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適糖ライフのススメVol.14 疲れた時に甘いものが良いって本当?? 心や体の回復に良い対策を管理栄養士が解説

仕事や勉強などの合間に疲れを感じ、つい甘いものを口にするという方は多いかと思いますが、人は何故疲れると甘いものが欲しくなるのでしょうか?そして甘いものを食べると、疲れが取れた気持ちになるとよく言われますが、本当に元気になっているのでしょうか。

今回は、疲れた時に甘いものが食べたくなる理由とその効果、疲れに効くおすすめの対策方法についてご紹介します。

疲れた時に甘いものが欲しくなる理由

【甘いものを欲する原因1;ストレスによる脳の疲れ】

人間はストレスが溜まると脳が疲れ、通常よりも多くのエネルギーが必要になります。脳が必要とするエネルギー源はブドウ糖。血液中のブドウ糖が少なくなると自然と脳がブドウ糖を補給しようとするので、甘いものが欲しくなるのです。※1)

【甘いものを欲する原因2;甘いものは喜びを感じるホルモンが出る】

甘いものを食べる(糖分を補給する)と、脳内で幸せを感じるβ-エンドロフィンの濃度が上がります。※2)人の体にとって糖分は大切なエネルギー源なので、食べた時に喜びを感じるようになっています。疲れたときに幸せを感じたい、癒されたいという欲求が本能的に甘いものを欲するのかもしれません。

甘いものがもたらす報酬

甘いものを食べると脳内のβ-エンドルフィンが増えて気持ちが落ち着き、不安やイライラ感を和らげる効果があります。エンドルフィンは脳内でストレスを軽減し心身をリラックスさせる作用がある物質でアルファ(α)・ベータ(β)・ガンマ(γ)の3つがあり、その中でもβ-エンドルフィンは苦痛を取り除くときに最も多く分泌されます。例えばマラソンなどで苦しい状態が一定時間続いたときに分泌され、その後快感や陶酔感を覚えるランナーズ・ハイという現象が生じることがよく知られています。甘いものを食べると幸福感で満たされるのも、この作用によるものです。※3)※4)

甘いものがもたらす功罪

甘いものがもたらす幸福感は心を幸せにしてはくれるものの、肉体疲労の軽減にはつながりません。一時的に血糖値が上がり精神的に満足はしますが、低血糖により身体の疲労感が増してしまうこともあるのです。 そのため、疲れをとるために甘いものばかりに頼っていると、逆に疲労回復や代謝に必要なビタミンやミネラルが消耗され、疲れがとれなくなるというデメリットになる可能性も。適量は「ご褒美」になりますが、やめられない過剰摂取は「依存」という悪循環に。程よいお付き合いが大切になるのです。

疲れた心や体を回復する“甘いもの”以外の対策とは

それでは、疲れた心や体に効果的な対策には甘いものの摂取以外にどのようなものがあるでしょうか。

1.脳の疲れの回復方法をいくつか持つ

疲れた脳の回復にはまず睡眠。脳をゆっくり休ませられるように睡眠時間の見直しを行いましょう。

2.幸せホルモンを甘いもの以外で分泌する

幸せホルモンと呼ばれるセロトニンは、甘いものを食べた時だけでなくウォーキングやヨガなどゆったりとした運動でも活性化されます。適度な運動でセロトニンが分泌されやすい体づくりをしましょう。※5)

幸せホルモンの増やし方はこちらでも紹介しています。
幸せホルモンの種類と増やし方! 知っていますか?

3.偏った食生活をしない

健康を気にして極端に糖質を避けたり、カロリー制限をしたりするような食生活をしていないでしょうか。糖質や脂質の不足により、体がエネルギーを求めて甘いものを過剰に食べたくなってしまう可能性があります。例として、以下の食事内容についての項目を守れているかチェックしてみましょう。

■主食(ごはん、パン、麺など)は手のこぶし位の量を1食で食べているか?
■主菜の肉や魚、卵や大豆製品などは片手分位の量を1食で食べているか?
■野菜や果物は毎食食べているか?※6)

食事のバランスを見直せば、甘いものへの欲求を減らすことができるかもしれません。まずは普段の食事の見直しから始めてみましょう。

そして甘いものを食べたいときは、どれくらいの量を摂取すればよいのか「適糖ライフのススメVol.5おやつを楽しむ適糖ライフ」を参考にしてみてくださいね。おやつは素敵な「ご褒美」として、上手に付き合っていきましょう。

※1) 栄養学 ・生理学からみた食べ物の美味しさ 伏木亨 51-53(1995)
※2) おいしさと食行動における脳内物質の役割 山本隆 顎機能誌18:107-114(2018)
※3) 厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイトe-ヘルスネット「β-エンドルフィン」
※4) 砂糖と味覚-株式会社パールエース
※5) スポーツ庁Web広報マガジンDEPORTARE「数字で見る!スポーツで身体に起こる気になる「6」つのデータ
※6) 食事バランスガイド:1日分の適量について

ライタープロフィール

渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】

保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。