糖と健康

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ビートってどんな野菜? 砂糖の原料にもなる「甜菜」という植物

砂糖は私たちの生活に欠かせない調味料ですが、この砂糖の原料となる植物は主に2種類あることをご存知でしょうか? 一つはサトウキビ、そしてもう一つがビートです。今回はそのうちの一つ「ビート」について着目し、どのような植物なのかを詳しく解説していきます。

ビートってどんな植物?

ビートは地中海やカスピ海などに囲まれた外国の地域で見つかった作物で、元々は葉や根の部分を野菜として食べていました。甘さを持つとわかったのは18世紀のことで、その後フランスやドイツなどの国で急速に品種改良が進みます。そのため、ビートが砂糖の原料として使われるようになった歴史は、まだ200年ほどとなっています。

北海道の基幹作物で「甜菜(てんさい)」とも呼ばれるビート。ほうれん草と同じヒユ科に属するため、緑の葉が一面に広がるビート畑はほうれん草畑によく似ています。しかし、砂糖になるのは葉ではなく根の部分です。ビートは広大な大地でたくさんの光を葉に浴びて、光合成によって根の部分に糖分を蓄えます。この根に蓄えられた糖分が砂糖となるのです。

ビートは、国内で生産されている上白糖やグラニュー糖などの砂糖の多くに使われています。その割合は約82%(2019/2020年度)※1となっており、サトウキビよりも遥かに多いです。しかし砂糖の自給率は34%(平成24年度)※2と低く、年間の砂糖需要量の約60%(2019/2020年度粗糖輸入量と国内甘蔗糖・甜菜糖生産量から算出)※1は輸入に頼っており、国内で作られる砂糖だけでは需要に追いついていないことが窺えます。

ビートの糖分は気温に大きく左右され、7~10月の最低気温が低い年は糖分が高く、気温が高い年は糖分が低くなるといわれています。また栄養素としては、天然のオリゴ糖と称されるラフィノースを含んでいます。

ビートは生で食べられる? どんな味がするの?

ここまでビートの概要について説明してきましたが、実際にビート(または甜菜)を食べたことがある方は少ないのではないでしょうか。商品作物であるビートが家庭の食卓にのぼることは、ほとんどないのです。

ビートの根の部分の味は甘味があり口当たりもよいのですが、アクの強い野菜でもあり、煮物に使うと煮汁が濁ってしまいます。また不快な後味が残り「土臭い」と表現されることもあるため、食用には適していません。葉も同様です。

しかし、終戦後の砂糖が貴重だった時代には、ビートを煮て余った汁から結晶を取り出し自家製の甘味料を作っていたという話もあるようです。とはいえ現在はビート自体が流通していないので農家の方から直接分けてもらうしか方法がなく、ビートを生で食べるという経験はなかなかできるものではありません。そのため、私たちがビートを一番身近に感じられる食べ物が「砂糖」ということになるのです。※3

ビートから砂糖が作られるまで

それでは、野菜であるビートからどのようにして砂糖が作られるのか、製造過程を詳しく見ていきましょう。

1. 受け入れ
ビートの収穫時期は10~11月です。葉の部分は畑で切り落とされ、工場に原料のビートが運ばれます。

2. 洗浄、裁断
ビートをきれいに洗い、土や石などを落とします。洗浄後、細長く裁断することで糖分が抽出されやすくなります。

3. 浸出、清浄
65~75℃の温水のなかで糖分を抽出し、炭酸カルシウムにより非糖分を吸着・除去させます。

4. 精製
イオン交換樹脂に通してアミノ酸や有機酸、色素などの非糖分を除去します。

5. 濃縮、結晶化
非糖分を除去した糖液を濃縮させ、結晶化させます。

6. 分蜜、乾燥
糖液を遠心分離機にかけて結晶と糖蜜に分離し、結晶だけを取り出します。これを分蜜糖といいます。分蜜後の砂糖はまだ湿っているため温風を当てて乾燥させ、その後冷却して完成です。包装されてから出荷となります。※4

またビートの根部から砂糖を生産する過程において出る搾りかすは、さまざまな場面で有効活用されています。乳牛の飼料として活用されるビートパルプや、すり身揚げなど人が食べる食品にも使われるビートファイバーなどです。特にビート中の食物繊維であるビートファイバーは、現代人の食生活をサポートするものとして期待されています。近年では、土壌にすき込み緑肥として使われているビートトップ(茎葉)についても、飼料化を目指した取り組みが行われています。

普段何気なく口にしている砂糖ですが、意外と原料について知る機会は少ないかもしれません。砂糖がビートから作られていることやどのように作られているかを知ることで、もっと身近に感じられるようになるのではないでしょうか。


参考

※1 製糖工業会 統計資料
https://seitokogyokai.com/statistics/

※2 独立行政法人 農畜産業振興機構 砂糖の原料について
https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000770.html

※3 日本甜菜製糖株式会社 甜菜は生で食べられますか?
https://www.nitten.co.jp/eating.html

※4 日本甜菜製糖株式会社 砂糖はこうして作られるNo.2
https://www.nitten.co.jp/sugar2.html


ライタープロフィール

片村優美(管理栄養士)

病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。