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ザクロに含まれるエラグ酸とは? オートファジーにも有効


ザクロに含まれているビタミンやポリフェノールは、生活習慣病予防やアンチエンジイングに有効とされています。ザクロは古くから「女性の果実」と呼ばれ、特に女性の美容と健康に良いといわれてきました。ここではザクロに含まれるエラグ酸について解説し、ザクロの魅力についてもご紹介します。

ザクロってどんな果物?

ザクロはミソハギ科ザクロ属の落葉小高木です。実の中に入っている赤い粒を食べる果物で、プチプチした食感と爽やかな風味が楽しめます。ザクロの歴史をたどると、古くからイランやトルコなどで栽培されており、中国では漢方薬として利用されてきたことが分かります。

ザクロは一般的な果物のように家庭で日常的に食べられる機会が少ないので、食べたことがないという人も多いかもしれません。しかし、近年ではザクロの魅力が注目されつつあり、ザクロ風味のドリンクやスイーツを見かけるようになってきました。その理由の一つとして美容効果の高さに期待できることが挙げられます。特に美肌作りやアンチエイジングに良いとされており、女性には人気のある果物となっています。

ザクロを栄養の観点から見てみると、100gあたりのエネルギー量は63kcalで、他の果物に比較して数値が高めです。含まれている栄養素で特別に多いものはありませんが、中でもカリウムは比較的多く含まれています。

人の体内において、カリウムは細胞内液の中に存在し、外液内のナトリウムと連携して、体内の水分バランスを保っています。この働きは水分の排出に関与しており、むくみの予防や改善に役立っています。また、カリウムは高血圧にも良いとされています。ザクロが美容や健康に良いとされているのは、カリウムが含まれていることも理由の一つと考えられるでしょう。

ザクロに含まれているエラグ酸とは?


ザクロが美容や健康に良い理由としてもう一つ挙げられるのは、エラグ酸という成分の作用による効果です。エラグ酸はあまり耳慣れない成分ですが、それは人が生きていくために必要な必須栄養素ではないからかもしれません。

しかし、エラグ酸は必須栄養素ではないものの、体に良い作用を与えてくれる成分なので、健康を維持するためにも積極的に摂取したいものです。このような必須栄養素ではないものの、体に良い作用を与えてくれる成分をフィトケミカルと呼び、他には野菜や果物などの植物性食品からも得ることができます。

エラグ酸はパイナップルなど熱帯地域の果物に多く含まれており、また、イチゴやラズベリー、クランベリーなど、ベリー系の果物にも含まれています。多くの学術的な研究によって、エラグ酸には血糖値の上昇を抑制する効果や、体脂肪の蓄積減少作用、抗酸化機能などが示唆されています。まだまだ未知の部分はありますが、フィトケミカルであるエラグ酸は美容や健康への有用性が期待される成分といえるでしょう。※1

詳しくはこちらを参照ください。
エラグ酸とは? 注目のポリフェノールを含む食材を紹介
ザクロに注目!話題のミトコンドリアを活性化させる成分とは?

エラグ酸からの代謝産生物「ウロリチン」はオートファジー機能に注目


2016年に東京工業大学の大隅良典教授がオートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を
受賞したことにより、オートファジーが世界的に注目を集めることとなりました。
詳しくはこちらを参照ください
オートファジーとは。ノーベル賞の発見がいま再び話題に

オートファジーは細胞が自らの一部を分解する作用です。これは細胞内の老廃物や有害物質などをすべて回収、分解してリサイクルし、新しいものに作り変える働きで、「細胞の若返り」とも呼ばれています。※2
詳しくはこちらを参照ください
細胞の若返り機能オートファジーと老化の関係性

実は、ザクロのエラグ酸にもこのオートファジーに関与する効果が注目されています。これは、エラグ酸自体がオートファジー機能を持つわけではなく、エラグ酸の代謝産物として作られるウロリチンの効果によるものと考えられています。

エラグ酸はラクトン環(若年層の女性特有の体臭を作り出す環状の物質)を持っています。ラクトン環が開環または脱カルボキシル化(脱炭素化)され、異なる位置から水酸基(酸素と水素の原子が1つずつ結合した物質)が除去された腸内代謝産物の総称をウロリチンと呼びます。このウロリチンが注目されるようになってからは、サプリメントをはじめとする健康食品が続々と登場しています。※1

ウロリチンは、損傷したミトコンドリア(細胞内小器官の一種)の選択的な除去に関与することがわかってきました。経口摂取されたウロリチンは、腸管を介して皮膚に作用し、このような働きにより、その細胞活性を高めることができます。このようなエラグ酸がもたらす肌の代謝を活性させる作用により、美肌効果が期待できると考えられているのです。

ミトコンドリアについてはこちらもご覧ください。
ミトコンドリアとは? 食事で延ばす健康寿命!
アスコルビン酸とは? ビタミンCの本名とミトコンドリアの関係

また、ウロリチンに期待される効果はこれだけではなく、他にも認知障害や腸管バリア機能の改善や抗肥満効果などが挙げられます。また、骨を壊したり、血中にカルシウムを送ったりしている破骨細胞の分化を抑制することで、骨密度の低下を防ぎ、骨粗しょう症などの骨疾患から体を守ります。

しかし、エラグ酸からウロリチンを作る腸内細菌が弱い人や存在しない人は、この効果を期待することができません。実際に体内でウロリチンを製造できる人の割合は50%程度とされています。このようにウロリチンは誰でも生産できるものではないので、日常生活の中でも手軽にとり入れやすくするため、さまざまな健康食品が販売されるようになりました。※3

ザクロは美容の面で注目されることが多い果物でしたが、ウロリチンのオートファジー機能によって健康面でも注目を集めるようになりました。手軽にとり入れるならばサプリメントを、美味しくとり入れたい時はドリンクやスイーツを選び、美容や健康作りに役立ててみましょう。

<参考>
※1 家田彩菜, 高田祐一, 岩本和子, 財満信宏, 森山達哉(2018)「ザクロ等に含まれるエラグ酸の生理機能性」近畿大学農学部紀要 第51号 1~9(2018)
※2 オートファジー-ノーベル賞を受賞した大隅栄誉教授の研究とは
https://www.titech.ac.jp/news/2016/036467
※3 日本食品機能研究会(JAFRA):ウロリチン、新たな腸内代謝物の可能性~第22回Bio Japan
https://www.jafra.gr.jp/f557.html

 

ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。