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乾燥肌の対策には、糖と油を味方につける?


年間を通してお肌の悩みは尽きないものですが、冬場は特に空気が乾燥しやすいため、肌の水分量も少なくなり、カサカサ肌などのトラブルに悩まされる方も多いのではないでしょうか?

クリームを塗ったり、加湿器を使用したりと外側からの対策は欠かせませんが、食事など内側からのケアを忘れていませんか?

乾燥肌対策には、実は意外な栄養素がキーポイントに。今回は乾燥肌と食事との関係を詳しくお伝えします。

食生活と乾燥肌の関係性は?

乾燥肌と食事。一見すると無関係のように思えますが、食生活が乱れると、腸内環境の悪化やホルモンバランスの乱れなどさまざまなところまで派生して影響を及ぼし、お肌の「ターンオーバー」が乱れる要因となります。ターンオーバーとは古い肌細胞が新しい肌細胞と置き換わる現象のことで、「たんぱく質、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、鉄や亜鉛」など影響する栄養素は多種多様。これらの栄養不足が乾燥をはじめとするシミ、たるみなどの肌トラブルを引き起こす原因となります。土台となる肌の健康状態が悪いと、どんなに高級なクリームを使って外側からのケアを頑張ってみても、その努力は水の泡になってしまうかもしれません。せっかくのケアの効果を最大限発揮するためにも、毎日の食事から必要な栄養を補給して、お肌の健康状態をキープしておくことが乾燥肌対策のファーストステップです。

それでは、具体的にはどのような食事をすればよいのでしょうか?

 

保湿の味方は糖と油!?

美肌に欠かせない栄養素といえば、まずはお肌の土台となるたんぱく質を十分にとることが大切なポイントですが、たんぱく質だけを意識してとっていれば良いのでしょうか?

つい避けてしまいがちな「糖と油」。まるで悪魔のささやきのようなこの2つの物質ですが、実は肌トラブルの予防には必要不可欠なんです。過剰にとりすぎてしまうと、そのイメージ通り体にとって悪影響を及ぼしますが、不足すると体にとっては緊急事態。逆に乾燥肌や肌トラブルを引き起こす原因となってしまうのです。

まず「糖」についてです。ダイエットのために「糖質制限」を意識している方も多いのではないでしょうか?糖質はエネルギーの源になる、そして脳を働かせる大切な栄養素ですが、糖質を燃やして作るエネルギーが不足すると、その不足分はたんぱく質を燃やして補われます。お肌のためにと食べたたんぱく質が、お肌に届くことなく消えてしまうのです。さらにエネルギー不足が続くと、今度は筋肉やお肌のたんぱく質が壊されエネルギーとして燃やされてしまいます。食事でとったたんぱく質を、きちんとお肌に届けるためには、必要なエネルギーをしっかりと糖質でとることが重要なのです。


続いて油についてです。糖質同様に、ダイエットのために控えている方も多いのではないでしょうか?脂質は細胞膜やホルモンの構成成分であり、不足すると肌のハリを失う原因になります。また、健康的な皮膚の維持に必要なβ-カロテン等の脂溶性ビタミンは油に溶けることで吸収力が高まるため、お肌にとって不可欠な大切な栄養素なのです。特に油の中でも体内で合成できず、食事から取り入れる必要がある「必須脂肪酸」を積極的にとるのがポイントです。

これで内側からのケアは完璧?糖と油を味方につけた食事のコツ!

敵だとばかり思っていた「糖と油」ですが、たんぱく質をお肌に届けたり、ビタミンの吸収力を高めたりなど、お肌の保湿には重要な栄養素であることがおわかりいただけましたでしょうか?最後に、乾燥肌改善のためのちょっとした食事のコツをお伝えします。

・毎食主食を1品取り入れる
お肌の保湿には糖質が必要とはいうものの、過剰摂取はやはり危険です。ではお肌にとっての糖質の適量はというと、難しいことは考えず、毎食主食を1品取り入れることがポイントです。ごはんであれば茶碗1杯分、食パンなら1枚を目安にしましょう。毎食少量でも主食を取り入れることで、せっかくとったたんぱく質を無駄使いすることなく必要な栄養素が必要なところで使われるようになります。特別頭を働かせる日などは、間食に一粒飴をなめたりするのも時にはよいかもしれませんね。

・野菜を食べる時は、「ティースプーン1杯の油」と一緒に
野菜の中でも、緑黄色野菜は油と一緒にとることで含まれているβ‐カロテンの吸収力が高まり、より効率よく栄養素を体に取り入れることができます。我慢して油は控えていた方には朗報ですね。しかし、いくら油をとるのが良いといってもやはり適量を守ることが大切。1食あたり「ティースプーン1杯の油」が適量の目安です。サラダを食べる際にも、ドレッシングをたっぷりかけてしまっては本末転倒。たくさんかけたい場合はティースプーン1杯のドレッシングやオイルに無糖のプレーンヨーグルトを混ぜた手作りドレッシングなどもおすすめですよ。


・油は「オメガ3系脂肪酸」を積極的に摂ろう
脂質の中でも体内で合成できない「必須脂肪酸」は食事でとることが大切ですが、特に意識してとりたいのが「オメガ3系脂肪酸」。血流改善の効果があるとされ、お肌のバリア機能向上や保湿効果、さらには腸内環境に作用し皮膚の炎症を抑制したりなど美容や健康にさまざまな働きが期待され、良質なオイルとして注目されています。※1)※2)

豊富な食材は、マグロ、イワシ、サバなどの青魚、鮭、くるみ、亜麻仁油、えごま油など。熱に弱く、酸化しやすいため生で食べるのがおすすめ。青魚の刺身に亜麻仁油やえごま油で作ったソースをかけたカルパッチョなども手軽で良いですね。


「美容は毎日の積み重ね」とは言いますが、日々の食事からさまざまな栄養素をしっかりと取り入れて体の中を健康的な状態にしておくことで、過酷な冬の乾燥ダメージから少しでもお肌を守ることができるのです。今年は内側からのケアにも力を入れて、内側からぷるぷると潤ったハリのある艶肌を目指してみませんか?

※1)「オメガ3脂肪酸」
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』eJIM
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/10.html
※2)Nagatake, T., Kishino, S., Urano, E. et al. Intestinal microbe-dependent ω3 lipid metabolite αKetoA prevents inflammatory diseases in mice and cynomolgus macaques. Mucosal Immunol 15, 289–300 (2022).
https://doi.org/10.1038/s41385-021-00477-5


ライタープロフィール

渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】

保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。