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キャッサバとタロイモ。タピオカとは何が違う?

 

日本は食料自給率が低く、様々な国からの輸入に頼っています。そうした背景から新たな食品に触れる機会は増えてきましたが、キャッサバやタロイモを食べる機会はまだ日本にほとんどありません。しかし、世界にはこれらを貴重なエネルギー源として捉え、主食として食べている地域もあります。ここでは、そんなキャッサバやタロイモについてご紹介いたします。

キャッサバとタロイモってどんな食べ物?

世界ではその土地の気候や環境に合わせて、さまざまな作物が栽培されています。品種改良や栽培技術の向上により、季節や地域を選ばずに生育できる作物も増えてきましたが、まだまだ見たことのない食べ物も存在しています。日本ではあまり目にすることのないキャッサバやタロイモは、主食としても使われることがある芋類の仲間です。

キャッサバの原産地は中南米ですが、暑さや乾燥に強いという特徴があるため、現在では全生産量の半分がアフリカで栽培されており、近年ではアジアでも生産量が増えています。キャッサバを主食にしている国は多く、気候上、他の作物を育てるのが難しい熱帯・亜熱帯地域で主食になっているなど、世界の食を支える食べ物としても知られています。※1

タロイモの原産地は東南アジアであり、狩猟採集時代においては貴重な食物でした。現在でもハワイやニューカレドニアなどの国では、主食の一つとして食べられています。日本にも身近な国である台湾では、タロイモを利用したスイーツが人気です。

タロイモは日本でいう里芋になりますが、海外のものは里芋よりも随分とサイズが大きく、ヌメリ感も少なめです。里芋は煮物にして食べられることが多いですが、タロイモは蒸してからペースト状にして食べられています。また、ご飯と一緒に炊いたり、揚げたりすることもあります。※2

キャッサバとタロイモの違いとは?

 

キャッサバとタロイモは、暑い地域で栽培されることや、加熱しないと食べられないという共通点があります。米や小麦が手に入りにくい地域の主食になっているのは、エネルギー源となる糖質を多く含むからです。タロイモは煮るだけでそのまま食べられますが、キャッサバは粉末状の「でんぷん」に加工されるのが一般的です。

他国との交流が盛んになり、輸入が増えたことによって他の国の食べ物と触れ合う機会は増えてきました。日本では主食といえば米やパンといった食品ですが、私たちにとって当たり前の食品がどの地域でも食べられるわけではないということは心に留めておきたいものです。

これまで日本ではあまりなじみのなかったキャッサバは、タピオカブームによって身近なものとなりました。タピオカはキャッサバの根茎を乾燥させて粉砕した粉から作られています。また、粉末状のキャッサバはパンやケーキの材料として、小麦粉と同じように使うことができます。このように海外から新しい食品が入ってくることは、私たちの生活に新しい刺激をもたらしてくれます。

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現在、日本では生のキャッサバを輸入することが禁止されています。これは、キャッサバには有毒な成分が含まれているためで、特別な処理・加工をしたものしか輸入することはできないのです。キャッサバの有毒成分は梅や杏の種子にも含まれている青酸配糖体であり、体に入ると頭痛やめまい、呼吸の増加などの症状が現れます。タロイモにはキャッサバのような毒性はありませんが、えぐみや渋味があるので加熱しないと美味しく食べられません。正しい食べ方で美味しくいただきましょう。※3

環境問題と風土を利用した食物の栽培

 

日本だけでなく世界に目を向けてみると、将来的な人類の生存に関わる様々な危機に直面しています。それは、人口増加や環境問題、食糧危機などです。作物を育てる土地がなかったり、農業に関わる人がいなかったりと、さまざまな角度から問題は表出してきます。

世界各地では、その国々の風土に合った作物が生産され、その国の経済を支えています。そして輸出や輸入を通しさまざまな国へ伝わり、新しい文化が広がっていくのです。

日本でも全国各地で様々な作物が栽培されていますが、特に人々の食生活を大きく支えているのは北海道という広大な土地です。農産物では主にじゃがいもや玉ねぎ、アスパラ、かぼちゃなどが代表的で、砂糖の原料となる「甜菜(てんさい)」は北海道の基幹作物として重要な役割を担っています。

甜菜から作られた甜菜糖は砂糖や菓子、飲料などの形で一般家庭に届けられています。国内の砂糖消費量で甜菜糖の占める割合は約25%と少ないため、実際にはその存在はあまり知られていません。カンロで製造している飴の原料には、主に北海道産の甜菜を使用いていますので、ぜひお楽しみいただければと思います。

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今回ご紹介したキャッサバは、育てやすい作物であることや高エネルギーであることから、未来の食べ物として多方面から期待されています。今後は、世界的な人口増加から食糧難が訪れると予想されており、将来的にもキャッサバのように育てやすい高エネルギー食品は貴重な資源となるでしょう。キャッサバは寒さに弱いという難点を抱えながらも、日本でもキャッサバ栽培の試みが行われています。日本は食料自給率の低い国であるため、輸入に頼っている状況では食糧不足は近々の課題です。気候や環境の特徴を踏まえながら、新種の作物栽培を含め、将来性のある農業の発展に期待していきましょう。※4

<参考文献>
※1 独立行政法人 農畜産業振興機構 世界のキャッサバの生産動向
※2 東京農業大学「食と農」の博物館 「タロイモは語る」
※3 食品安全委員会 食品安全関係情報詳細
※4 JICA キャッサバの基礎がわかるキャッサバABC


ライタープロフィール

佐々木優美(管理栄養士)
病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。