糖と健康

Category

天然の添加物トレハロースの使い方とメリット

トレハロースは甘味度が砂糖の半分以下で上品な甘みを持つ甘味料です。食品加工で使われることが多く、餅を柔らかくしたり、パンの乾燥を防いだりと、食品をより美味しく保つための性質を持っています。こちらの記事ではトレハロースの特徴や使い方について解説しています。

糖類にはさまざまな種類があり、それぞれに甘みや特徴が異なっています。トレハロースは私たちが普段食べている加工食品にも使われている可能性が大。なぜ加工の現場で使用されるのか、特徴を知れば納得できるかもしれません。今回はトレハロースに注目し、使われている食品や特徴などについて見ていきます。

トレハロースの用途や物性

トレハロースはスクロース(ショ糖)やマルトース(麦芽糖)などの糖質と同じく、天然に存在する糖質です。動植物や微生物の内部に存在し、昆虫の体内では細胞が生きていくためのエネルギー源として利用されています。また、外界の熱や乾燥、凍結、浸透圧などのストレスから体を保護する役割も持っています。

トレハロースが食品業界に広まってきたのは比較的最近のことです。トレハロース自体は1832年に発見されていましたが、効率よく抽出する方法が見つかりませんでした。そのため、価格が高く食品に使用するのは難しかったようです。安価で大量な提供ができるようになった現在では、食品をはじめとして化粧品や医薬品など、幅広い分野で使用されています。※1

トレハロースは他の甘味料との併用で素材そのものの味を引き出すことができるため、和菓子から洋菓子、飲料などに幅広く用いられています。トレハロースの別の機能として保湿・老化防止の効果があり、特にパンや餅などに使用すると柔らかさと湿度を保ち、でんぷんの老化を防止する効果が高いことが知られています。また、トレハロースの甘味度は砂糖の半分以下と低めではありますが、保湿・老化防止の効果と甘味度が低い事により柔らかく上品な味わいを演出できます。

<トレハロースの特徴>

・着色性
通常、糖とたんぱく質(アミノ酸)が存在する環境では、糖とアミノ酸が反応してメイラード反応という褐色に変化し香ばしい風味になる現象が起こります。しかし、トレハロースはこのメイラード反応が起こりづらいため、香ばしい色が特徴の焼き菓子の色付けには向いていません。

・吸湿性
トレハロースは吸湿性が低く、水分による品質への影響が大きい錠菓や薬の糖衣としても用いられます。

・耐熱・耐酸性
トレハロースは熱や酸に対して安定した耐性を持っており、着色や分解が少ないため食品加工の際も影響を受けづらく汎用性に優れています。

・ガラス化しやすい
トレハロースには食品をガラス化させやすい特性があり、キャンディやクッキー、乾燥食品の吸湿防止、クリスピー感の改良に利用されます。

・溶解性
トレハロースは水に対する溶解度が砂糖に比べると低いため、吸湿性の低いトッピングシュガーやコーティングに向いています。※2

トレハロースの健康的なメリット

トレハロースは普段あまり耳にすることがない甘味料なので、体に悪いものではないかという懸念を持たれることも多々あります。しかし、トレハロースはもともと私たちが普段食べているものにも含まれています。例えば、なめこや椎茸、酵母など。トレハロースはほとんどがトウモロコシなどのでんぷんから作られており、化学的に合成された甘味料とは異なります。

トレハロースの特徴としてはでんぷんの老化防止、たんぱく質の変性防止、脂質変性の抑制、鮮度の保持などが挙げられます。また、健康面ではキシリトールと同じく虫歯になりにくい、骨粗しょう症を予防する、メタボリックシンドロームを予防するなどの有益な特徴を持っています。

・インスリン低分泌作用・耐糖能改善作用
トレハロースはグルコース(糖類の一種)に比べてインスリン値の急激な上昇を抑える可能性があるため、食後2時間後の血糖値が元に戻りにくい人の血糖値を正常に保つためのグルコース(ブドウ糖)の処理能力である、耐糖能を改善する効果が望めます。

・細胞障害の抑制
トレハロースにはタバコの煙や酸、乾燥のストレスから細胞を保護する作用が期待できます。

・運動パフォーマンスの向上
トレハロースはグルコースに比べて、運動終盤のパフォーマンスを向上させる可能性があります。※3

このように、トレハロースは健康面でもさまざまな好影響を与えてくれる可能性があり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に役立つ食品として期待されています。

トレハロースの使い方

トレハロースは砂糖よりも甘味が少なく、砂糖の代わりに使うとあっさりした味わいに仕上がります。しかし、カロリーは砂糖と同じ4kcal/gなので、トレハロースに置き換えてもカロリーオフにできるというわけではありません。

トレハロースは、単体で使われるよりも砂糖と併用されることの多い甘味料です。目安としては砂糖に比べて少し控え目にし、使用割合を2~4割程度に抑えるのが良いでしょう。※4

<トレハロースの活用例>
・団子や大福が固くなるのを抑制する
・焼き菓子の仕上がりをあっさりと軽い食感にする
・パンのパサつきを抑える
・ゼリーのみずみずしい食感を長持ちさせる
・飴をパリパリに仕上げる
・肉料理をしっとりと柔らかく仕上げる
・野菜のみずみずしさを保つ

食品加工の現場で使用されることの多いトレハロースですが、家庭でもお菓子づくりやパンづくりの場面で役立ちます。砂糖と併用して使うことで両方のメリットを活かしながら美味しく仕上げることができるので、機会があればぜひお試しください。

参考

※1 奥 和之, 澤谷 郁夫, 杉本 純夫, 神戸 三幸, 竹内 叶, 村井 佐恵, 黒瀬 真弓, 久保 田 倫夫, 福田 恵温. (2002)「トレハロースの機能特性」 『Journal of Applied Glycoscience』49巻,3号, pp351-357.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jag1999/49/3/49_3_351/_pdf/-char/ja

※2 ※2 林原 食品素材事業サイト 製品紹介 トレハ
https://www.food.hayashibara.co.jp/product/treha/

※3 林原 多機能糖質 トレハロースの研究
https://www.hayashibara.co.jp/data/66/rd_tp_four/

※4 KAWASHIMAYA Food for well-being トレハロースは体に悪い添加物?!使い方と効果もご紹介
https://kawashima-ya.jp/contents/?p=27570



ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。