本格的な寒さが身に染みる季節になってきました。
電気代の高騰などから「節電」がキーワードとなる昨今。節電しながらも温かく過ごすために、みなさんはいろいろな策を講じていると思いますが、最も身近で簡単な方法といえば、温かいものを食べたり飲んだりすることではないでしょうか?
さて、今回は食事でできる冷え対策と、体を温めるといわれる食べ物の代表格「生姜」について詳しく解説していきます。
食べ物で体は温まる?
寒さが身に染みる冬の時期は、ぐつぐつ煮込んだ鍋物やアツアツのグラタンなどが食べたくなりますよね。温かい物を食べると、体は当然ポカポカと温まりますが、食事と体の冷えは密接に関係しています。
「食事誘発性熱産生」という言葉を聞いたことがありますか?食事で体内に吸収された栄養素が分解され、その一部が体熱となって消費されることで、安静にしていても代謝量が増大します。食事をした後に体が温まるのはこの熱産生のおかげ。※1)
特に朝は、1日の中で最も体温が低いため、朝食をとることで体が温まり元気に活動できるようになります。冬の寒い時期の通勤や通学は辛いものがありますが、朝ごはんを食べるだけで寒さを感じにくくなるなんて朗報ですね。
さらに、この食事誘発性熱産生は、筋肉の減少に比例して低下し、逆に筋肉を増やすことで基礎代謝も上がり、高くなると言われています。※1)筋肉を増やすというと、たんぱく質さえ食べていれば良さそうなものですが、食事制限や糖質制限などでエネルギーが不足すると、体は筋肉を壊してエネルギーを生み出そうとします。筋肉を維持し、効率よく熱を生み出すためには、偏りなくバランスよく食べることも大切なのです。
生姜は体を温める?生の生姜は体を冷やす?
体を温める食材というと、「生姜」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?店頭でも、寒くなってくると生姜を使用した商品が増えてきますよね。東洋医学では、「体を温める作用」として知られているようですが、生姜は本当に体を温める効果があるのでしょうか?
生姜には「ジンゲロール」「ショウガオール」「ジンゲロン」という3つの辛味成分が含まれています。生姜を食べたときにピリッと辛いと感じるのはこの成分によるものですね。この辛み成分には血管を拡張させる効果や、皮膚温度上昇効果があると報告されています。血流の改善により、冷え性の改善効果が期待できるというわけです。※2)※3)※4)
一方、「生の生姜は体を冷やす」といった説を耳にしたことのある方もいるのでは?辛み成分のジンゲロールは加熱により一部がショウガオールに変化します。実はこの血流改善効果はジンゲロールよりショウガオールの方が強い作用を持つという報告があるため※2)、そのようにいわれることがあるようです。しかし、生の生姜に体を冷やす作用があるわけではないので、生のままでも加熱したものでも特に気にする必要はありません。
ただ冬場は、温かい飲み物に加えてジンジャーティーにしたり、温かいスープに加えてジンジャースープにしたりする方が、より体の温まりを実感することができるのでおすすめです。
これで体もポカポカ!2つのことに気をつけよう
ここで、おいしい食事をしながら体を内側から温めるために、気を付けることを2つご紹介します。
・温かいものを積極的に摂ろう
やはり温かいものを食べたり飲んだりするのが体を温める基本。特に、最も体温の低い朝食に温かいスープやみそ汁などを取り入れられるとベストです。野菜を食べる時にも生野菜サラダよりレンジやスチームで加熱したホットサラダやスープとして食べるのがおすすめです。唐辛子やカレーパウダーなど香辛料を少し加えると、発汗作用でよりポカポカに。
・欠食なく、バランスよく食べること
食事誘発性熱産生でどれほどの熱を生み出すかは、食事の内容が関係します。たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%、通常の食事はこれらの混合となるので約10%程度の熱を生み出します。※1)
炭水化物のみの食事や、サラダだけの食事など栄養素に偏りがあると、せっかく食べても体が温まる効果が弱まります。筋肉量を維持して、効率よく熱を生み出し、体を温めるには、偏りなくバランスよく食べることが重要なのです。
温かいお風呂に入る、厚着をするなど体を温める工夫はいくつもありますが、何気ない日々の食事の内容によっても体の温まり方に違いが生まれ、冷え対策につながります。食事はそれほどお金をかけなくても気軽にできる、最も身近な対策のひとつ。この冬は、食事で寒さ対策をしてみませんか?
※1)食事誘発性熱産生 / DIT 厚生労働省e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html
※2)夏野 剛, 平柳 健. 生姜抽出物の経口摂取が冷え性の人のエネルギー消費等に及ぼす効果. 日本人間工学雑誌.2009; 45 (4):236–241.
※3)藤澤史子, 灘本知憲, 伏木亨:ショウガ摂取がヒト体表温に及ぼす影響, 日本栄養・食糧学会誌,2005; 58 (1):3–9.
※4)川端 幸奈, 金岡 美里, 坊垣 知佳, 鈴木 杏子, 井口 隆文, 高岡 素子, 渡辺 敏郎,冷え性女性の皮膚表面温度におけるショウガ麹の効果, 日本醸造協会誌, 2013, 108 巻, 10 号, p. 778-786,
ライタープロフィール
渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】
保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。