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塩キャラメルはブルターニュの名物。特産品から生まれる味わい


ほんのりと塩を効かせた塩スイーツには、さまざまな種類があります。塩を加えることで引き立つ甘味とコクに、驚いたことがある人もいるのではないでしょうか。
日本でもかつて塩スイーツブームが巻き起こりましたが、そのきっかけとなったのが塩バターキャラメルです。日本に塩バターキャラメルを広めたのは、自然豊かなフランス・ブルターニュ地方の菓子職人だと言われています。そこで今回は、ブルターニュ地方とその特産品から生まれる塩バターキャラメルに注目しました。

ブルターニュ地方の特色

ブルターニュ地方は、フランスの北西部にある大西洋に面した半島一帯を指します。面積は約27,000km²で、日本の東海地方の面積と近いと考えてよいでしょう。歴史ある都市や古城があり、温暖な気候によって豊かな自然も広がっている地域です。※1※2※3

ブルターニュ地方の沿岸部は潮の満ち引きが大きく、漁業が盛んなことで知られます。また内陸部には草原や森林が広がり、農業や酪農も盛んに行われています。ムール貝やカキ、ホタテ貝などの魚介加工品のほか、品質の良い乳製品で作られたバター、リンゴのお酒のシードル、塩田で作られた天然塩が特産品です。※4

古くからの製法で作られる“ゲランドの塩”


塩バターキャラメルをはじめ、ブルターニュ地方の料理やお菓子に欠かせないのが「ゲランドの塩」です。ゲランドの塩は、ブルターニュ地方南部の都市・ゲランドの沿岸部で作られている天然塩で、潮の満ち引き、太陽と風、水はけの良い土地を利用し、機械をほとんど使わない古くからの製法で作られています。※5

では、いったいどのような製法で作られているのでしょうか。まず、潮の満ち引きを利用して海水を陸地の貯水池に引き込み、貯水池から低い位置にある塩田の中心部に向かって海水を流していきます。中心部に向かうまでにいくつもの池を通過させることで、太陽の熱や風によって海水を濃縮していくのです。※6

塩田の中心部に海水が届くと、塩分濃度が高くなり結晶化が始まります。結晶化した塩を柄が付いた木板で集め、乾燥させるとゲランドの塩の完成です。採れたままの大粒の状態だけでなく、すり潰したり、ハーブを加えたりした加工品も多く販売されています。※5※6

また結晶化した塩は、通常は水中に沈みますが、気温と風の好条件が重なったときのみ水面で結晶化します。この水面の結晶のみをすくい上げたものが「フルール・ド・セル(塩の花)」です。僅かな量しか採れないフルール・ド・セルは、料理の素材を活かす希少な塩として世界中で使われています。※5

人々をとりこにする有塩バター入りのスイーツ

ブルターニュ地方ではスイーツを作る際、無塩バターだけでなく有塩バターも使うことがあります。例えば、ブルターニュ地方の伝統菓子の一つである「クイニーアマン」。生地に薄く伸ばした有塩バターをたっぷり折り込んで作られています。※4※7※8※9

ざくざくとした食感のクッキー「ガレット・ブルトンヌ」もブルターニュ地方のお菓子です。日本では1cmほどの厚みのあるガレット・ブルトンヌがよく知られており、有塩バターの塩気が風味を引き立てています。※4※8※9

そして、忘れてはいけないのが「塩バターキャラメル」。有塩バターをたっぷりと使った塩バターキャラメルは、ブルターニュ地方を訪れたときのお土産としても人気が高い一品です。※4※8※9

塩バターキャラメルの魅力を日本に広めた菓子職人


今では日本でも広く親しまれている塩バターキャラメル。日本にその魅力を広めたのは、ブルターニュ地方の菓子職人、アンリ・ルルー氏だと言われています。

アンリ・ルルー氏は、菓子職人であった父親の店で見習いをしたあと、当時チョコレート菓子の先進国であったスイスで製法を学びます。1977年にはブルターニュ地方南部の港町、キブロンにお店をオープン。チョコレート以外の看板商品を出すため、ブルターニュ地方の特産品である有塩バターを使ったお菓子ができないかと模索します。そして、口溶け滑らかなキャラメルに、砕いたナッツを加えたオリジナルの塩バターキャラメルを生み出したのです。※10

風味豊かなアンリ・ルルー氏の塩バターキャラメルは、1980年にパリで開催された国際製菓フェアで賞を受賞。その後、フランス全土から世界へと人気が広がっていきます。日本でも塩バターキャラメルが一時期ブームとなり、その影響から塩バターキャラメル味のアイスクリームやクッキーなども作られました。※10
 

特産品である塩や乳製品を活かしたお菓子が長年親しまれてきたブルターニュ地方。日本にもその魅力が伝わり、現在では塩バターキャラメルをはじめたくさんの塩スイーツが作られています。ぜひ遠いブルターニュの地を思いながら、その味わいを堪能してみてください。
 

<参考>
※1:ブルターニュ
https://kotobank.jp/word/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A5-127287

※2:6 東海・中部各県の主要指標比較表 - 愛知県
https://www.pref.aichi.jp/kikaku/bunken/torikumi/houkoku-youkou/pdf/ss6.pdf

※3:ブルターニュ観光局公式サイト
https://www.bretagne-tabi.jp/

※4:ブルターニュの特産物
https://www.le-bretagne.com/j/bienvenue/product/

※5:ゲランドの塩 ル ゲランデ
https://www.ecnac.jp/gueran/index.html

※6:ゲランドの塩生産者組合の天日海塩 収穫方法
https://www.ecnac.jp/gueran/topics_harvest.html

※7:ブルターニュの郷土料理
https://jp.france.fr/ja/bretagne/article/39879

※8:一流シェフが絶賛!手練りで生まれるブルターニュの有塩バター
https://www.tsuji.ac.jp/oishii/recipe/letter/totteoki/butter.html

※9:フランスのバターとバターが主役のお菓子たち
https://www.tsuji.ac.jp/oishii/recipe/letter/totteoki/france.html

※10:MAISON LE ROUX
https://www.chocolatleroux.com/content/8-tout-savoir-sur-le-createur