2011年3月11日に発生した「東日本大震災」。毎年3月を迎えると防災について改めて考える人も多いのではないでしょうか?
災害大国の日本では、「地震」「豪雨」など「もしも…」の時は突然やってきます。大規模災害が起こった時にこそ、自分や家族を守るために健康の基本となる食事を大切にしたいもの。しかし、とりあえずの非常食は準備しているものの、実際の災害時を想定して「何をどのくらい」備蓄したらよいのか、知っていますか?
今回は防災食の選び方のポイントをお伝えしていきます。
防災食は何日分備蓄しておけば安心?
防災食は最低でも3日分、できれば7日分以上用意しておくことが推奨されています。飲料水は調理に使用する分も含めると1日1人で3リットルほどは必要と想定しておくとよいでしょう。これは大災害が起き、電気、ガス、水道などの生活インフラがダメージを受けた場合、通信や交通などを含めたライフラインの復旧には3日程度かかるとされているからです。最低でも災害発生後の3日間は支援物資を期待するのではなく、自分の力(備蓄)で生き抜くことが不可欠になります。※1)
災害時に意識すべき栄養素は?
災害発生直後は栄養バランスや内容はともかくとして、とにかく生き延びるために空腹を満たすことが重要となります。食料は上記の通り備蓄に頼るしかありません。その後1週間以内には支援物資が到着し始めますが、“おにぎり、パン、カップめん”などの炭水化物を主とした主食中心で配られます。2週間が経つころにはお弁当や炊き出しの支給があるものの野菜、肉、魚、乳製品などの生鮮食品は届かないため、長期的にみると「たんぱく質」や「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」の不足が目立ちます。※1)※2)
偏った食事による栄養不足やストレスが原因で免疫力が低下し、感染症や食中毒にもかかりやすくなってしまいます。
また、災害時は、食べやすさや食事による安らぎを求めて温かい食事や汁物のニーズが高まるようです。
防災食の賢い選び方
それでは、具体的にどのような食品を準備しておくのがよいのかご紹介していきましょう。ポイントは3つ。
・お米やパスタなど主食だけでなく支援物資で届きにくい食品も意識する
・缶詰やレトルトパックなど長期保存が可能なもの
そしてなにより
・自分や家族がおいしいと思えるものを選択する
災害時には、疲れや大きなストレスがかかります。好きなお菓子なども用意しておくと気持ちが落ち着くかもしれません。
さらに、災害時には不足しがちな栄養素が補給できる食品もご紹介します。
【災害時に不足しがちな栄養素を補給できる食品】
●「たんぱく質」…
缶詰(サバ缶、ツナ缶、焼鳥缶、豆水煮缶など)、高野豆腐、大豆ミート、牛乳(常温保存可能なもの)など
●「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」…
果物:果物缶詰、果物ジュース缶(なるべく果汁100%のもの)、ドライフルーツなど
野菜:野菜ジュース缶、トマト缶、野菜スープ(フリーズドライ、レトルト)など
乾物:乾燥ひじき、乾燥わかめ、干ししいたけ、切り干し大根、ナッツ、ふりかけなど
そのまま食べられるものもありますが、ポリ袋を利用すれば、これらの食材を組み合わせておいしい料理を作ることが可能です。食材をポリ袋に入れて湯せんするだけで、ごはんや野菜たっぷりの味噌汁、丼もの、パスタまで作ることができます(ポリ袋調理法)。湯せんに使ったお湯は繰り返し使えるので貴重な水の節約にもなります。食器洗いの水を節約するために、紙皿や紙コップに加えラップを備蓄しておくことも覚えておきましょう。
防災食は非常時に食べることを想定したものですが、普段の食料品から防災食になりそうなものは多めに購入しておくなど(ローリングストック法 ※3)、日頃から災害時を想定しておくことが大切です。非常事態だからこそ、いつも食べているお菓子やちょっとした飴やキャラメルなどでも心が癒され活力になったりするものです。ぜひこの機会に、今準備している防災食の見直しや、いつものお菓子も防災食としての視点から見直してみてはいかがでしょうか。
※1) 兵庫県立大学環境人間学部 湯浅 正洋,澤村 弘美,榎原 周平,松井 朝義,渡邊 敏明.災害時におけるビタミン栄養の確保(災害栄養-ビタミン・ミネラルから食事と健康まで-).公益社団法人 日本ビタミン学会.2011. 85(8) .389-399
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/85/8/85_KJ00007406414/_pdf
※2)独立行政法人 国立健康・栄養研究所,社団法人日本栄養士会「災害時の栄養・食生活支援マニュアル」(平成23年4月)
https://www.dietitian.or.jp/assets/data/learn/marterial/h23evacuation5.pdf
※3) 普段の食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限を考えて古いものから消費し、消費した分を買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つための方法のこと
農林水産省ホームページ 災害時に備えた食品ストックガイド(2)
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/chapter02.html
ライタープロフィール
渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】
保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。