肩こり、疲れやすさ、不眠、イライラなど体調の変化を感じていませんか。 45~55歳位を「更年期」といいます。更年期以降は不調を感じやすい世代だとも言われています。だからこそ、自分の体の変化をよく知り、前向きに年齢を重ねていくべきだと考えられます。
心についての研究者である私から見ると、心を整えることが、40~50代を幸せに過ごすために重要だと思います。
では、どのようにして心を整えればいいのでしょうか? ここでは5つのポイントを紹介しましょう。(1)リラックス、(2)ネガポジ変換、(3)視野を広く、(4)自己開示、(5)愛を大きく、の5つです。
(1)リラックス
まずは、リラックスです。何か課題があるときに無理をして、自己犠牲的に頑張る人がいますが、それではバーンアウト(燃え尽き症候群)になってしまいます。常に自分のストレスを意識して、それが高くなりすぎないように気をつけることが重要です。そのために重要なことがリラックスです。失敗した時も、叱られた時も、落ち込んだ時も、腹が立った時も、まずはリラックス。お茶を飲むとか、お菓子を食べるとか、愚痴を言うとか、旅行に出るとか、買い物をするとか、寝るとか。人によって違うと思いますが、まずは自分のリラックスポイントを知って、嫌なことがあったらまずはリラックスしてダメージを軽減することが第一です。ダメージやストレスにもよりますが、数時間か数日経つと、気持ちはおさまってくるはずです。行動する元気が出てきたら、次に進むといいでしょう。
(2)ネガポジ変換
何かネガティブな事態に遭遇した時、ポジティブな考え方に変えてみる「ネガポジ変換」をしてみてください。例えば、叱られた→自身の成長の機会を与えてもらえた、けんかをした→意見を述べ合って相互理解が少し進んだ、子供にガミガミ言ってしまった→子供に成長の機会を与えた、うまく意見が言えなかった→新たなことについて考える機会を得たので次は言えるだろう、自分の考えが理解されない→理解されないくらい独創的、待ち合わせに遅れた→自由奔放、仕事が間に合わなかった→高度すぎる仕事だったからしかたない、など。
どんなネガティブな事柄にも、必ず反対の側面があります。
(3)視野を広く
視野の広い人は楽観的かつ幸せで、視野の狭い人は悲観的で幸福度が低いという研究結果があります。一緒に幸せの研究をしている妻の前野マドカが、「何かに悩んだときには、視野が狭くなっていないかと考えるといい」と言います。これはなかなか言い得て妙です。悩んだり、困ったり、イライラしたり、怒ったり、落ち込んだり、なんらかのネガティブな状態に陥っている時は、だいたい視野が狭くなっているからです。視野を広げてみると、いろいろな解決策が思い浮かびます。あなたが尊敬するあの人だったらなんと言うかを想像してみてください。人類史の視点から考えるとあなたの問題の大きさはどれくらいかを考えてみてください。視野を広げ、偉人の視点、世界の視点、宇宙の視点に立てば、さまざまな解決策を思いつくことでしょう。
(4)自己開示
あなたは自分の本音を隠して、世間に対して心を閉ざしていませんか? そこまで大げさではなくても自分の思っていることを言わないでやり過ごしたり、あるいは言いたいのに言えないままでずるずると過ごしたりしていませんか?
要するに、外から見られる自分と本当の内面の自分がズレていると疲れます。いつも取り繕っていないといけませんからね。一番楽なのは、実はひとりでいる時も、家族といる時も、職場にいる時も、友達といる時も、他人と話すときも、同じ自分であることです。
しかし多くの人は、本当の自分を多かれ少なかれ隠して自分の良いところだけを外に見せながら暮らそうとしがちです。ところが自分の悪い面というのは、自分が思っている以上に外から見ると丸見えです。みなさん、他人の欠点はすぐにわかりませんか? 図々しすぎる、大人しすぎる、自分勝手すぎる、自慢しすぎる、几帳面すぎる、大雑把すぎると、他人の悪いところはよく見えます。ということは、自分の悪いところも自分が思っている以上に周りからは丸見えだということです。
したがって自分の良いところも欠点も、隠そうとせずにドーンと表に出してしまうことがお勧めです。自己開示です。
(5)愛を大きく
最後は、愛を大きく。あなたの中に愛はありますか? 自分への愛と、周りの人への愛。それは大きいですか、小さいですか。ざっくりというと、愛が大きいほど幸せです。まず、自分を愛してください。自分のここが嫌い、失敗した自分が許せない、などと自分に厳しくなりすぎずに、自分を大切にしてください。そして、みんなを愛してください。どの人もどの生物も一所懸命生きています。あなたが苦手な人も好きではない人も、みんなそれぞれ一所懸命生きているのです。たまたま、みんな未熟だから欠点もあります。失敗もします。しかし、それはみんな一緒。寛容で楽観的にみんな許しましょう。みんな、いとおしい。そう思ってみませんか。みんながいとおしいと思うと人間関係の悩みはスーッと消え去ります。ぜひ、愛に溢れた自分を育ててみてください。
紹介著書
幸せのメカニズム 実践・幸福学入門
著者
前野 隆司 (マエノ タカシ)
発行元
講談社現代著書
発行日
2013年12月18日
定価
990円(税込)
紹介
幸せはコントロールできる! 脳・ロボット学者が解き明かす、そのしくみ。個人の幸福追求、幸せにつながるビジネスのために。人類にとって役に立つ、学問としての体系的幸福学。幸せの四つの因子●「やってみよう!」因子●「ありがとう!」因子●「なんとかなる!」因子●「あなたらしく!」因子
ライタープロフィール
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
兼 慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長
前野隆司(まえのたかし)
1984年東京工業大学卒業、1986年同大学修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校訪問研究員、ハーバード大学訪問教授等を経て現在慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務。博士(工学)。著書に、『ディストピア禍の新・幸福論』(2022年)、『ウェルビーイング』(2022年)、『幸せな職場の経営学』(2019年)、『幸せのメカニズム』(2013年)、『脳はなぜ「心」を作ったのか』(2004年)など多数。日本機械学会賞(論文)(1999年)、日本ロボット学会論文賞(2003年)、日本バーチャルリアリティー学会論文賞(2007年)などを受賞。専門は、システムデザイン・マネジメント学、幸福学、イノベーション教育など。