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ミトコンドリアとは? 食事で延ばす健康寿命!

 


私たちが毎日元気に過ごせているのは、食べたものからエネルギーを作り出しているから。そのエネルギーを作る働きで重要な役割を果たしているのがミトコンドリアです。ミトコンドリアは食事とどのように関わっているのか、寿命を延ばすためにはどのような生活をしたら良いのか見ていきましょう。

ミトコンドリアってどんなもの?

ここ最近、健康の観点で注目されているのがミトコンドリアの活性化です。メディアやSNSなどでミトコンドリアに関する話題を耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。

ミトコンドリアは中学や高校で習う生物の授業において、細胞組織の一部として登場します。ミトコンドリアは直径0.5μm(マイクロメートル)程度の細胞小器官であり、真核生物(しんかくせいぶつ=細胞に核のある生き物)の細胞内に存在します。「細胞の中の発電所」と例えられているように、ミトコンドリアの主な働きは栄養をとり入れてエネルギー(アデノシン3リン酸:ATP)に変換することです。

ミトコンドリアは免疫反応にも関わっています。ウイルスや細菌に感染して細胞が傷ついた際は、他の細胞に影響を与えないよう不要な細胞を死なせて除去したり、免疫細胞の暴走を抑えたりします。ミトコンドリアは他の細胞に対する司令塔ともいえる大変重要な働きを担っているのです。※1
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「ミトコンドリアを活性化させる」とは?


細胞の活動に必要なエネルギーの90%以上はミトコンドリアで産生され、それぞれの細胞に供給されます。ミトコンドリアの活性化で細胞が元気よく働いて生命が維持されており、ミトコンドリアの働きが長寿に関わっているとの見方がされています。

ミトコンドリアの活性化は寿命を延長するためにとても大切で、これが神経細胞を保護する作用における重要な役割を果たします。また、免疫反応は加齢に伴って低下していくので、免疫機能の老化を防ぐことが元気を保つ秘訣でもあります。そして、この免疫反応を維持させるために必要なのもミトコンドリアの活性化なのです。

簡単にまとめると、寿命を延ばす1つの要素がミトコンドリアの活性化ということになります。線虫を使った実験では、ミトコンドリアを活性化させる有機酸の添加によって数十パーセントも寿命が延びたそうです。有機酸にはピルビン酸やオキサロ酢酸があり、ザクロに含まれるエラグ酸にもミトコンドリアの活性作用が期待されています。また、肝臓で中性脂肪から作られるケトン体もミトコンドリアの活性に役立ちます。※2
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ミトコンドリアを活性化させる食事の摂り方

ミトコンドリアの働きは脳に大きな影響を与えます。ミトコンドリアが活性化すると幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが放出されやすくなり、仕事がはかどったり頭の回転が速くなったりという良い影響が感じられるようになります。エネルギー産生工場であるミトコンドリアを活性化させるためには食事の摂り方も大切です。

次のような点に意識して食事をしてみましょう。

・有機酸を含む果物を取り入れる
果物にはクエン酸やリンゴ酸などの有機酸が含まれています。有機酸にはミトコンドリアの活性効果が期待されていますので、積極的に摂るようにしましょう。不足しやすいビタミンやミネラル類が同時に摂取できる点も果物のメリットです。

・ビタミンB2を意識して取り入れる
老化ストレスを受けた細胞にビタミンB2を添加すると、ミトコンドリアのエネルギー産生が増強され、老化を防止する効果があることが示唆されています。ビタミンB2は食事からも簡単に摂取することができる栄養素で、焼きのりやアーモンドなどの身近な食品からも摂ることができます。※2

・空腹のリズムを作る
ミトコンドリアを活性化させるためには、空腹な状態を作ってエネルギー不足の状態にする必要があります。栄養を取り込めなくなると細胞内でたんぱく質のリサイクル(オートファジー)が起こり、危機を乗り越えようとする作用が働きます。これにより、自食作用と呼ばれるオートファジーで不要な物質が分解され、細胞内の恒常性が保たれます。

また、ミトコンドリアは体温が37℃で最も活性化するといわれているため、体を温めることも有効な方法です。体がポカポカしている時はミトコンドリアが刺激されて熱を発生させています。食事だけでなく運動をしたり、ゆっくり入浴をしたりして、体を冷やさない習慣を付けることも大切なポイントといえるでしょう。※4
細胞の若返り機能オートファジーと老化の関係性

※1 生物物理学会 ミトコンドリア
※2 神戸大学 ビタミンB2の新たな機能-老化の原因となるミトコンドリア機能低下を改善するメカニズム解明-
※3 有機酸が活性酸素からミトコンドリアを保護する仕組みを解明 アンチエイジング研究への応用に期待-応用生物学部 | 2018年のプレスリリース | プレスリリース | 東京工科大学 (teu.ac.jp)
※4 一般財団法人 光線研究所 ミトコンドリアを活性化させる可視総合光線療法


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。