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細胞の若返り機能オートファジーと老化の関係性


超高齢社会に突入した日本において、いつまでも元気でいたいという方々が増えてきました。それに伴い、老化制御につながるオートファジーが注目されています。今回はオートファジーについて見ていこうと思います。

そもそもオートファジーとは何??

オートファジーは、日本語に直すと「自食作用」になります。細胞が自身内のタンパク質を分解するリサイクルシステムのことです。これにより常に新陳代謝が行われます。その概念自体は、1963年に生物学者のクリスチャン・ド・デューブによって提唱されたものになります。

酵母において初めてオートファジーを観察した大隅良典博士がノーベル生理学・医学賞を受賞したことによって広く認知されるようになりました。新陳代謝だけでなく、飢餓状態やウイルスなどから身を守る際にも大きな役割を果たすことがわかってきています。

新しい実験手法によってオートファジーの幅広い機能がわかってきた!!

遺伝子組み換え技術が進化し、オートファジーを働かないようにしたマウス(ノックアウトマウス)を作り出すことができるようになったことで、近年、オートファジーが担っている機能が色々とわかってきました。その関わりはかなり幅広く、がん、生活習慣病など多岐に渡ります。

 

また、特にオートファジーが大事な臓器もわかってきました。人の体の中で、心臓や神経は再生しないといわれている臓器です。これらの臓器の細胞である心筋細胞や神経細胞は生まれ変わることはないため、オートファジーの機能を失うことで、メンテナンス機構が破綻し、結果として、心筋にエネルギーが正しく行かず、心臓の機能が低下したり、脳内にゴミがたまることでアルツハイマー病をはじめとした神経疾患が進行したりしてしまいます。

逆に言うと、オートファジーの働きを活性化させることで病気の治療や予防につながると言えるため、この視点での研究が現在でも盛んに行われています。もちろん、オートファジーが低下することでさまざまな細胞の機能が低下し、その結果として老化が進行してしまうということも言えます。オートファジーを活性化させることで、老化対策にもなる訳です。

オートファジーが活性化される物質とは??

近年の活発な研究によって、オートファジーを活性化することができる物質が見つかってきました。有名なところだと、ポリアミン含有米胚芽エキス、トランスレスベラトロール、アスタキサンチンになります。

米胚芽エキスに含まれるポリアミンという物質が抗老化成分になります。これは体内でも作られてはいますが、加齢に伴って減少していくと考えられています。老化が気になる場合に補うと良いでしょう。

トランスレスベラトロールはぶどうや赤ワインに含まれているポリフェノールです。抗酸化作用を持っているもので抗老化成分になります。有名な「フレンチパラドックス(脂っこいものを食べているのにフランス人はなぜか心疾患などが少ないという矛盾、毎日飲んでいる赤ワインのおかげだと考えられている)」にも関わっていると考えられている物質になります。赤ワインで摂取するのは、アルコールが苦手な方もいますし、飲み過ぎてしまいアルコールの害が問題になる可能性もあるため、なかなか現実的ではないかもしれませんので、サプリメントなどで摂取すると良いでしょう。

アスタキサンチンは鮭やエビなどの赤色の色素成分であり、カロテノイドの一種です。こちらも、必要量を食事だけで摂取するのは難しいため、鮭などで摂取する他 、サプリメントなどで摂取することが有効でしょう。

オートファジーは意外と簡単に活性化できる?!

実はオートファジーは意外と簡単に活性化できます。それは「ほどよい断食」を利用することです。オートファジーは栄養が十分にある状態ではほとんど機能しないことがわかってきたのです。

食べ物を食べてからある程度の時間がたつとオートファジーが活性化してきます。もともと、このオートファジーという機能に関しては、細胞がストレスを受けた際にでも生き残れるように作られたシステムなのです。つまり、飢餓状態というストレス条件下での方がオートファジーは活性化するのです。かといって、飢餓状態が長く続いてしまうと、オートファジーが働かなくなり、かつ、大事な栄養自体がすべて消費されてしまうため、健康には逆効果となりますので注意してください。あくまでほどよい空腹時間の継続が大事です。空腹が健康に良いという説が巷でありますが、これはまさにオートファジー活性化が根拠になっています。

よく考えてみると食べ過ぎると肥満につながり、結果として生活習慣病などになる、逆に、空腹時間が長くなると栄養失調で死んでしまいます。ほどよい空腹がオートファジーを活性化し、健康向上につながることは納得できることでしょう。
ぜひ上手にオートファジーを活性化して、日々の健康増進につなげてみてください。

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【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師ほか第一種放射線取扱主任者、甲種危険物取扱者、調理師など30以上の資格を保有。
現在は、国立大学法人東京工業大学キャンパスマネジメント本部
放射線安全部門 特任准教授
(国立大学法人東京大学医学部附属病院 届出研究員)
(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 客員研究員)
(公益社団法人日本アイソトープ協会 講師)