長年続くパンブーム。街中にはベーカリーが続々と登場し、行列のできる店舗もあちこちにあります。忙しい朝にサッと食べる、休日にゆっくりコーヒーと一緒に楽しむなど、パンを食べる場面は様々ですが、美味しいパンを頬張った時の食感、風味、香りによってもたらされる幸せ感は病みつきになりますね。
毎年、甘いパン、しょっぱいパン、シンプルなパンなど多様なパンが流行し、人気を集めていますが、皆さんは食パンが何種類あるかご存じですか?
ベーカリーに並べられたパンを見ても違いがよくわからず、結局いつも同じようなパンになってしまう…という方も多いのでは? 主なパンの種類と特徴、オススメの食べ方をご紹介します。
日本人の食卓に欠かせない食パン
・角食
日本人の食卓に最も身近な存在の食パン。最近では食パン専門店もよく見かけるようになりましたね。その中でも大手パンメーカーからも数多くの商品が発売されており、馴染み深いのは「角食」と呼ばれる真四角の食パン。焼き型に蓋をして焼くため、生地が詰まっており、きめ細かさや、しっとりとした柔らかな食感が特徴的です。そのままでも美味しく、フルーツサンドなどのサンドイッチにもピッタリです。
・山型食パン
角食とは対照的に、蓋をせずに焼いたのが「イギリスパン」とも呼ばれる「山型食パン」。上部が山のようにふんわりとした形をしており、あっさりとした味わいで、軽い食感になっています。そのまま食べるよりもトーストにしてサクッと食べるのがオススメ。チーズをのせて焼いたり、焼いたパンに野菜やハムなどを挟んだりして食べるのもいいですね。中央をくぼませ、そこに卵を割ってトーストすると、サクッとした生地にトロリとした卵が絡まって美味しくいただけます。
・パン・ド・ミ
ベーカリーで「パン・ド・ミ」と記載のある食パンを見かけたこともあるのではないでしょうか?「パン・ド・ミ」はフランスパンの生地に砂糖やバターを加えたフランス発祥のパンです。角食よりも砂糖やバターが少なく、ずっしりとしており、小麦の風味や香りを感じることができます。そのままでも、焼いても美味しく、副材料が少ない分、卵液などの染み込みがよいため、フレンチトーストやクロックムッシュに適しています。
・その他
他にも小麦粉の何割かを全粒粉(グラハム粉)にしたり、ライ麦粉にしたりして仕上げた食パンがあります。全粒粉やライ麦粉の割合が多いほど、マグネシウムや鉄、銅などのミネラルやビタミンB1を多く摂ることができます。独特の香りや酸味が強いため、旨味の濃い生ハムやマイルド感をもたらすクリームチーズ、まったりとした甘さのはちみつがよく合います。
ハード系の代表格フランスパンの種類
パンには粉、イースト、塩、水といった基本的な材料で作る「リーン」なパンと、そこにバターや牛乳、卵、砂糖などを加えた「リッチ」なパンがあり、フランスをはじめ、イタリア、ドイツ、イギリスなどヨーロッパの多くの国ではリーンなパンが主流となっています。外がパリッと、中がもっちりとしたハード系のパン、その代表格といえば通称「フランスパン」ですね。「フランスパン」は大きさや形によって、名称や特徴が異なります。
・バゲット
フランスで最もよく食べられている、細長い形をした「バゲット」。フランス語で「棒」や「杖」をという意味があり、皮のパリッとした食感を楽しむことができます。スープに付けて食べたり、薄く切ってカリッと焼き、トマトやチーズをのせてワインに合うおつまみとして食べたり、20cm程の長さに切って、肉や卵、野菜などを挟み、おしゃれなサンドイッチにすることもできます。
・バタール
バケットよりも短く、太さがある「バタール」。フランス語で「中間の」という意味があり、中のもっちりとした食感を味わうことができます。中の白い部分が多いため、厚めにスライスしてフレンチトーストにしたり、オープンサンドにしたりするのがオススメ。バケットよりも柔らかさがあるため、リッチで柔らかいパンに食べ慣れている人でも比較的食べやすいです。
・ブール
バケットやバタールなどと同じ材料を用いながらも、丸く成型し、中のフワフワな食感を楽しむことのできる「ブール」。フランス語で「ボール」を意味しています。スライスして、トーストにしたり、中をくり抜いたりしてシチューなどを入れ、おもてなし料理の一品にもなります。
・パン・ド・カンパーニュ
フランス語で「田舎のパン」という意味のパン。他のフランスパンと異なり、「ルヴァン種」という酵母で発酵させることが多く、それによって酸味が強いものもあります。きめが細かく、スライスしてサンドイッチにすると良いです。アボカドやチーズなど合わせると酸味とマッチして、美味しく食べられます。
フランスパンは原材料がシンプルで、基本的にはバターを使用していないため、脂質が食パンの約1/3量程度で、脂質を控えたい方にはオススメ。※1
中の白い部分だけを使用して離乳食にも活用しやすいパンです。
各国の代表的なパン
・フランス
フランスにはリーンなパンが多く存在する一方で、クロワッサンやCといったバターや卵をたっぷりと使ったリッチなパンも人気です。近年では日本でもクロワッサンにクリームを入れ込んだり、チョコレートやナッツなどをトッピングしたりした「進化系クロワッサン」、ブリオッシュ生地にたっぷりの生クリームを挟んだ「マリトッツォ」も大流行しました。これらはパンの中でも特に脂質が多く、クロワッサンには食パンの7倍以上の脂質が含まれています。※1
別格の美味しさはありますが、日常的に食べるパンというよりは、休日にゆっくりと味わう、間食として食べるパンとしたほうが体には良さそうです。
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・ドイツ
日本でドイツのパンを取り扱っているベーカリーは限られていますが、ドイツは「パン王国」とも呼ばれるほど、ヨーロッパの中でもパンの消費量が多い国です。ライ麦を使用したパンが有名で、ライ麦粉と小麦粉の比率によって、名称が違います。
ライ麦粉と小麦粉を同量に合わせたものを「ミッシュブロート」、小麦粉のほうが多いものを「ヴァイツェンミッシュブロート」、ライ麦粉の比率が6割以上のものを「ロッゲンミッシュブロート」といいます。
ライ麦の比率が高いほど、ずっしりとした食べ応えのため、薄くスライスして食べると良いです。ローストビーフやハム、スライスしたパルメザンチーズなど主張の強い食材がよく合います。
・アメリカ
ベーグルの本場といえばニューヨーク。ベーグルは成形した後に一度熱湯でゆでるため、ももちとした食感に仕上がっています。原材料にバターや卵、乳製品を使用していないため、フランスパン同様に脂質が少ないパンです。
半分に切って野菜やハム、サラダチキン、チーズ等を挟んだ食事系のサンドイッチにもなりますが、砂糖やはちみつなどでほんのりと甘味がついているため、ドライフルーツやナッツ、クリームチーズとの相性もよく、アレンジ自在なパンです。
この他にも世界には膨大な種類のパンが存在しています。ベーカリーによって取り扱っているパンの種類も様々。同じ種類のパンでも配合や製法の違いにより、全く違う味わいになっています。パンは合わせる食材によって自分好みにアレンジできるのも魅力の一つ。
バターやジャムなどスプレッドの種類を変えて、チーズやハム、シーフードなどの旨味食材をいろいろ試してみると新たな美味しさを発見できそうです。皆さまのパンライフがさらに楽しくなりますように。
【参考資料】
※1 文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
ライタープロフィール
渥美 まゆ美
【管理栄養士/フードコーディネーター】
保育園栄養士、健保組合、大手料理教室の講師を経てフリーランスで活動後2016年株式会社Smile meal設立。
現在は出版、メディア出演、レシピ開発など体にプラスな料理の提案をすると共に、企業向け健康セミナーの講師や従業員の健康をサポートする料理教室、高齢者向け介護予防教室など健康サポート事業にも携わる。