糖と健康

Category

New

神経伝達物質であるドーパミンの出し方と重要性とは?!


超高齢化社会に突入する中、運動機能の調節などに関与しているホルモンであるドーパミンが注目されています。このドーパミンが不足すると色々な問題が生じるため、きちんと増やすことが大事です。今回はドーパミンについて見てみましょう。

 

そもそもドーパミンとはどんなもの?

ドーパミンは神経伝達に関わる神経伝達物質の1つで、アドレナリンやノルアドレナリンの前駆物質でもあります。つまり、ドーパミンが不足するとアドレナリンやノルアドレナリンなども不足するということになるので、とても大事なものといえます。

ドーパミンが関わる感情としては、神経系の中の報酬系に分類されている神経回路に関与し「快感」「多幸感」「意欲」を引き起こします。また機能としては「運動調節」に関与しています。

ドーパミンを作るための材料となるのは、アミノ酸のフェニルアラニンやチロシンで、これらを日々食事からきちんと摂取することが大事です。これらのアミノ酸から酵素の働きによって生成中間体のドーパがまず生成されて、その後別の酵素の働きによってドーパミンが作られるというのが生合成経路になります。

このドーパミンが体にとってどのくらい重要視されているかというと、中枢神経には多種多様な個性を持った神経細胞が1兆個以上存在すると考えられていますが、その中に、ドーパミンだけにしか応答しない神経である「ドーパミン作動性神経」があることからも理解できます。

 

ドーパミンが多量に出ている状態とは


何かに夢中になっている時などに、ドーパミンが脳内で多量に出されます。恋をしている時やスポーツをしている時などが具体的な状況になります。

ドーパミンが多量に出ている時には、強い意欲を感じている状態ともいえて、何かにがんばろうという気持ちが強くなります。例えば、恋をしている時には、仕事や勉強もがんばれてしまうということがありますが、まさにドーパミンが関係しています。

また、こういった時には不思議と一食くらい抜いてしまっても平気ですよね。まさしく、ドーパミンが多量に分泌されている時には、活動的となっているにも関わらず、食欲は抑えられる状態になります。

つまり、効率的なダイエットにつながるという可能性があり、近年はダイエットにもドーパミンを活用できるのではないかとも考えられています。

なお、何らかのストレスを感じている時には、ドーパミン分泌が低下して、代わりにストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます。このコルチゾールは脳内のホルモンの機能を抑制してしまうため、コルチゾールを増やさないためにも、日々ドーパミンを分泌させておくことが重要です。

余談にはなりますが、日々新しいことにチャレンジしている方が年齢に関わらず、精神的にも肉体的にも若々しいのは、このドーパミンも関与しているといえます。

 

ドーパミンが関与する病気とは?


超高齢社会の中でドーパミンが再注目されている理由としては、このドーパミンがパーキンソン病に関与しているからです。

ドーパミン生成がうまくいかなくなったり、ドーパミン作動性神経が異常になったりするなど色々な理由で、ドーパミン自体が不足する、もしくはドーパミンが正しく働いてくれないことで、運動障害を含めたパーキンソン病になると考えられています。

治療法として、ドーパミンを補ったり、正しくドーパミンが働くようにしたりすることが行われています。また近年では、健常な方の脳のグリア細胞(脳内を掃除してくれる免疫由来細胞で、神経細胞を保護してくれる作用も持つ)をパーキンソン病患者の脳に移植することで、異常になったドーパミン作動性神経を正常化してくれるという治療法に関する研究成果も出てきました。超高齢社会に突入している現代の日本において、パーキンソン病患者が増加してきているため、ドーパミン自体をまずは正しく理解することが大事だといえます。

 

ドーパミンに関する最新知見

2023年に京都大学の研究チームが発表した最新知見が、ドーパミンの重要性や日常への関与の仕方をさらに確実なものにしてくれました。

人は、目標を色々と設定して、その目標を実現させようと努力します。ただし、もちろん円滑に達成することができればいいですが、多くの場合、途中で思った通りにいかずに期待外れの状況が発生します。それでもなお、さらに努力を続けていくことができるということが多いです。

これまでは、順調な時にはドーパミンが増える一方、逆に期待外れの状況になるとドーパミンが減ると考えられていました。なので、期待外れの状況を乗り越えてさらに努力を続けるという仕組みを説明することが科学的には困難でした。

今回の研究成果においては、期待外れの状況になった後に、ドーパミン放出が増えて、その状況を乗り越えようとする行動につながる新たなドーパミン神経細胞が同定されたのです。この研究成果は、期待外れの状況になっても乗り越えていけるようにドーパミンが導いてくれる新たなメカニズムを提供してくれました。

このことは、例えば、意欲が強く低下するうつ病などの精神疾患の新たな治療法へとつながることが期待されています。

日々目標を持って、努力を繰り返し、たとえうまくいかなくても、諦めず続けていくと、ドーパミンが助けてくれて、結果として良い人生につながるといえます。色々と生きていくのが難しい時代ではありますが、ドーパミンを上手に活用することで、良い人生につなげていきましょう。

(あわせて読みたい)
エンドルフィンはどうすれば増える? 多幸感を促す物質とは
幸せホルモンの種類と増やし方! 知っていますか?

 

【ライター紹介】

宮川 隆 (みやがわ りゅう)

名古屋市立大学薬学部卒業、南カリフォルニア大学(USC)国際薬学臨床研修修了、東京大学大学院理学系研究科修了
薬剤師ほか第一種放射線取扱主任者、甲種危険物取扱者、調理師など30以上の資格を保有。
現在は、国立大学法人東京工業大学キャンパスマネジメント本部
放射線安全部門 特任准教授
(国立大学法人東京大学医学部附属病院 届出研究員)
(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 客員研究員)
(公益社団法人日本アイソトープ協会 講師)