年齢を重ねると身体に起こる現象として「酸化」という言葉は広く聞かれるようになりましたが、同じような言葉に「糖化」というものがあることをご存知でしょうか。糖化は酸化と同じように身体の老化を進めたり、生活習慣病のリスクを高めたりするとして注目を集めています。ここでは糖化とは何か、また糖の中でも特に糖化のリスクを高めると言われる異性化糖とは何かについて、詳しく解説していきたいと思います。
老化の原因は糖化? 「体のコゲ」と言われる理由とは
体の酸化の要因は活性酸素と言われています。体内に取り入れた酸素の一部が活性酸素へと変わり、増えすぎた活性酸素が正常な細胞も攻撃してしまうことで発生し、「体のサビ」とも呼ばれます。
一方の糖化は「体のコゲ」と呼ばれます。食事から摂取した余分な糖分が体内のたんぱく質や脂質と結びつき、細胞などを劣化させてしまう現象で、メイラード反応とも呼ばれます。この反応は食べ物においても発生し、ホットケーキやクッキーを作るとき砂糖が卵や牛乳のたんぱく質に反応して焼き色が付き、こんがり良い香りがする現象もメイラード反応の一例になります。※1
食べ物で起こるメイラード反応はメリットが多いですが、これが人間の身体で起こるとあまり良くありません。糖化によって作られる糖化最終生成物(AGEs)は、動脈硬化や白内障、アルツハイマーなどさまざまな疾患との関連が指摘されているほか、糖化が進むことで肌のシワやくすみ、シミの原因にもなるのです。※2※3
なかでも糖化のリスクを高めるとされており、注意しておきたいのが異性化糖です。それでは異性化糖とは何か、そして糖化とどのような関係があるのかを見ていきましょう。
異性化糖とは?
異性化糖とはブドウ糖と果糖を主成分とする液状糖のことです。異性化糖液はジャガイモやさつまいもなどのデンプンを原料に作られており、デンプンに3種類の酵素反応が加わることで異性化糖になります。
同じ甘味料の扱いをされる砂糖と異性化糖ですが、さまざまな点で特性に違いが見られます。例えば、砂糖はブドウ糖と果糖が一つずつ結合したものですが、異性化糖はこの2つを主成分としてはいるものの結合はしていません。また果糖は砂糖よりも甘みが強いため、果糖の分量が多い異性化糖ほど甘みは強くなります。なお異性化糖の甘みは温度にも左右され、温度が低くなるほど甘みが強くなる傾向があります。
異性化糖は固形化や粉末化が難しく砂糖のようにパッケージングしにくいため、一般消費者向けにはあまり販売されていません。主に食品メーカーなどに販売されているので、私たちが異性化糖を口にするのは清涼飲料水やパン、缶詰、乳製品などの加工品を摂取するときになります。さらに、異性化糖は低温で甘みが増す性質から、アイスクリームやゼリーなどの冷たいお菓子にも広く用いられています。※4
異性化糖は糖化を促進する?
異性化糖の主な原材料である果糖は、食事や飲み物で摂取すると消化酵素に分解されず、そのままの形で腸から吸収されます。血液に乗ると肝臓に運ばれてエネルギー源として利用され、一部は中性脂肪に変化して脂肪細胞へ送り込まれます。
果糖はブドウ糖と異なり血糖値を直接上昇させたり、インスリンの分泌を刺激したりする効果が弱いため、満腹感が得られにくく食べすぎてしまう可能性が指摘されており、摂りすぎにより肥満につながりやすいと言えるのです。※5
さらに果糖は、前述したように動脈硬化や白内障との関連が指摘されているAGEsをつくる反応速度が、ブドウ糖と比較して10倍速いとも報告されています。※6
果糖を多く含む異性化糖は、日常生活において清涼飲料水から摂取する機会が多いと言えるでしょう。普段から高濃度の果糖が含まれる清涼飲料水の摂取量に気をつけるだけでも糖化のリスクを低減させることができます。
また糖化の対策としては、玄米やそばといった低GI食品を選ぶ、野菜や海藻類を最初に食べるといったことを心掛け、血糖値の上昇が穏やかになるよう意識したいところです。そのほか時間をかけてゆっくり食べる、適正なカロリー摂取になるよう気を付けて食べることも大切になります。※3
こうした対策ポイントは、肥満や生活習慣病の予防とも通ずるものがあります。食事の際は、摂取の仕方やその食品がどのように加工されているかに注意して、自身の食習慣を見直していきましょう。
※1 オムロン 老化の原因「糖化」を防止しよう
https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/139.html
※2 大原薬品工業株式会社 けんこう名探偵 AGEが引き起こす体への影響って、なぁに?
https://www.ohara-ch.co.jp/meitantei/vol02_3.html
※3 ABCクッキング 肌のトラブルや老化の進行の原因は“糖化”にあった!
https://www.abc-cooking.co.jp/plus/feature/201811_labo/
※4 日本甜菜製糖株式会社 異性化糖って、何だろう?
https://www.nitten.co.jp/syrup.html
※5 JAMA Network “Effects of Fructose vs Glucose on Regional Cerebral Blood Flow in Brain Regions Involved With Appetite and Reward Pathways”
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/1555133
※6 モリタ デンタルプラザ 異性化糖(ブドウ糖・果糖液糖)【4】果糖の過剰摂取と生活習慣病
https://www3.dental-plaza.com/archives/6576
ライタープロフィール
佐々木優美(管理栄養士)
病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。