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こころの安定は体から、健康寿命を伸ばすために普段から取り組むべきこと


日本人の健康寿命と平均寿命の差は約10年前後です。その期間は介護や支援など、誰かの手を借りながら生活をしなくてはなりません。いつまでも健やかな毎日を送るためには、普段からの健康づくりが大切です。ここでは心と体の関係性やストレスが引き起こす症状などについて、解説していきます。

目標は平均寿命と健康寿命の差を縮小させること

平均寿命とは「0歳における平均余命」のことです。長寿大国の日本では、平均寿命が男性は81.41歳、女性は87.45歳(2019年)と水準が高くなっています。また、平均寿命とは別に健康寿命というものがあります。これは、長期入院や介護のように健康上で制限されることなく、日常生活を送れる期間のことです。日本人の健康寿命は男性72.68歳、女性が75.38歳(2019年)であり、平均寿命との差はそれぞれ約9年、約12年となっています。※1

65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因として、男性の23%が脳卒中、女性の20.5%が認知症となっています(2018年 内閣府 高齢社会白書)。この期間は介護や社会的支援などのサポートが必要となるので、他人に頼らなければ生きていくことができません。

この平均寿命と健康寿命の差の問題点は、医療費や介護費の増加が起こることが挙げられます。介護にかかる費用は月平均約8万円弱で、家計や社会保障費の増加に大きな影響を及ぼすのです。日本は高齢化が急速に進んでいます。平均寿命だけ延びたとしても健康寿命が延びなければ、経済的に大きな負担がかかります。このような現状を前にして、日本では「健康寿命延伸プラン」のように、平均寿命との差を縮小するための方策がとられています。※2

健康寿命延伸プランとは、2019年に策定された健康寿命の目標とその目標を達成するための施策について定めたものです。2040年までに健康寿命の平均を3年以上延ばし、75歳以上とすることを目標とし、健やかな生活習慣の形成・疾病予防・介護予防を軸に具体的な施策が立てられています。

身体の健康だけではなく心の健康も大切に


現代はストレス社会であり、悩みやストレスを持っている人は持っていない人よりも多い傾向が見られます。詳細を見ると、男性よりも女性の方が、ストレスがあると答えた人は多く、年齢階級別では男女ともに40~49歳が最も高くなっています。※3

ストレスの原因は、性別や年齢によってさまざまです。例えば10代は学業、30代女性は育児、50代男性は金銭問題などがストレスの原因となっているようです。※4

ストレスは誰にでも起こる可能性のあるものですが、溜めすぎると体調を崩すこともあります。ストレスによる症状としては、疲れやすい、気力がわかないなどの全身症状や、偏頭痛や肩こりなどの筋肉症状、めまいなどの感覚系の症状があります。また、夜ぐっすりと眠れなくなったり寝つきが悪くなったりする睡眠障害も要注意のサインです。

ストレスは心の問題ですが、その影響はさまざまな症状として体に表れます。心理的なストレスを脳が感知すると、その情報は脳の視床下部へと伝えられます。視床下部がその情報を受け取ると、自律神経の働きによって脈が速くなったり、血圧が高くなったり、体温が上がったりするのです。

体の健康にばかり気を付けていて、気にしすぎてストレスを感じてしまうこともよくありません。ストレスは、自分が好きだと思うことや熱中できるものを見つけることで緩和されていきます。ストレスを溜めすぎて手遅れになる前に、発散できるものを見つけておくとよいでしょう。

持続的な幸せを築くためには



厚生労働省によると、Well-being(ウェルビーイング)とは「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」とされています。心身の健康だけではなく、目的を達成することや良好な人間関係を重視する生き方であり、個人の幸福に注目した考え方です。

このように持続的な幸せを感じられる生活を送り充実感を得るためには、整った生活習慣は最低条件となります。このために整った食事、適度な運動、良質な睡眠は基礎であり、ストレス解消のためにはその他の対策に努めることをおすすめします。※5

<日常生活>
・窓の外を眺める
・ゆったりお風呂に入る
・体をストレッチする
・好きな音楽を聴く
・甘いものを食べる
・仲の良い人と一緒に食事をする

<考え方>
・上手くいっていることに目を向ける
・考え方やものの見方を変えてみる

<誰かに相談する>
・日頃から話せる人を増やす
・心身の不調が続くときは早めに専門家に相談する

特に甘いものがもたらすリラックス効果については、以前からお伝えしてきた通り特質するべきものです。また、食生活においては「孤食」と呼ばれる状態は好ましくありません。仲の良い人と一緒に食事をしたりするのも効果的です。ニューノーマルな時代、オンライン越しの会食というのも、一定の効果はあるでしょう。

心と体はつながっており、小さなストレスが大きな引き金となってしまうこともあります。ストレスとは上手に付き合い、できるだけ早めに対処するのが理想的です。心にゆとりのある生活が、持続的な幸せを築くことにつながっていることでしょう。

※1 厚生労働省 健康寿命の令和元年値について
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf

※2 健康寿命延伸プラン | e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-004.html

※3 2019年国民生活基礎調査の概況 Ⅲ 世帯員の健康状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/04.pdf

※4 国民生活基礎調査(令和元年)の結果からグラフでみる世帯の状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h29.pdf

※5 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス ストレスをためない暮らし方
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/first/first02_2.html


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。