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脳の健康に寄与する呼吸法とは!?


原因がわからないけど疲れやすくなったと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は軽い酸欠になっているかもしれません。今回は正しい呼吸方法について見ていきたいと思います。

脳の栄養について考えてみると??

私たちは日々呼吸をして生きています。無意識に行われるため、その数はなかなか数えられませんが、1日で2万回以上ともいわれています。呼吸によって酸素を吸い込み、二酸化炭素を吐き出しています。
私たちは酸素を吸い込まないと生きてはいけません。近年では呼吸の大切さが特に叫ばれるようになりました。そのため、最近では家庭や職場で二酸化炭素濃度を測定できるような機器を置いて、常に空気の状態をモニタリングしている方もいらっしゃると思います。肺に呼吸で取り込まれた酸素は全身の組織で消費されますが、脳においても例外ではありません。脳の栄養というとブドウ糖が有名ですが、実は酸素も必要な栄養と言えます。情報化社会の中で、脳を積極的に使うことが多い現代人は、通常の呼吸だけでは十分な酸素が摂取できていないとも考えられています。実際に、長いことパソコン作業をした後、何だかぼーっとしてくるという方もいらっしゃるでしょう。ひたすら作業をしていると無意識に呼吸が浅くなってしまい、脳が酸欠になってしまのです。
脳は体の中で中枢として働く重要な場所なので、特に積極的に酸素を送り込んであげる必要があります。

二酸化炭素も必要なもの??

二酸化炭素は人体にとって悪者扱いされることが多いですが、実は二酸化炭素も呼吸にとっては重要な役割を担っています。酸素は血液中のヘモグロビンと結合し、二酸化炭素がそれを切り離すという機構によって酸素供給は動いていますが、このように二酸化炭素がないと酸素だけでは正しく酸素供給はできないということになります。
また、脳の延髄に存在する呼吸を司っている呼吸中枢は、二酸化炭素量を常に監視し、二酸化炭素量がある量まで増えた際に、息を吸う命令を出します。一方で、二酸化炭素量が少ない状態が長時間に及ぶと、呼吸の回数が減ることによって浅い呼吸が増え、息を吸う命令がどんどん早くなっていき、過呼吸のような状態となります。
こういう点からも、やはり二酸化炭素も大事な役割を果たしているといえます。普段から二酸化炭素と酸素のバランスを意識しておくと良いでしょう。

呼吸の仕方によって違いがある??

呼吸には口呼吸と鼻呼吸があります。
一般的には鼻呼吸の方が、鼻毛などで異物を肺に入れないようになっているため、良いと考えられています。また、よく鼻がつまって口呼吸だけになった際に、あまり呼吸が効率良くできていないように感じることがあります。
これらの考えや感覚はあながち間違っていないかもしれません。昨今話題の人工知能(AI)を使った呼吸についての研究がそれを示しています※1。AIを使って呼吸の違いが脳波にどのような違いが出るかを診断するというものです。その結果を端的にまとめると、鼻呼吸と口呼吸で比べると、口呼吸の方がよりたくさんの空気を交換できるものの、脳への酸素供給は減るということがわかったのです。しかも、脳以外への酸素供給量に変化はなかったのです。ただ、なぜ脳への酸素供給が減るのかに関してはまだわからないとのことです。
いずれにしろ、鼻呼吸をしっかりとした方が脳への酸素供給という点では効率的といえます。なお、花粉症や副鼻腔炎などで鼻がつまり気味という方は、脳への酸素供給という点では、きちんと治療をした方が良いということもいえます。

深呼吸が大事になる!!


前述したように呼吸をしっかりとできていない現代人では、浅い呼吸になりがちで、きちんと酸素供給ができていない方が多いことが予想されています。そのため、仕事などの合間に意識的に深呼吸を取り入れると効果的であると考えられています。

リラックスしながら姿勢をまっすぐにして、吸う息より吐く息の方に重点を置き、お腹の方に意識を集中させ、吸う時間よりも多めの時間を使って吐くことを行うことが重要です。加えて、その際にも口呼吸と鼻呼吸をきちんとバランス良く行うことで、脳や全身の健康へとつながっていくことが期待できます。

呼吸によるメリットとは??


正しく呼吸を行うことで、脳だけでなく、体全体にも良い影響があります。具体的に見ると次のようなものが挙げられます。

・副交感神経が活性化されることで、血行も良くなり、疲れも取れる。また、眠りの改善にもつながる。
・脳波のα波が活性化して、集中力が高まる。
・精神を安定させる働きをするセロトニンが多量に分泌されて、多幸感に満たされ、ストレスにも強くなる。
・酸欠が改善し、老化が遅れる。
など

これらの良い影響が総合的に機能することで、疲れにくく、冷えも解消され、痛みにも強くなり、むくみも改善され、生活習慣病も緩和するなど良いことづくめになる可能性があります。たかが呼吸と侮れないですね。
ぜひ普段より、正しい食事だけでなく、正しい呼吸も意識してみてください。

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※1 Identification of Breathing Patterns through EEG Signal Analysis Using Machine Learning Brain Sci. 2021, Mar; 11(3): 293

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師、理学博士のほか10種類くらいの資格を持つ。
現在は、東京大学医学部附属病院 放射線科 核医学部門  助教&「放射性医薬品の管理責任者」、環境省「原子力災害影響調査等事業」メンバー、日本アイソトープ協会 放射線取扱主任者講習・作業環境測定士講習講師、リクルートメディカルキャリアコラム執筆など本業の合間に、わかりやすくサイエンスを伝える活動に力をいれており、近年は全日本情報学習振興協会にて講師としてYouTube動画の配信も行っている。
【全日本情報学習振興協会YouTube】
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