パラチノースという甘味料をご存知でしょうか。パラチノースははちみつに含まれている天然に存在する糖質で、継続的に使用することでさまざまな健康効果が期待できます。また、運動パフォーマンスを高めたい人にもおすすめです。パラチノースにはどのような作用があるのか見ていきましょう。
パラチノースとは?
糖類にはいくつもの種類があり、次々に耳慣れない名前が出てきます。料理に甘味を加えるという点ではどれも同じですが、それぞれの特性を知って上手に使い分けることが大切です。
パラチノースは日常で用いられる機会が少ない糖類の一つですが、はちみつには微量に含まれている天然に存在する糖類です。パラチノースは微生物が生成する酵素を砂糖に作用させ、グルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)の結合位置を変えて作られています。
パラチノースの分子構造は砂糖と非常によく似ています。砂糖もパラチノースも二糖類に分類され、単糖のグルコースとフルクトースが結合してできているという点では同じです。※1
パラチノースの甘味度は砂糖の40~50%程度で、1gあたりのエネルギーは4kcalとなっています。パラチノースは一般的な炭水化物と同じく一日の摂取量に制限がなく、安心して口にすることができる食品です。また、熱や酸にも強く褐変しにくいため、製品の加工や貯蔵に向いています。※2
パラチノースの健康効果
パラチノースを使った食品には、ゼリーやキャンディ、飲料などがあります。また、砂糖のように調味料としても販売されており、家庭で料理を作る際は砂糖の代用品として使うことも可能です。調味料としての認知度はまだまだ低いかもしれませんが、ドラッグストアやネットショップでも購入できるので、手の届かないものではありません。
パラチノースには健康的な利点があると考えられ、研究が進められています。現在までに次のような効果があると考えられています。
・血糖値の上昇を抑える
パラチノースは砂糖に比べて血糖値の上昇を抑えやすいとされています。さらに、インスリンの分泌量も抑えられるとの報告があります。パラチノースは小腸で分解されて吸収されますが、酵素反応がゆっくり進むため、吸収速度はスクロース(ショ糖)の1/5程度です。血液中にグルコースが流入する速度が穏やかなことから、血糖値の急激な変化を引き起こしにくいと考えられています。
・内臓脂肪の蓄積を防ぐ
脂肪の蓄積を促すGPIというホルモンがあります。パラチノースは砂糖に比べるとGPIの分泌量を50%以下に抑えられるとの報告があります。他にも、内臓脂肪の面積を減少させる、脂肪の燃焼量を増やすなどの作用が期待されています。※3
パラチノースが持つこのような効果は、メタボリックシンドロームのリスク要因を減らせる可能性があり、食事指導の場面でも役立てることができるでしょう。しかし、パラチノースは砂糖と違って使い方を知らない人がほとんどです。このような人たちにはただ情報を提供するだけでなく、使い方などを含めたより実践的な指導を行う必要があります。※4
スポーツパフォーマンスを高めるパラチノース
スポーツをする人向けの商品には、パラチノースを使ったものが多く見受けられます。例えば、飲むタイプのゼリーやスポーツドリンクなどです。パラチノースは、特にマラソンやロードバイクなど、持久系のスポーツに適しているようです。
パラチノースは、ゆっくりと体に吸収される特徴があります。これは一般的な糖質が小腸の上部で吸収されるのに対し、パラチノースは小腸全体を使って吸収されるためです。パラチノースはこの性質によって、持続的なエネルギー補給が必要なスポーツに向いていると考えられています。他にも集中力が必要なeスポーツや勉強に対し、パラチノースの有効性が期待されています。※5
パラチノースは、甘味が砂糖の半分程度なので、使用量が同じだと甘味が抑えられてしまいます。このため、パラチノースの味を物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、くどさがなく、すっきりとした甘味に仕上げることができるので、強い甘味が苦手な人にはおすすめです。
ほとんどの場合、パラチノースは単独で使用されるのではなく、他の甘味料と合わせて使われます。特に、甘味度が高いアスパルテーム(人工甘味料の1つ)とかけ合わせるとカロリーを抑えられるので、ダイエットや治療食として役立てることができるでしょう。
さまざまな健康効果が期待されるパラチノースは、今後ますます使用される場面が増えていくと考えられます。しかし、パラチノースは砂糖に比べると価格が高いので、費用的な問題があります。砂糖と併用することでカロリーやコストを抑えられますので、まずは砂糖と一緒に使うことをおすすめします。
※1 三井製糖DM パラチノース
https://www.mitsui-sugar.co.jp/products/pala_nose/
※2 株式会社 明治 医療・介護関係者の方に向けた専門情報サイト パラチノース
https://www.meiji.co.jp/meiji-nutrition-info/science/info/palatinose/
※3 スローカロリーラボ パラチノースとは
https://www.slowcalorie.com/slowcalorie-labo/
※4 三井製糖株式会社 総合研究所 パラチノースの生理学的機能~消化吸収が穏やかであることから得られる機能~
https://www.mitsui-sugar.co.jp/company/research/pdf/rd_palatinose55.pdf
※6 保健指導リソースガイド ゆっくり消化吸収される糖質 注目される「糖質スローオン」ダイエット
https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2016/005570.php
ライタープロフィール
佐々木優美(管理栄養士)
病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。