショ糖が分解してブドウ糖と果糖になると、光の回転方向が右から左に変化します。この旋光が逆転する、すなわち“転化”する現象から、ショ糖の分解によってできたブドウ糖と果糖の混合物は転化糖と呼ばれています。※1

このことから、ショ糖も転化糖も成分は同じブドウ糖と果糖であるものの、ショ糖は双方が結合しているのに対し、転化糖はブドウ糖、果糖がそれぞれ独自で存在していることがわかります。つまり、「ショ糖=ブドウ糖+果糖」、「転化糖=ブドウ糖、果糖」ということです。構成されているものは同じですが、繋がっていると考えるか別々のものと考えるかの違いになります。

転化糖は果糖が強い甘みを持っており、転化糖を比較的多く含む上白糖はグラニュー糖に比べて甘みを感じやすくなっています。また上白糖がしっとりしているのも、吸湿性が強い果糖を含む転化糖の影響とされています。※3

転化糖を使う場面

転化糖はブドウ糖と果糖の混合物です。製菓材料店で購入することができます。

よく使われるのがお菓子作りの場面です。果糖の特徴であるすっきりとしたキレのよい甘みと、湿気を吸う吸湿性を活かして使われます。砂糖の一部を転化糖に置き換えることで、しっとりした仕上がりのお菓子を作ることが可能です。

また転化糖には次のような効果も見られます。例えばガナッシュやアイスクリームを作る際、砂糖の結晶化を防いでくれるため舌触りが良くなります。氷菓においても結晶化や粒状化を防ぐのに効果的です。ケーキやクッキーなどの焼き菓子の焼き色を濃くするので、見た目も美味しそうに仕上がります。焼き時間が短く温度が低くても、製品の見た目がよく仕上がるので効率よく生産できるのです。風味と香りが強まるという利点も挙げられます。

転化糖を使うメリットには、主にお菓子の生地の味や歯ざわりが良くなるといった嗜好性の面と、保存期間が長くなるという衛生管理面の2つがあります。また甘みがショ糖の1.3倍と強いので使用量も抑えられます。※3

ただし、転化糖は沸騰させると甘味が強いという性質が失われてしまうため、温めるときは90℃以上に加熱してはいけないという注意点もあります。温度管理をしながら使う必要があるでしょう。※4

化学的な特徴から糖を捉えるとたどりつく、還元糖や転化糖の話。普段の生活のなかではなかなか糖の分子構造まで意識することはできないかもしれませんが、こういった特徴があることを知っておけばいざというとき役に立つことでしょう。また、お菓子作りをする方は、砂糖の代わりに転化糖を使って仕上がりや扱いやすさの比較をしてみると楽しいかもしれません。糖の性質や効果を知って使い分けてみると、楽しみが広がりますね。


参考

※1大東製糖株式会社 砂糖を科学する
https://daitoseito.co.jp/topics/chemical

※2農林水産省 用語解説
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/acryl_amide/a_gl/pdf/131127_acrylamide_chapter3.pdf

※3デジタル岡山大百科 転化糖の効果
http://digioka.libnet.pref.okayama.jp/detail-jp/id/ref/M2019020217035404796

※4 フランス料理総合サイト 転化糖と水飴の使い方の違い
https://www.felicimme.net/lesson/advanced/vol_036.html


ライタープロフィール

片村優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。