糖と健康

Category

ミトコンドリアの活性が健康のカギ? 意識して摂取するべき食材は


ミトコンドリアは細胞の中に存在し、活動エネルギーとなるアデノシン3リン酸(ATP)を合成する細胞小器官です。この働きによってそれぞれの細胞が活動的になり、生命維持に役立ちます。ミトコンドリアは健康面でも注目されており、活性化することで健康に役立つと考えられています。ミトコンドリアを活性化させる食べ物にはどのようなものがあるのでしょうか。

ミトコンドリアの働きとは?

ミトコンドリアは一つの細胞に100~2000個程度含まれていて、ミトコンドリアは分裂と融合を繰り返しており、その形状は酵素によって調節されています。

ミトコンドリアの主な働きはエネルギー産生です。運動を行う時は筋肉の収縮によって多くのエネルギーが使われます。このエネルギーの大部分がミトコンドリアの有酸素性エネルギー代謝で作り出されるのです。ミトコンドリアは酸素を使って炭水化物を分解し、そのエネルギーを細胞内で使えるATPに変えています。※1

ミトコンドリアにはこのエネルギー産生以外に、細胞の生死を制御する機能、細胞内のカルシウムイオン濃度の調節や、脂質の酸化などに関わる働きがあります。また、近年では免疫反応においても重要な働きをしていることが明らかになってきました。

ミトコンドリアと免疫機能


免疫とは、私たちがさまざまな病原体の侵入によって生態を脅かされた時、発動される重要な生体防御システムです。ミトコンドリアはインフルエンザウイルスやノロウイルスなどといったRNA(リボ核酸)ウイルスに対する細胞内自然免疫応答と関係していることが近年の研究で明らかにされています。

大阪大学が中心となって行った研究では、ミトコンドリア上でMffたんぱく質(ミトコンドリア外膜にあるたんぱく質)がRNAウイルス感染に対する応答に関わることが明らかにされました。さらに、このMffたんぱく質はウイルスに対する応答の調節までしているそうです。

ミトコンドリアはエネルギーを産生する時に代謝産物として活性酸素も作り出しています。活性酸素は悪者にされる場面が多いですが、免疫反応においては異物を攻撃する時に免疫の暴走を抑制するなどの重要な働きを担っています。つまり、ミトコンドリアを活性化させて免疫細胞のエネルギー循環を向上させれば、免疫応答が正常に働きやすくなるのです。※3

また、ミトコンドリアの活性化により作り出され不要になった活性酸素は、たんぱく質を分解するオートファジーによって分解されますが、オートファジーが活性化すると細胞の老化を遅延させることにもつながります。
オートファジーとは。ノーベル賞の発見がいま再び話題に

このように、ミトコンドリアと免疫反応の関係性が少しずつ明らかになってきたことで、ミトコンドリアの活性についても注目が集まるようになってきました。普段の食事によってミトコンドリアを活性化させ、免疫反応をアップさせて病気を防ぐというのが今日の流れです。

ミトコンドリアの活性はヒトの健康における一助となる


体の中にある細胞で消費されるエネルギーの大部分はミトコンドリアで生産されるため、ミトコンドリアが活発に働く状態であれば細胞も生き生きと活動することができます。健康な細胞はミトコンドリアを最大限に使ってエネルギーを生産しています。

ミトコンドリアを活性化させるための素材をとり入れる必要があり、この点で効果的なのが有機酸(酸性の有機化合物)やコエンザイムQ10の日常的な摂取だといわれています。

有機酸と聞くと日常的にとるのは難しく感じますが、多くは野菜やくだものから摂取することができます。クエン酸やリンゴ酸、アスコルビン酸なども有機酸の1種類です。酸味のあるオレンジやレモン、キウイなどのくだものにはもちろんのこと、りんごなど酸味が少ないくだものにも有機酸が含まれています。

くだものや野菜には抗酸化ビタミン(活性酸素の抑制効果を持つビタミン)であるビタミンA、C、Eも含まれています。これらを摂取するとミトコンドリアの活性のみならず、アンチエイジングや生活習慣病予防に役立つといえるでしょう。ビタミンについてはこちらもご覧ください。
抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンEで免疫力を高める!
アスコルビン酸とは? ビタミンCの本名とミトコンドリアの関係

なお、近年の研究では、糖も免疫に大きな関連があり、免疫機能を発揮するためには適度な糖が必要だということがわかっています。
糖と免疫の関係とは?!

また、コエンザイムQ10は美容にも良いといわれている成分であり、イワシや豚肉、卵などのたんぱく質に多く含まれます。コエンザイムQ10は油に溶ける性質を持っているため、良質の油で炒め物をしたり、酸化を防ぐためにオイルをかけてカルパッチョにしたりする食べ方がおすすめです。

ただし、コエンザイムQ10は食事で摂取できる量はごくわずかです。食事だけではなくサプリメントなどの栄養機能食品も活用してみましょう。

ミトコンドリアは加齢とともに機能が低下していく傾向があります。免疫にも関わるミトコンドリアを活性化させることが健康維持にとっての重要なポイントとなるでしょう。日々の食事バランスを意識しながら、有機酸やコエンザイムQ10が摂れる食材を意識的にとり入れてみましょう。

ミトコンドリアについてはこちらもご覧ください。
ミトコンドリアとは? 食事で延ばす健康寿命!
ザクロに注目! 話題のミトコンドリアを活性化させる成分とは?
ザクロに含まれるエラグ酸とは? オートファジーにも有効

<参考>
※1 eヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-054.html
※2 サワイ健康推進課 細胞から元気に!“エネルギー工場”ミトコンドリアを活性化して「免疫老化」を防ごう
https://kenko.sawai.co.jp/theme/202106.html
※3 ResOU(リソウ)ウイルス感染時の応答を制御する ミトコンドリアの新しい機能を発見
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20201111_2
※4 介護ポストセブン
https://www.news-postseven.com/kaigo/83078

ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。