人の身体は繊細で、痛みや感情など広範囲において気候の影響を受けることがあります。例えば、晴れていると清々しい気分、雨が降っていると鬱々とした気分になるという経験をしたことはありませんか?
今回は、気候の影響から様々な症状が現れる「気象病」について解説していきます。
気候の変化や天気は、人間の精神的な部分に影響を与えることもあります。身体のなかでの変化が精神にどう影響するのでしょうか。たとえば、雨の日は髪がうまくまとまらない、靴が濡れる、お気に入りの服が着られないなど、ストレスが溜まる場面が多く憂鬱な気分になりがちです。
このような状態では、神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンが低下している状態となります。分泌が低下するとどんどん気持ちが落ちてしまいます。外出するのが億劫になり、家に引きこもってしまうことでさらに症状が悪化するおそれがあります。
セロトニンは太陽の光に反応して分泌されるホルモンなので、晴れている日は意識的に太陽の光を浴びてセロトニンを増やしましょう。セロトニンを作る材料となるのはビタミンB6とトリプトファンで、乳製品や大豆製品、ナッツ類を普段からとり入れるようにするとよいでしょう。※1
セロトニンの分泌を増やす食べ物についてはこちらもご覧ください。
・セロトニンが低血糖の症状を緩和。効果的な食べ物とは?
・幸せホルモン『セロトニン』を増やす食事でハッピーになろう
低気圧と身体の関係
気圧とは、空気の重さによって発生する圧力のことです。気圧は標高が高くなるにつれて低く、標高が低くなるにつれて高くなります。
気圧が低い場所では上昇気流が発生し、空気は上昇すると気温が下がります。こうして空気中に含まれている水蒸気が冷やされて水に代わり、雲となって雨が降り出すのです。※2
低気圧は空気の圧力が低くなるため、血管内の血液の流れが滞りやすく、血圧が上昇する傾向がみられます。体のなかには気圧の変化を感じる器官があり、耳の奥の骨にある内耳(回転や平衡感覚などを感知する場所)がその役割を果たしていると考えられています。人の身体は皮膚や血管などで覆われており、内部の圧力を自由に変えられないため、体内の圧力と外部の圧力のバランスが崩れることで血流や神経伝達に影響を与えてしまうのです。これにより、頭痛やめまい、倦怠感といった不快な症状が引き起こされてしまいます。※3
気圧と体調の関係には個人差があるため、必ずしも全員の体調が悪くなるわけではありません。気圧の変化に関する感度や反応は人によって異なり、体調への影響も人それぞれです。
体調の変化によって、雨や低気圧を正確に予見しやすいといわれているのは特にリウマチの持病がある方で、「痛みがひどくなってきたから天気が悪くなる」と訴えることがあります。気象の変化が心身へ影響をもたらすことは世界でも知られており、ドイツのある新聞では天気予報欄に各疾患に合わせた予報を出しています。気候と体調は切り離せない事実であるといえるでしょう。
気圧の変化への対策
気象病の症状は人により異なりますが、自分の体質などを理解しておくことで対策は可能です。人の身体は一定の範囲内で気圧の変化に対応することはできますが、急激な変化によって限界値を超えてしまう可能性があります。事前に対策をして、体調不良を防ぎましょう。
・水分や塩分の摂取に気を付ける
水分や塩分のとり過ぎはむくみの原因になります。身体によいといわれている野菜や果物ですが水分も多く含まれているため、食べ過ぎはよくありません。バランスのよい食事を心がけましょう。
・むくみ緩和のためにマッサージやストレッチを行う
身体がむくんでいるなと感じたら、マッサージやストレッチが有効です。余分な水分を排泄する事で、高血圧を予防し気圧の変化の影響を低減し、身体を軽くしてあげましょう。
・消化されやすい食事を摂る
気象病は眠気が伴うこともしばしば。食べてからすぐ寝てしまうと、消化不良で睡眠の質が下がります。自律神経を整えるためには消化のよい食事を心がけましょう。
・休息や睡眠をしっかり取る
ストレスが溜まると自律神経が乱れがちになります。日ごろから疲れを溜めず、リラックスした気持ちで過ごせるように休養を取りましょう。
頭痛は、コーヒーなどのカフェインによる血管収縮作用で一時的に軽減することがあります。リラックスや気分転換をして、精神的な不調を取り除いてあげることも有効です。自分の思考のクセを理解し、前向きな気持ちになれるようなトレーニングを行っていきましょう。
(あわせて読みたい)
・朝の倦怠感を解消!自律神経を整える朝ごはんとは?
<参考>
※1 独立行政法人 農畜産業振興機構
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000539.html
※2 国土交通省 気象庁
https://www.jma-net.go.jp/sendai/knowledge/kyouiku/yoho/kumo.pdf
※3 埼玉県国民健康保険団体連合会
https://www.saikokuhoren.or.jp/pages/02_2306.html
ライタープロフィール
佐々木優美(管理栄養士)
病院にて給食管理や栄養指導に従事しフリーランスとして独立。webメディアでは健康・栄養系のライターとして記事を執筆しています。その他、食育教室や自治体主催の料理教室、短期大学の非常勤講師などの仕事を通じて、食の大切さを伝える活動をしています。